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捕まえた
「待って!詩乃っ。詩乃だよね?」
「違う!人違いです!」
「20年経ってても詩乃を間違えるわけない!止まって!止まりなさいっ」
ビクッと体を揺らし詩乃は立ち止まった。
明は再び逃げられないように詩乃の肘を掴み
「捕まえた」
「離してください」
「詩乃、会いたかった」
「ぼくは会いたくなかった!」
「なんで、空港に来なかった!?」
「行ったよ」
「え?」
「でも、会えなかった。あなたが宵先輩のお兄さんだって気づいちゃったから」
「宵と面識が?」
「いま、一緒に働いています。なんなら大学1年生からずっと憧れて宵先輩の側に居続けてます」
「え…じゃあ…宵の言う可愛い後輩って…詩乃…?」
「…です」
「だからってどうして姿を消した?住んでたアパートも電話番号まで変えて!ずっと探してた」
「…」
「言いなさい!」
「宵先輩に似てる雰囲気だと思って明さんを好きになった。兄弟だって知ってたら付き合わなかったです。2人に申し訳なくて合わす顔がなくてだからあなたから逃げました。まるで身代わりにしたみたいなんだもん」
「詩乃は宵に抱かれたいの?」
「違っ!ぼくは先輩を抱きたい。と、言うか…流れで1回抱いてる」
「それは驚きだけど…。じゃあ俺は?抱きたい?」
「え…?明さんは違う」
「じゃあ身代わりでもなんでもない。行くよ」
「行くって…どこに」
「詩乃を抱く」
「なっ」
「しっかり歩いて」
「や、やめて!ぼくにはもうっ」
「家庭でもできた?」
「いないよ、そんなの。抱いてくれる人を見つけたからあなたはいらない!」
「恋人?」
「そ。それは…」
「不倫?」
「違う。セフレ…」
「詩乃っ!自分を粗末にしないっ」
「明さん…」
「やり直そう?宵の後輩だからってなんだ。あの子はあの子で実継くんがいる」
「え…知って…」
「宵は素直な子だからね、隠すことはしないよ」
明はあの頃と同じように優しく詩乃の頭を撫でた
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