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ご褒美の提案

部屋の中に入ると雫は宵に優しい口調で話しかけ 「よーいさんっ」 「う…ぅっ…」 「あー…辛そう。大丈夫?」 雫は注射器の乗ったバットを床頭台に置き、宵の体に触れ 「熱い…。可哀想に…。鎮静剤が右だったから…左でいいです?」 「ああ」 「じゃあ、右向いてー。左のおしりを出しますよ」 「え…本当に注射するの?実継さん…」 「する」 「ヤです…」 「熱を下げた方がいい。痛いのは一瞬だから」 「一瞬じゃないもの。打った後しばらく痛いです、、」 「旅行…行きたくないか?」 「旅行…?」 「そう、旅行。今回の入院を頑張ったら旅行に行こう?」 「わ。いいな、宵さん。俺も行きたい」 「分かった分かった。雅宗も誘って4人で行こう。ご褒美だ。連れていってやる」 「本当?」 「え…。ついていっていいんですか?」 「むしろおまえたちがいいのか?」 「いいに決まってます!むーちゃんも喜ぶ」 「ああ。けど、勤務調整頑張ってくれよ?」 「分かった。頑張ります」 宵はご褒美につられて大人しく横を向き 「暴れちゃうと危ないんで体、支えますね」 「うん」 雫に体を支えられると宵はドキドキしながらその時を待った。

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