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詩乃 思いだす
その後、詩乃は1日中、明に甘えて過ごし、電話の折り返しを忘れたまま電話の充電が切れた。
あたりがすっかり暗くなるころ、明は時計を見て詩乃に視線を移した。
「昨日は明けだったから明日は出勤だよね?詩乃」
「あ、うん。でも…」
「でも?」
「明さんと一緒にいたいです」
「何を言ってるの?詩乃。気持ちは嬉しいけどそれは駄目だ。学生じゃないんだからしっかり仕事はしないと」
「そ、そっかそうだよね」
「俺も明日は仕事だしね。そうだ。ここの鍵を渡さないとだね。後、携帯の連絡先を交換しないといけない」
「携帯電話…あ……」
詩乃はこの時になってはじめて病棟から電話が来ていたことを思い出して慌ててカバンから電話を出し電話を折り返そうとしたが電源が落ちていて焦った。
「どうしよう…充電が…。病棟から電話来てたの忘れてた…」
「病棟から電話?いつ?」
「朝」
「それは…詩乃。まずいよ。気づいてあげられなくて俺も悪かったけど職場からの電話はすぐに折り返さないと」
「え…。明さんは悪くない。忘れてたぼくが悪い」
「とりあえずすぐに充電しよう。充電コード貸すから」
「ありがとう。病棟になんて言おう…」
「仕方ないよ。正直に謝るしかない」
「うん」
詩乃は焦る気持ちを抑えて電話が通話できる状態に復活するまで待った。
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