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尊敬〝由宇 27歳編〝

「…え、、…うそ。……もう針刺さってる…」 由宇は自分の腕を見て驚いた。 嫌な時間が来ると思っていたのに白鷺とおしゃべりをしているうちにいつの間にか点滴の針を刺されていて、目をぱちくりした。 「はい、おしまい。よく頑張ったな?由宇。痛かったか?」 「…痛くなかった……ぅっ……っぅぇ…」 「あ?ちょ、おいどうした?痛くなかったのに泣いてんのか?しょうがないやつだなぁ。ほら、こっき来な」 「んぅ…?…っ」 白鷺はベッドの柵を下ろしてベッドの端に座りメソメソする由宇を抱き寄せ 「好きなだけ泣きな」 「ごめっ…だって…だってさっ痛いと思ってたのに痛くなくてなんかすっげぇ嬉しくてさ…っぐす」 鼻をすすりながら由宇は白鷺に抱きつき、白鷺の厚い胸板に額をつけ (祖父江先生も注射すんの上手だったけど白鷺先生はもっとすごいや。紫藤先輩もうまかったけど、コミュ力考えると白鷺先生最強かも。いちばん憧れは瀬谷先生だけど、尊敬すんのは白鷺先生かも。なんかかっこいいな…こんだけ腕があればみぃを泣かすことも減るんじゃ…) 「ねぇ、せんせ?注射のコツ、俺に教えてよ」 由宇は白鷺から体を離して白鷺を涙目のまま見つめ、真剣な表情で頼む由宇を可愛いらしく感じ白鷺は柔和に笑い 「ん?教えるのは構わないが…指導医の紫藤先生は注射得意じゃなかったか?上手いって噂で聴いているが、彼に教わらなかったのか?」 「ううん。紫藤先輩にももちろん習った。けど、俺は白鷺せんせに教わりたい。だめ?」 「いいよ。教えてやる」 「ほんと?やったぁ」 満面の笑みを浮かべると由宇はガシっと再び白鷺に抱きつき、由宇は白鷺の胸に顔をうずめた

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