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初出勤

翌朝、幸は出勤の準備のため右往左往していた「えーと…ペンよし、メモよしでしょ…それから」 「幸。そう気負わなくても大丈夫だから。行くぞ?」 そんな幸を更科はほほえみながら見つめ、手を差し出した 「え?手…繋ぐわけ?恥ずいじゃん。マンション出たら離してよ?」 文句を言いながらも幸は更科の手に手を重ねた 「幸はバレるの嫌か?俺はオープンで行こうと思っていたが?」 「なっっ。そもそも男同士じゃんか!世間の目とか」 「悪い虫がつくと困るから日頃から俺としてはアピールしたい」 「蓮ってさ…ぶっちゃけ独占欲強いよね?」 「意識したことはないが…たぶんそうだろうな」 更科はマンションを出ても恥じることなく手を繋いで職場へと続く道を歩いた 幸は道行く人の視線が気になり下を向いて歩いた 「う〜さすがに…院の敷地入ったら離してほしい〜」 「ん〜?ひとつ後で言うこと聞いてくれるならいいぞ?」 「代償でかっ。分かった分かったから離して」 「はいはい。昼休み、ちょっと抜けれそうなら俺の診察室来いよ?じゃあ、医局棟は向こうだからまたな」 ひらひらと手を振り更科は医局棟方面へと消えた。 幸は息を整え、事務所へ入った 「えと…おはようございます。今日から働く来栖です」 「おはようございます。更衣室案内しますね」 ・ ・ 更衣室で着替えた幸は、病棟へ向かった。 渡された鍵が重い…ありとあらゆるところが施錠されているから精神科ならではの必須アイテム 他科との違いのひとつのこの鍵…いざつけるとなんだか身が引き締まる思いだった 「おはようございます」 「おはようございます。来てくれるのを楽しみにしていたよ。俺がこの階の師長の大澤誠(おおさわまこと)です。よろしく」 「男性が師長なんですね?」 「精神科は男性師長もめずらしくないよ。力がある分頼りにもされる。来栖君にも期待してるよ」 「力は…あんまり期待しない方がいいかもだけど…えと…がんばります」 「まあ気楽にね。みんな、申し送るよ〜」 幸の精神科看護師としての第一日目が始まった 午前は病院や病棟を案内してもらい慌ただしく終わり、昼休みに入った。 病棟のみんなと食堂で食事を済ませ、約束どおり幸は蓮の診察室へと向かった。 白衣姿の蓮にドキドキが止まらない わざわざこんな人気のないとこに呼ぶなんてそういうつもりなんだろうか?

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