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第4話 R18

「うぉ~い、店閉めろよ~」  事務所の奥からケンちゃんが僕に声を掛ける。  僕はケンちゃんの言葉に返事をする事なく、ドアに鍵を掛けるとオープンの看板をクルリと回しクローズにする。そのままレジの所まで戻ると、店内の電気をオフにして、レジ締めを始める。  「終わったな~」  事務所から出て来たケンちゃんは、疲れた様に首をコキコキと回しながらレジの中にある椅子に腰掛けると  「今日の目標いった?」  と、毎日の確認を取る。  「今日はいったよ、原田さん来てくれたしね」  「あ、原田さん来たの?」  「ケンちゃんに宜しくってさ」  「後で、ラインしとくかな」  原田さんとは、このお店が出来た頃からの常連さんで、ちょくちょくお店に遊びに来てくれるお客さんだ。  ケンちゃんは事務所でお店の服をネットで売る事をしているから、店頭はほぼ僕が一人で回している。  「腹減った~、お前何食いたい?」  「え?僕に決めさせて良いの?」  「………。イヤ、駄目だな。ラーメン行くぞ」  「は~い」  お店を閉めてケンちゃんと二人、行きつけのラーメン屋に足を運ぶ。  ラーメン屋といっても、夜は居酒屋になる店で酒やつまみの種類が豊富だ。  「いらっしゃい、好きなとこどうぞ!」  店に入ると、額にタオルを巻いていかにもラーメン好きですっていう大将がニカリと笑って僕達を出迎えてくれる。  僕とケンちゃんはいつもの決まったテーブル席に腰を落ち着けると  「お前、いつもので良いの?」  と、ケンちゃんが確認してくるので、僕は首を上下に振る。  「すみません」  「ハイよ!」  メニューもそこそこに、近付いて来たスタッフに注文をしておしぼりで手を拭く。  「何時頃に帰るつもりなの?」  「あ?三十分か一時間居たら帰る」  今日のイベントにどの位居るのかケンちゃんに確認すると、その返事。  「早くね?」  「馬ッ鹿、居過ぎだ」  オジサンが遅く迄居ても痛すぎるだろ。なんてブツブツ呟いている。  「はぁ~、じゃ僕も早目に帰ろうかな」  「お前は居ろよ、楽しんでこい」  「だって今日のインビ見させてもらったけど、テクノじゃん?僕、テクノに知り合いいないし」  「だから良いんだろが!交友関係広げてこい」  なんだか兄に心配されている弟みたいだな……。とおかしくなって、バレないように口元を歪めていると  「お待たせしました~」  お店のスタッフが持って来てくれたラーメンを確認もせずに僕達の前に置いてくれる。  「「いただきます」」  両手を合わせてお互い一言。  その後も無言でズルズル。  食べていると、餃子とチャーシュー丼がテーブルに到着し、箸を付ける。  「お前、彼女に連絡したのか?」  餃子を頬張りながら、ケンちゃんが問いかけてくる。  僕もモグモグと口を動かしながら  「休憩中にしたよ、何、心配してくれてんの?」  ニコリと笑いながら質問返しした僕に  「ま、そりゃそうか。お前が彼女に連絡しないなんて無いか?」  「勿論!心配かけさせたく無いしね」  茉優ちゃんにはキチンと連絡済み。  楽しんできてね。と、カワイイ絵文字付きだった。  ラーメンを食べ終わり、暫く店でお腹が落ち着くまで喋ってからお店を出る。  「ご馳走様でした!」  「ン、また来ようぜ」  何時ものやり取りをして、二人並んで歩き出す。  イベント会場は、ここから近い。  クラブナインというお店で、普段はヒップホップ中心にイベントをしている箱だが、今夜はテクノだ。  箱に着いた僕達は、入り口の前で座っているスタッフにインビを渡して手首を見せる。  するとスタッフは、手首にブラックライトで光るインクのスタンプを押すと、コインを一枚僕に渡してくれる。  コインとドリンクが交換できるのだ。  「楽しんで~」  感情のこもってない声音でスタッフは一言だけ呟くと、僕の後にいる人達ヘ同じ事を繰り返す。  「んじゃ、俺は挨拶してくるから楽しんでこい」  「解った」  ケンちゃんは僕に軽く手を振ると、重たい防音の扉を開けて、中へと入ろうとしている。と、クルリと首を回して  「明日、無理そうなら早目に連絡くれ」  そう言って、扉を入って右側にあるカウンターの奥に消えて行く。  ……………。そこまで羽目を外そうとは思ってないけど……。  ドンドンドンドンと、低音が響くフロアーはまだ時間が早いのか、人もまばらだ。  僕は取り敢えずカウンターで、ドリンクとコインを交換しフロアーのすみのほうで軽くリズムを取りながら思い思いに曲にノッている人達を眺めている。  もう少ししたら人が増えそうだけど、どの位で帰ろうかな……。なんて、あまりテクノのイベントに来たことが無い僕は、早々に帰る時間を考えている。  まぁ、ケンちゃんよりは遅く帰らないと、あの後どうだったとかは聞かれるからなぁ。  知り合いもいない所で友達を作るのは、僕にとっては至難の業だ。キョロキョロと周りを見渡すのもなんだか恥ずかしさが勝ってしまい、辺りを見渡せ無い。  ………。何処かに座るか。  フロアーとカウンター以外にも、壁沿いにいくつか椅子が設置してある。  僕は壁つたいにスススと移動し、椅子に腰を下ろす。  スマホを弄りながら、時折フロアーで踊っている人達を眺め、いかにも誰かを待ってますみたいな雰囲気を出すのが精一杯だ。  「晴人、じゃぁ俺は先に帰るからな」  頭の上から少し大きな声で名前を呼ばれ、僕は顔を上げる。  視線の先にケンちゃんの顔を捉えて、僕は少し安堵するが、台詞を聞いて  「もう帰るの?」  椅子から立ち上がり、ケンちゃんの耳元で少し大きく声を上げると  「居過ぎた位だ。お前は踊ってこいよ」  ニヤニヤと口元を上げて言うケンちゃんの肩をポンと叩き  「踊れねーわッ!」  と答えた僕を、今度は声を上げてケンちゃんは笑う。  「借りてきた猫じゃねーか」  大人しく座っていた僕をそう例えて、ケラケラと笑うケンちゃんに  「僕ももうケンちゃんと一緒に帰ろうかな……」  「やっと人増えてきたし、もう少しいれば?」  ポンポンとケンちゃんに肩を叩かれ  「ま、俺は帰るから。明日マジで無理そうなら連絡しろよ」  「解った……」  そう言われれば、もう少し居ようかと僕は椅子に再び腰を下ろす。  ケンちゃんが言うように、フロアーは先程よりも人で溢れている。大人数で何組かカウンターに固まっている者や、フロアーで踊っている者と様々だ。  僕は重たい扉を開け、外の世界へと帰って行くケンちゃんの背中を見送り、視線を戻そうとした。と、カウンターのグループから一人、真っ直ぐに僕を見ている視線とぶつかる。  たが、これだけ人が多くなっているのに、本当に視線が交わっているかも疑問で、数秒見つめ合って僕は自然に視線を外した。  …………。まさか、見られては無かったよな?と、間を開けて再度チラリと視線を戻すと、もう相手は僕を見ていない。  デスよね~。と心の中で自分に突っ込みを入れて、底の方に残っている飲み物を喉に流し込み僕はカウンターに行く。  次のドリンク飲んだら、帰るかな。と、心に決めて。  視線が絡んだグループを避けて、僕はカウンターの中にいるスタッフに注文を言う。  ドリンクとお金を交換して、再び元の位置に戻ろうとするが、誰かが既に椅子に座っていた。かといって、カウンターにずっといるのも他の人の邪魔になるので、僕は仕方無く壁際へと移動する。  フロアーで踊っても良いけれど、やはり何時もいっているヒップホップのノリじゃない雰囲気では、少し気恥ずかしてくて一歩の勇気が出ない。  壁に背中を貼り付けて、ドリンクを飲みながら、踊っている人達をボーっと眺めている。  不意にまた視線を感じて、チロリとカウンターの方に目線を泳がすと、同じ人と視線が絡む。  今度は自然に目線を外す事が出来なくて、あからさまに外してしまった。  ………。イヤイヤイヤ、僕を見てた訳じゃ無いしな。  と、自分に言い聞かせて少し緊張気味に踊っている人達を眺めていると  「一人?」  使い古されたナンパの常套句が横から聞こえて、僕は声がした方に顔を上げる。  そこには言わずもがな、先程から目が合っていた人がニコニコと僕を見ている。  まさか声を掛けられるなんて思って無かった僕は、一瞬言葉に詰まり固まってしまう。そんな僕を相手はまだ笑顔で見下ろしているものだから  「………、は、ぁ…?」  と、気の抜けた返事しか返す事が出来ない。  「一緒に飲まない?」  「イヤ~……、どうしようか……な……」  思いがけずの相手からの言動に戸惑ってしまう。  いい返事が返せない僕に、相手は息を吸って次の言葉を発しようとした時に  「文也~~、何ナンパしてんだよ?」  と、ヒョコリと何人かが顔を出す。  「お前等邪魔だから」  文也と言われた彼は、取り囲んだ相手達に向かってヒラヒラと手を振りながら、あからさまに嫌な表情を浮かべる。  「良いじゃんか~~、皆で楽しもうぜ」  邪険にされてもお構い無しに、文也の肩に腕を回し僕の頭の先から爪先までジロジロと見ている相手は、敵意剥き出しな視線を僕にくれる。  ………、あ~~~、ハイハイ。大丈夫デス、僕はもう帰りますね。  文也が僕に声を掛けた事が気に入らないのか、狙っている人を邪魔する僕が気に入らないのか、そのどちらもだろうとわかり易く僕に伝えてくれる表情に、素直に帰ろうと思ってしまう。  「イヤ~……、ソロソロ帰ろうと思って」  「そうなんだ?ゴメンな引き止めて」  僕が言い終わらないうちに言葉を重ねられて、僕は、ハハッ。と苦笑いすると、ソロソロと輪の中から出ようと足を動かす。  「イヤイヤ、一杯だけでも付き合ってよ。俺奢るし」  グイと手首を捕まれ、足止めされる。  僕は思いもよらない返しに再び相手を見詰めると、顔は先程と同じで笑顔だ。  「引き留めるなよ~、俺達で楽しもうぜ?」  取り巻きにいた奴も文也の反応が意外だったのか、慌てた様に言葉を発するが  「だから邪魔すんなって、踊ってこいよ」  アッサリと拒絶され、そのまま僕の手首を引っ張ってカウンターの方に足を進めてしまう。  「え?イヤ、チョット……」  引っ張られながらカウンターに着くと  「奢るよ、なに飲む?」  隣でそう言われるが、僕は取り残された人達が気になって後ろを振り返ると、僕の事をジトーっとした目で見ている顔とぶつかり、そっと正面に向き直す。  そんな僕の反応を見て、文也と言われていた人も後ろを振り返り何かジェスチャーで反応をしていたが、僕は真っ直ぐに前を向いていた。  「ゴメンな、嫌な感じで」  「………はぁ」  覗き込むような感じでそう言われ、僕は反応に困りうつむいて返事をする。  「見ない顔だなって思って、何君?俺は文也」  「………、晴人」  「晴人、何飲む?」  すんなりと名前を呼ばれドキリとしてしまう。そりゃぁ、名前を教えたんだから呼ばれるのは当たり前だが、何か……久し振りに同性というか……知らない人から呼ばれてくすぐったい感じというか……。  それに、このパターンはもしかすると、もしかするかもしれない。と、期待してしまう自分がいるのも確かだ。  だけど僕はそんな事を悟られまいと、平静を装ってドリンクを注文する。僕に続いて文也も。  ドリンクが目の前にきたら、スムーズに文也は瓶同士をカチリと合わせると一口飲んでいる。  ………。遊び慣れてる感。  チラチラと文也を盗み見る。  僕よりも背は高く、普通の体型の割には締まった身体をしている。ラインに沿った服装は嫌味なくスッキリとシンプルで、アクセサリー等も付いていないのが好感が持てる。  ボブの髪型はパーマやブリーチもしていなく、片方のサイドをスッキリと刈り上げている。  ウ~ン。………、好みだ。  だが一番は、指だな。  大きくて、節が出ていて長く、手の甲に浮き上がる血管。爪も深爪なんじゃと思う位に切っているが、綺麗だ。  「何?好み?」  クスリと笑って、僕の前で手をヒラヒラとさせる文也は楽しそうだ。  僕は見過ぎてしまった事が恥ずかしく、一瞬眉間に皺を寄せるが次いでは直ぐに視線を反らした。  「本当に今日、一人なの?」  何がそんなに気になるのか、何度目かの同じ質問。  「そうだけど?」  訝しげに答えた僕に、文也はもう一言だけ付け加える。  「さっき、年上の人っぽい人と話してたじゃん?知り合い?」  年上の人?…………。ケンちゃんかな?  イベントにきて、話したのはケンちゃんと文也だけ。今は文也と話してるから、消去法で言ったらケンちゃんしか残っていない。  僕は、そうだよと答える前に  「もしかして、彼氏とか?」  「え?違うよ」  意外な台詞に、僕は直ぐに反応して答えると答えるスピードが早くて面白かったのか、文也は笑いながら  「そうなんだ?結構親密そうだったから」  なんて言ってくる。  僕はそう言ってくる文也の台詞に、再び意外だと感じる。  客観的に見れば、僕とケンちゃんは親密そうに見えるのかな?  元担任と、元教え子。それ以外にもケンちゃんには色々とお世話になっているし、今は雇い主と従業員だし。まぁ、四六時中一緒にいるのは本当の事だが……。僕にはお兄ちゃんみたいな……?  文也の台詞に僕が答えず何か考えていると  「あ、元彼とか?」  と、また思いもよらない所からの質問に、僕は笑ってしまう。  「どうしてもソッチに結び付けたいんだ?」  「違うの?」  「違うよ」  「じゃぁ、俺が口説いても問題無いって事ね?」  余りにもスムーズにそんな事を言ってしまうものだから、僕は戸惑う以前に笑ってしまった。  「ハ、冗談」  「では、無く」  言葉遊びをしている様に返す文也は、本当に楽しそうだ。  「あ~~~……と?」  こんなにもストレートに口説かれる事も久し振りで、反応に困っていると  「アレ?あ~~……、違った、かな?」  今度は文也が戸惑った様子を見せる。  耳の後ろを指先で何度か撫でると  「ノンケの人だった?」  直球にそう聞かれ、僕は益々反応に困る。  ノンケと言えばそうなるし……。そうじゃ無いところもある。けど、出会って直ぐの人に僕のセクシュアリティを説明するのも難しいし、これだけモテそうな人が本当に冗談では無く僕と関係を持ちたいのかと疑ってしまうのもしょうが無いだろ?  先に彼女がいるって事も伝えたいけど、そうなるともう相手にもしてくれ無さそうだし………。  タイプな人から声を掛けられて、逃したく無い場合はどう言えば正解なんだ?  「イヤ、違うけど……」  と、言う他ないのだ。  「だよな?ビビった~」  安堵したように言う文也の台詞を聞きながら、相手の反応を注意深く探ってしまう。  「今日は何時まで遊ぶつもりなの?」  「ソロソロ帰ろうと思ってたところだった」  「え?そうなの?」  何回目かの同じ台詞を言いながら、遊び慣れているなと感じる。  他人から自分がどう見られているか知っている人だと思う。  話した感じ嫌な気はしないし、会話のリズムが良いのだ。だが、そう言う人こそ遊びの相手を探している人が圧倒的に多いのも確かだ。  ………、僕の偏見かもしれないが。  「さっきからそう言ってるし」  「構ってよ」  なんで僕なのかと疑問がグルグルと頭の中でループする。  先程一緒に居た人達みたいな、なんて言ったらいい……派手目な?目立つ?人達と居た方が様になると言うか、似合ってる?と思うんだが………。  テクノのイベントなだけあって、箱に入ってる人達も僕からしたらお洒落に見えてしまうし、シュッとした格好の人達が多い。  僕は、どちらかと言うとオーバーサイズに服を着るのが好きだから、見た感じはダボッ。だしね。お洒落な髪型って言う感じではなく、天パがキツイから短く切ってもパーマをあててる様なクルクルだし……。  あ、何か気分が落ちるから、この辺で自分の事をディスるのは止めよう。  「構うって………、僕じゃ無くても…」  きっとモテるだろう文也を、僕が構うのも気が引ける。さっきの人達だって、きっと文也目当てで遊びに来ていたっぽいし。  「俺のタイプなんだよね、駄目?」  コテンと首を傾げさせ俺に言ってくる文也は、そうすれば誰でも落とせる事を知っているみたいだ。  「タイプ……、嘘だろ?」  「イヤ、マジで。だからずっと見てたし」  …………。それは本当だろう。ケンちゃんと一緒にいた時から見てたのだから、まぁ、その通りなんだろうけど、言われ慣れていないアプローチに僕はタジタジと視線を泳がしてしまう。  「この後って時間あるの?」  急に近付いて、僕の耳元でそう尋ねる文也は、言わずもがな僕も期待している事を匂わす。  ………。友達よりも、こっちでの出会いに自分の心拍数が上がるのを感じる。  「………、まぁ」  文也の問いに、ボソボソと答えた僕に、彼は笑顔を向けると  「場所、変えない?」  と、提案。  断る理由も無い。ケンちゃんは友達を作れと言っていたが、僕は出来れば遊んでくれる人か、贅沢を言えば付き合ってくれる人を探していたから。だから僕は無言でコクリと頷く。  そんな僕の態度に、文也は僕の肩を一度抱き締めると直ぐに離して  「俺ん家此処から近いんだけど、良い?」  なんて、自宅に招待してくれるらしい。  僕は、その提案が意外だった。  大体は自宅に招待はせずに、ラブホがお決まりのパターンだ。だが、男同士のラブホ事情も難しいのも一般的だ。  ゲイの人なら、何ヶ所か行きつけのラブホを知っている人が多い。僕も知り合った人達と行く度に、ここなら男同士で入れるというところを知っている。  まだまだ世間は、男同士でラブホを使う事に消極的だ。大概は事前に使えるかどうかを確認したりする。  パネル式のとこは使える率が高いが、人が窓口にいる場合は駄目な場合が多い。  まぁ、パネル式のところも部屋に入った途端に内線で確認を取られ、男同士がNGと言われる時もあるが。  「家、行って良いんだ?」  素直な気持ちをそのまま口にすると、文也はキョトンとした表情を僕に向けて  「ン?今回限りじゃ無いだろ?」  一度限りの関係で終わるつもりは無いらしい答えに、僕は何度か瞬きをすると僕の反応に苦笑いを浮かべた文也は  「俺の言葉を信用して無いのか、晴人が俺と一夜限りにするつもりか、どっち?」  と、問われ僕は直ぐに答える事が出来ない。  どちらも考えていた事だからだ。  モテそうな文也が僕の事をタイプだと言った事も半分は信じたい気持ちもあるが、冗談だと僕は思っているし、遊ばれるんだろうと思っている僕は一夜だけ関係を持って、後腐れなくさよならするほうが楽だとも考えていたから。  図星を指摘され何も言えなくなった僕に、文也は一つ溜息を吐き出すと  「まぁ、晴人がそのつもりなら、俺にはどうする事も出来ないけどね。でも俺はそう言う風に思ってるって事だけ知っててくれたら良いよ」  ナンパだし、しょうがないよな~。と、呟く文也がノリで言っている様にも見受けられない。  …………。本当にタイプという事だろうか?  だが、全部を信じるには時間が足りない。  「なぁ文也~、いつまで俺達の事ほっとくつもりだよ~」  僕と文也の間に、先程の取り巻きの人達がそう言いながら入ってくる。  僕は押し退けられるように何歩か後退りすると手に持っていたドリンクを飲み干し、カウンター内にいるスタッフに瓶を返す。  この人達もきっと目当ては文也で、今日のイベントに来ているのだ。そこに知らない僕が鳶に油揚げをさらわれるで出てきたものだから、そりゃぁいい顔はしないよな。と、納得する。  僕は別にこのまま帰っても部屋には茉優ちゃんが居るし……、まぁ、素直に自分のタイプを逃してしまうと思うと惜しい。が、悲観する程では無い。  また違う人や、タイミングが来るはずだしな。  そう思って文也の方に目線を向けると、思いの外真剣に嫌そうな表情で、何かを話している。  取り巻きの人達は、そんな文也の機嫌を取りながら、だが一緒に居たいと話している感じだ。  箱の音で、近い距離なのに何の会話をしているかは解らないが、状況と顔を見れば何となくは理解出来る。  僕は話が長くなりそうな雰囲気を察知して、そのままフェードアウトするかと一歩を踏み出し、文也を囲んでいる脇を通り過ぎようとすると何処から伸びてきたのか再び手首を掴まれ  「~~~ッ!無理だって!晴人出るぞ」  と、手首を掴まれたまま出入り口に向かって歩く。  「文也ッ!!」  後ろからは文也を引き留める声が聞こえたが、直ぐに大音量の音楽にかき消えてしまった。  文也は重い防音の扉を開いて、外に出るとそのまま歩き続けている。  箱の外には、何人も固まって喋っている人達がいる中、文也は僕の手首を掴んだままなので何人かの人達に見られていて、僕は視線をアスファルトに落として歩く。  「はぁ~……、マジでしつこかった~」  ウンザリだと言わんばかりの声音で呟いた文也は、僕の様子を確かめようと後ろに首を回すと下を向いて付いてくる僕を見て、掴んでいた手首を離してくれる。  「悪ぃ……」  本当に申し訳無さそうに呟いた文也に、僕は視線を向けて  「イヤ……こっちこそゴメン……、あんまり慣れてなくて……」  と、呟き返す。  異性とは幾らでも手を繋ぐ事は出来るが、同性とはやはり外でというシチュエーションには抵抗がある。  「イヤ、俺が悪い……。連れ出したかったけど、強引は駄目だよな」  気まずい空気が二人を包み、お互い暫く無言で歩いていたが、先を歩く文也がハタと足を止め  「ここ」  と、僕を振り返りながら顎で隣のマンションを指す。  本当に、クラブナインから近い場所に住んでるなと思いながら、建物の中に入っていく文也の後をついて行く。  エレベーターで五階まで上がり、扉が開いてから右側に進路を変えてそのまま奥の突き当りまで歩いて行く。  玄関を開けてそのまま僕を先に入らせてくれるのか、ドアを持ったままの文也の脇をスッと通り過ぎ部屋の中へと入る。  「お邪魔します」  コソコソと、夜も更けた時間なので呟くと後ろで文也がクツクツと笑いながら  「晴人って、体育会系なの?」  なんて、僕が予想もしない質問が飛んでくる。  「イヤ、なんでだよ?」  文也が言っている意味が解らなくて、靴を玄関の隅に脱ぎ部屋の中に入って問い返すと  「え?礼儀正しいから?」  ニヤついたまま答えられ、僕は眉間に皺を寄せる。  今のどこが礼儀正しいのか、普通だろ?  と、言葉にしなくても顔に出ていたのか  「俺の友達はいちいち挨拶しないからさ、新鮮で」  靴を脱ぎながらそう答え、玄関の扉を閉めると文也は正面に顔を上げて  「奥まで入ってて、服着替えて行くわ」  指で部屋の奥を指しながら、僕に奥まで進めと案内してくれる。  僕は言われた通りに奥まで歩いて行き、突き当りのドアを開けると、リビングダイニングになっている部屋に通されたらしい。  壁にあるライトの電源を点けると、部屋の中が一望できる。  入って正面に大きなベランダがあり、その前にテレビ。テーブルは無く、背の低い三人掛けっぽい大きなソファーだけがテレビの前にある。  左隣にカウンターキッチンがあって、そこに椅子があるって事は、そこで飯を食べているんだろう。  棚という物は無いし、ソファーの下にマットも敷いてない。言ってしまえば、何も無い部屋の様に見える。  ……………。テクノ好きだから、部屋もミニマリストなのか?と思わせる位に。  「何か飲む?」  部屋の中で立ち尽くしていた僕に後ろから声が聞こえ、文也が中へと入ってくる。  「座れば?」  僕が何もせずに立っている事が不思議なのか可笑しそうにそう言われ、僕はソファーに近付くと端の方に腰を下ろした。  「酒か、水か、コーヒー位しか無いけど?」  キッチンの中に入って、そう僕に声を掛ける文也に  「じゃぁ、水で」  「了解」  直ぐに文也は両手に自分が飲む酒と、水のペットボトルを持って僕の隣に腰を下ろす。  「端じゃ無くても」  クツクツと肩を震わせながら僕に水を差し出すと、自分の缶のプルを開けて僕にズイッと差し出す。  僕は条件反射の様にその缶に、ペットボトルをぶつけると正解とばかりに笑顔になった文也はゴクゴクと喉を鳴らして酒を煽っている。  「ハァ、ヤッパ落ち着くわ~」  床に缶を置き、足を投げ出してテレビを点けると、ネットフリックスの画面に変えて  「何かつけてても大丈夫?」  と、僕の返事を待たずに洋画をチョイスしている。  クラブとは違った雰囲気の文也だ。  人の目を気にしない、少しあどけなさが出る彼に好感が持てる。  「てか、友達?良かったのか?」  強引に出て来てしまって、きっと彼等は怒っているだろう。表情までは見てないが最後に聞いた声音も不機嫌そうだった。  「ン?大丈夫、大丈夫。あんまり知らない奴等ばっかだったしな」  「知らない!?」  あれだけ仲良さそうに絡まれていて、あんまり知らない人達だと?  「イベントで何度か絡まれて、連絡先交換してたんだけど、今日も来い来い煩くてさ……。行ったわ良いけどずっと絡まれてたから、俺も帰ろうと思ってた所で晴人見つけたから」  最後の台詞を吐きながら、文也はニコリと僕に笑う。  良い雰囲気を出してくれていると思う。  こちらが嬉しくなるような言葉を言ってくれているし、僕が生粋のゲイなら舞い上がってしまうだろう。  だが僕はまだ彼女がいる事を文也に言うべきかと迷っている為、どう返して良いものか躊躇うのだ。  彼女の事は凄く大切にしたいが、目の前にいる文也の事も極力ならば傷付けたくは無い。  …………。ヤッパリ殴られる覚悟で告白するしか………。  腹を決めて、男らしくスパッと言ってしまうかと息を吸い込むと  「てか、連絡先交換しない?」  ゴソゴソと部屋着のスウェットのポケットから、自分のスマホを取り出しラインの交換をしてくれと文也は画面を操作している。  ……………。言うチャンスが…………。  ズルズルと先延ばしして、いい事になった事は余り無い。だが、逃すのは惜しい相手が目の前に居れば自分の欲求を先に満たそうとする僕は、狡い。  そうさ、狡いさ!そんな事解っている!  逃したく無ければ、逃がさいようにすれば良い。後日言う機会があれば、その時に言えば良いかと僕は彼女の事を後回しにする事にした。  画面を出して、僕の反応を待っている文也に、僕も自分のパンツのポケットからスマホを取り出し、文也に向ける。  QRコードを読み取ってもらい、お互いの連絡先を交換すると、ソファーの背もたれに片方の腕を伸ばして  「チューしても、良い?」  少し顔を傾けながら、僕の了解を待っている文也の顔に、僕は座っていた位置をずらして文也に近付くとそのまま顔を近くに持っていく。  僕の動作に文也は背もたれに置いていた腕を僕の肩に回して引き寄せると、ゆっくりと唇を合わせる。  最初は何度かついばむようなキスを繰り返していたが、次いでは文也の舌が僕の唇に触れる。  それが合図の様に、僕も薄っすらと唇を開くと、文也の舌が僕の口腔内に侵入してくる。  あ、アルコールの匂い。  舌を招き入れると、口の中にアルコールが香る。それが自分のじゃなく文也からのものだと思うと、リアルに他の人とキスをしていると実感してブルリと背筋に緩く電流が走った感覚。  久し振りのキスだ。  茉優ちゃんとは、キスもしない。  それはしょうが無い事だけど、他の人とキスをすると自分がこういう事に飢えていたのだと実感する。  口腔内に侵入してきた舌は僕の歯列をなぞり、上顎を優しく愛撫するように動く。  僕は堪らずに眉間に皺を寄せて小さく喘いでしまう。  そんな僕の反応に気を良くしたのか文也は抱いている肩にグッと力を入れて、空いている方の手を僕の服の中にそっと入れ込む。  次に何をされるのか予想出来た僕は、期待から無意識に背中を反らせ、胸を付き出す様な格好をとってしまう。  文也は僕から口を離すと、弄っている手はそのままに  「晴人は、どっちが良い人?」  薄く笑いながらそう尋ねる文也の目は、欲情に揺れていて、僕もまたその目に煽られる。  「出来れば………、ネコが良いけど、どっちでも……大丈夫」  素直に口にすれば、文也は嬉しそうに  「了解………、けど、今日はどうしようか?バニラだけでも良いよ?」  と、提案してくれる。  その提案に、僕はホッと胸を撫で下ろす。  男同士、アナルを使ってセックスをするとなると、準備に時間がかかる。  僕は何時間か前に食事を取っているし、なおのことキチンと処理をしなければならない。  今迄の人も、ラブホに入ってお互い盛り上がっていても準備に時間がかかるため最終的にはバニラで終わる事もほとんどだ。  ならば最初からバニラで、お互いを慰めれば良いと思う人も大多数でアナルを使ってセックスする事の方が最近では稀かも知れない。  バニラは、隠語だ。なんと言うか………。バニラアイスを食べる所からきているので………。言わなくても、なんとなく想像できるかと思う。  文也の提案に僕はコクコクと首を上下に振ると弄っていた手を外に出し僕の手を握り  「じゃ、ベッド行こうか」  抱いていた手を離し、握っていた手を持ち変えると点けていたテレビを消して、文也は立ち上がる。  僕は文也が立ち上がった反動で中腰の態勢になったのでそのまま立ち上がり、手を引かれるがままに文也について行く。  文也は先程部屋着に着替えて来た部屋に僕を案内するつもりだ。そこが寝室なのだろう。  ドアノブを開けられ、中へ通してもらうとダイニングとは違いこちらには棚や物が沢山ある。  そのほとんどが、レコードやDJ機材だ。  「……凄い」  クローゼットの扉を開け放して、その前にDJ機材を組んでいる。組んでいる骨組みはブロックでその中にレコードがビッチリと詰まっている。  クローゼットの中にもアルミの棚があり、そこには木箱や段ボールで仕切られた箱の中にもレコード。  クローゼットの横にはクイーンサイズのベッドがあり、ベッドの正面奥には窓、窓の直ぐ前には二台目のテレビが置かれてある。  「回すの?」  興味津々で聞いた僕は握られた手を解いて機材の近くまで行くと、クローゼットの中を覗く。  見えなかった棚の中央部分には、二台のマックとCDJ機材がある。  「たまにかな?呼ばれたら回す位で、昔ほどして無いよ」  僕の知り合いでもイベントで回す人が何人かいるが、ヒップホップの人なので基本はレコードで回してプレイする人が多い。  テクノになると、音のズレを無くすためにCDJ機材を使う人が今はほとんどだ。  機械が勝手に音のバランスやリズムを合わせてくれるので、ミックスしやすい。  テレビ横のアルミの棚には、レコード、CDの他に音楽関連の本が無造作に置いてある。  「凄いね……」  「イヤイヤ、専門の時にDJ機材は買ってたから、俺はほとんど金使って無いしね」  笑いながらベッドに腰掛けていた文也は立ち上がると、クローゼットの中に入りマックを操作すると、お気に入りのテクノなのか、部屋の中に音が入る。  「で、どうする?止めとく?」  あまりにもキョロキョロと部屋の中を興味深げに見ている僕に、文也は苦笑いを浮かべながら尋ねる。  「あ………ゴメン。凄くて、ツイ……」  ハタと動きを止めて、僕は文也に近付くと  「大丈夫?」  両腕を僕の肩に置いて確認を取ってくる文也に、僕はハハッ。と笑うと、それが合図になったのか、ユックリと文也の顔が近付いてくる。  僕は、その速度と一緒に両目を閉じる。  少しダウナーなテクノが僕の鼓膜を震わせた。  先程同様に唇を合わせてきた文也は、今度は直ぐに舌を僕の口腔内へと侵入させてくる。僕も緩く結んでいた唇を開いて彼の舌を迎え入れると、お互いの舌を絡め合わせていく。  舌を絡めながら文也は足を踏み出して、僕を抱き締めたまま歩き出すとベッドへと移動しているみたいだ。  僕は後ろ向きで歩いているし、文也とキスしながらだから倒れないように注意しているが、両肩に置かれていた手が僕を支えるように背中や腰に回されて、倒れないように抱き締めながら移動してくれる。  ドサッと膝の後ろにベッドの感覚が当たると、僕はそのまま腰を沈めた。すると、僕の上に覆い被さるように文也がベッドに膝を付いてきたので、僕はズリズリと腰を動かして上へと移動する。  「服脱がして、良い?」  離した唇で言いながらも、手は既にスルリと僕の服を脱がすために潜り込んできていて……、僕も無言で文也の服を掴むと、それがOKの合図だと解ったのかグイッと上に服を引っ張られる。  バサリッと下から上へ引っこ抜く形で服を脱がされ、文也も自分が着ていた服を脱ぐと再び唇をチュッと合わせてから、唇を頬や首筋に移動させる。  「ンッ、ンぁ……」  久し振りの人肌を感じて昂ぶっている僕は、口から漏れる喘ぎを止めることが出来ないでいる。  もっと触って欲しい。舐めて、しゃぶって、気持ち良くなりたい。  期待している僕のモノは、もうパンパンに張っていて下着が窮屈で堪らない。だから、ソロリと伸ばした手でパンツの前を寛げようとしたところで  「ん?キツイ?」  首筋に舌を這わせて、爪先で僕の乳首をカリカリと愛撫していた文也が、楽しそうに顔を下へと向けて呟く。  僕は無言でコクコクと首を上下に振ると、愛撫していた手が僕の手を押し退けてパンツに掛かる。  「ハッ……ギチギチだね。ごめん、気付かなくて」  ハハ。と笑ってパンツのボタンとジッパーを手慣れた手付きで外すと、耳元で「腰上げて?」と、囁かれ僕は素直に腰を持ち上げる。  文也は素直に腰を上げた僕に、いい子だねと言わんばかりに頬に一つキスを落とすと、下着ごと一気に腰から引き下げる。すると窮屈だった僕のモノは、ブルンッと一度揺れて下腹に付きそうな程反り返って主張している。  「あ~~~……、ヤバい……」  僕のモノに視線を向けながら、文也がそう呟くが、何がヤバイのか解らず無言でいると  「俺で興奮してくれてんだ?スゲー嬉しいんだけど……ッ」  僕のを見つめ、そうしてゆっくりと僕と視線を合わせた文也の目は、嬉しさの奥に獰猛さを隠しきれていない。その目にゴクリと喉を鳴らしてしまった僕は  「脱いでよ……、そっちも……」  少し上ずった声に恥ずかしさを覚えながらも、きっと僕も物欲しそうな表情になっているだと自覚する。  僕の台詞に文也は一度離れると、自分の着ていたスウェットをずり下ろし、僕同様に前が張りつめているボクサーを脱ぐと  「一緒に、握ってくンない?」  カリが張って、血管が浮いている怒張が目の前にある。コレで中を擦られたら気持ち良いだろうなと想像して後ろが疼いてしまうが、今日は無理だ。  僕は文也に言われた通り自分と文也のモノを一緒くたに握るが片手では心許ない為、両手でキツく握る。  握ると、ビクビクと文也のモノが気持ち良さそうに反応するから、それにさえ煽られて自分のモノからトロリと先走りが溢れてしまう。  文也はベッド横にあるチェストの引き出しからジェルを取り出すと、握っている僕達のモノにジェルを垂らす。  一瞬、ジェルの冷たさでビクリと腰が揺れるが、ぬるついたジェルをモノへ擦り付けるように手の平を上下に何度か扱き上げると、途端に熱で冷たさは気になら無くなる。  「ハッ……、ぁ……ッ」  「ヤベ~……ッ、気持ち、い…ッ」  また耳元で文也の声がそう言って、ゾクゾクと気持ち良い波が背中から腰に響く。  僕は握っている両手の片方を先端に移動させて、手の平で包むように動かすと途端にググッと文也のモノがビクついて気持ち良いんだと感じる。その反応に夢中で握っているモノを扱いていると、不意に文也が僕の乳首をキュゥッと柔く抓って引っ張る。  「ヒァ゛ッ……、ンンッ……」  不意に与えられた快感はビリビリと腰で甘い疼きに変わって、僕は無意識に腰を上下に振ってしまうと  「晴人……、顔そっちに向けて横になって……ッ」  文也のその言葉に、どういう態勢になるのかを理解して、僕は握っていた手を離して言われた通りベッドへと横になる。  顔を向けた先には、横向きになった文也の下半身があり、片方の足を広げて立てている。僕はその中心に顔を近付けると先程まで扱いていたモノへ手を添える。  すると、文也も僕の太腿を片方グイッと押し退けて開くと、躊躇いもなく僕のモノを口腔内へと含んだ。  「ンぁ……、ア゛~~……ッ 」  久し振りの感覚に、腰から下がグズグズに溶けてしまいそうな気持ち良さ。  ブルリッと臀部が痙攣して、グイッと腰を入れてしまう。だが、文也は噎せる前に少し顔を引っ込めたようで、再びジュルルッと下品な音を立てながら奥まで僕のモノを咥えてくれる。  僕も竿を握った手を上下に扱きながら、テラテラと光っている先端にチュッと一度キスをして、舌を伸ばし先端のカリ部分を円を描くように舐めねぶる。唾液を絡ませながら舐めた後に、括れ部分に唇をあてるように先端を口に含み力を入れると、顔を上下に振る。  「ッ!……、ンンッ……」  気持ち良かったのか下から僕のを愛撫している文也からくぐもった喘ぎが聞こえて、僕は集中的に先端をイジメにかかかると、グッと文也の手が太腿から臀部の方へと回り、自分の顔の方へグッと引き寄せるから、僕のモノはそのまま文也の口腔内の奥へと飲み込まれていく。  「ンンッ……、んグゥ~~……ッ!」  ギュウゥと先端が喉の奥で締められ、ブルブルと太腿の内側が痙攣し始める。  アッ……、駄目だ……そんな、したら……ッ!  他人の熱で久し振りに興奮していた僕は、呆気ない程簡単に喉奥での刺激で達してしまう。  ビュルルルル~~……。と尿道を通って射精する気持ち良さに、何度か腰を振ってしまうが、文也はグッと臀部に押し当てていた手に力を込めて、耐えてくれてそのまま白濁をコクコクと飲み込んでくれている。  僕がイッている事で文也も興奮しているのか、グァッと口腔内で膨らんだモノを追い上げるように顔を上下に振ると、文也もまた僕の口の中で射精した。

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