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第19話
「で?恋人紹介してくんねーの?」
肉を頬張っている俺に向かって、兄貴が一言言ってくる。
あの後ヒトミをゲームでコテンパンにしていると、長女のシズクが旦那を引き連れて帰って来た。
ゲームをしながらシズクと旦那と会話していたが、指も動かしていたのでヒトミには勝ち続けていた。
そうこうしていると、父と兄が少しの時間差で帰宅。
皆ですき焼きの鍋を囲んでの夕飯が始まった。
父と兄と俺が晩酌しながら食べていると、兄から先程の台詞を言われたってワケ。
「お前それ、恋人ができたって事だろ?アクセ付けるの嫌いなお前が付けてんだ、そう言う意味だろ?」
「私も気になってた。文恋人出来たんだって?」
すかさず姉のシズクが畳み掛ける。
皆の視線が俺に向けられ、美味しいと感じていた肉が味をなさなくなる。
「パートナーはできたけど、まだ紹介はしたくね~」
「は?なんだよ真剣じゃ無いのか?」
「真剣だよ」
「なら、連れて来いよ」
ニヤニヤと兄貴が俺とそっくりな悪い顔で言う。
「年上?年下?」
シズクもすかさず質問を俺に投げかける。
「………、一個上」
「ハハハッ、ヤッパお前年上好きだな」
「………ッセ」
兄貴に言われ、そうだなと。食べながら思う。
いつも好きになる奴や、付き合う奴は年上だ。
反対にセフレは同い年か年下。
意識した事は無いが………。
と、ふと兄貴を見てしまう。
………………。イヤイヤ、そこまでブラコンじゃねーし。
と否定するが、心の何処かで否定出来ない自分もいるのは確かだ。
こんな風に自分の性癖を認識してしまうのも如何なものかと思うが、何だか照れ臭くなる自分がいて首を左右に振る。
「文兄ちゃんが壊れた……」
突然首を振り出した俺が怖かったのか、マサヤが少し引き気味に呟いた瞬間、食卓の誰もが爆笑する。
「笑ってんなよッ」
顔が自分でも赤くなっている事を意識しながら怒鳴ると
「急にすんな、マサヤが引いてるだろ」
肩を揺らせながら兄貴が楽しそうに笑うので、俺は唇を尖らせて鍋の中の肉をごっそり取ってやった。
「けど、いつかは連れて来て紹介してくれんだろ?」
「まぁ………」
途端に、笑っているが目が笑わない言い方になり俺に圧をかけてくる兄貴に、俺はボソリと呟く。
紹介は、したいと思っている。
多分晴人や茉優のとこよりは、受け入れてくれる雰囲気はあると思うから。
けれど、家族にどうやって説明すればいいのか、それを前から考えてはいる。
そのまま言えば良いんだろうが、三人での関係に賛成してくれるのだろうかと不安は残る。
マイノリティーな関係だと思うから、受け入れてくれるか………。
なんだかんだと、常識の枠にいるからなぁ。偏見は無いにしろ、関係性に同意してくれるか……。
「何?そんなにヤバい奴なの相手?」
俺の濁した返事に納得がいかないのか、兄貴がしつこく聞いてくる。
「イヤ……、メチャいい奴」
「そうか、楽しみにしてる」
ニコリと俺に笑いかける兄貴に、コイツも結構なブラコンなんだなと感じる。
まぁ、そんなに気にしてくれるのは嬉しい事だけどさ、もうちょっと待ってて欲しいな。
心配してくれる家族の温かさに、俺は終始笑顔で実家を満喫する。
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