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第20話 R18
晴人と茉優が仕事に行っている間に家に戻って来た。
戻って直ぐに自分の部屋に入って、来週のイベントに向けて曲を選別していく。
今回は全部レコードで曲を流していくので、リズムの速さが大体同じの曲とミックスしやすいように曲の尻と頭が似たようなものを選んでいく。
三日間のうち自分が割り振られている時間は一回二時間。
二時間分の曲プラス場の雰囲気や、客の反応に合わせて持っていったレコードとは違うもの回さなければならないかもしれない。
だから予備で大量のレコードが必要だ。
どの曲が盛り上がるのかは、当日の客層とかで違ってきてしまう。
こちらが完璧に盛り上がりそうなレコードで曲順を決めて行っとしても、全く通用しない時もある。
だから俺は車にレコードバッグをこれでもかと詰めて行く。
金が発生する仕事だ。遊びじゃない。
客を飽きさせないようにしなければならないのだ。
そして今回は自分が作った曲は持って行けない。
俺が作った曲はCDになってしまうし、会場ではCDJの機材が今回は無いらしく、全DJ達はレコードでプレイする。
あらかた当日かける曲順は決まっていて、曲と曲の継ぎ目がスムーズになるか一通り曲をかけて調節していき、曲の間でもエフェクトをかけてみたりと遊んでみる。
「こんなもんか……」
決まったレコードを回す順番にレコードバッグにしまっていき、今度は予備の曲を選んでいく。
だが、今日一日ではまとまらない。
何時間もそうしていて、フイに時計を見るとそろそろ茉優が仕事から帰って来る時間だ。
「夕飯作んねーと」
俺はボソリと呟いて、機材の電源を切るとダイニングへと移動する。
こっちに帰ってくる前に近所のスーパーに寄って、今日の晩飯用に食材は買ってきている。
冷蔵庫から食材を取り出し、手を洗って調理を始める。
早々に味噌汁とサラダを作り終わり、メインを作っている途中で、茉優が帰って来た。
「おかえり」
「ただいま~、良かった帰って来てる」
「何だよそれ、昨日帰るって言っただろ?」
「そうだけど不安で!着替えて手伝うね」
俺の顔を見て、安心したように茉優はそう言うとパタパタと自分の部屋へ入って行く。
茉優との関係は順調だ。前よりも距離がグッと近くなったように感じる。
俺が何週間か一緒に暮らし始めた頃に比べれば、お互いに言いたいことは言うようになった。
それまでは晴人を中心に、お互いの事を意識はしていたが、遠慮していて距離があったし俺は茉優から嫌われていると思っていたから。
一度晴人と終わった時に、再度晴人と関係を繋ぎ直してくれたのが茉優だったが、俺と晴人に関して何も口を出さない茉優に見下されていると当初思っていた。
晴人も俺に対して事ある毎に茉優の話ばかりするので、それが嫌で何回か茉優の事で晴人と喧嘩した事もある位だ。
晴人に愛されているのも茉優。
優しくされるのも、優先されるのも。
全てが茉優から始まる事に、毎日イライラしていてそれに勝手に俺が見下されてるから彼女は何も言わない。言わなくてもそのうち勝手に俺が自滅すると思ってるなんて考えていたから笑える。
俺を引き留めたのは茉優なのにな。
晴人を巡って、俺が勝手に茉優をライバル視していただけ。
引っ越して彼女がそう思って無い事に薄々気付きだしたり、晴人も俺の事を優先する時もあるんだと解ってくると、彼女に対して友達のような、妹のような感情が芽生えてきた。
晴人に関しても、同性に恋愛感情が生まれないのを理解してしまえば、体は俺のものにできるワケで………。
だから、体だけでも俺から離れられないようにした。
最初から俺と晴人の相性は良かった。こんなにしっくりくる相手も珍しいと思うほどに。そして、俺の形になるようにしたのだ。
未だに恋愛感情は俺には芽生えないらしいが……。
恋愛したり、付き合うのであればやはり異性が良いと言ってる。
だが、少しづつでも俺に執着を見せるようになった。
一緒にクラブに遊びに行っても、俺が誰かに声をかけられ話をしていると誰なのかと聞かれるようになったし、まぁ、今回の件みたいに何日も家を空けるなって言われてみたり?
少しづつだが、晴人の中での俺の位置が変わってきている事に嬉しさを感じる。
「お待たせ、さて私は何をしたらいい?」
「んじゃこれ焼いてくれ」
サーモンに塩胡椒と小麦粉をまぶしたやつを茉優に渡す。
フライパンの中にバターはすでに入れているので、後は焼くだけだ。
「了解」
隣で茉優がサーモンを焼き始めると、俺はほうれん草のソテーを作ろうと、茉優の横に立ちフライパンに火を点ける。
「本当、文君て料理上手だよね」
「慣れてるからな」
あれだけの大家族だ。
マチコが下の弟に手を焼いてた時なんかは俺が家族の夕飯とか作ってたし、よく兄弟に何か作れとせがまれて作っていた。
兄貴は全然料理が出来ないので、よく昼飯とか俺が作って一緒に食べてたっけ。
「へー、一人暮らし始めてから料理しだしたの?」
「イヤ、実家いる時からかな?」
「え?そうなんだ、良い子だね」
「………、そうでも無いだろ」
「私も晴君も多分一人で暮らし始めてから料理するようになったと思うけど……」
「ま、人それぞれじゃね?」
そんな話を茉優としながら夕飯を作っている。
引っ越してから一年が経ったときに、茉優の過去を聞いた。
多分晴人は知らない彼女の過去。
それは、予想してないアクシデントで見てしまった彼女の体に付けられた傷で判明したけど、その事でより深く彼女の事が知れたと思う。
彼女の置かれた環境や、それによって彼女の考え方がどうやって作られたのか。
周りの人から理解されない環境に置かれてありのままの自分を殺して生活してきた彼女が、人を信じられなくなってもおかしく無いのにそれでも人を信じようとする強さに、素直に凄いと感じる。
俺にも多少なりとも、そんな経験はある。
茉優とか晴人に比べたらきっと笑えるような出来事だが。
俺は中学の時からゲイを公言していたわけだが、それでも女の人からは度々アプローチされていた。
俺が丁重に断ると、割と多く聞かれた質問がある。
『どうして、男の人が良いんですか?』
……………………。は?
理解に苦しむ、こんな質問。
なので、俺もいつも質問返ししていた。
『あなたは何で、男の人が好きなの?』 と。
質問してくる人は、異性愛者。
異性を好きになって当たり前と思って、俺にその質問をしてくる。
だが俺も、その人達と何ら変わりない。
ただ、惹かれる相手が異性か同性かの違いだけ。
だけどそれが解らないのだ。
好きになる人=異性という枠の中に根強くはまって生活している人が多すぎる。
それが当たり前の事だと。
その当たり前の中に、どうして俺達みたいなセクシャルマイノリティーを入れてくれないのか?
クラブに遊びに行っても冗談半分で『そっちの人?』とか、『自分の近くに同性愛者がいたら、距離取るな』とか………。
平気でそんな事を言っる奴等もいる。
日々普通に生活している中で、俺達みたいな人を知らずに差別や偏見の言い方で傷付けている。
けど、しょうが無いと言えば、しょうが無い。
だって、学校生活の授業でそんな事あまり習わないだろ?
道徳の授業があっても、俺の通っていた学校ではセクシャルマイノリティーについての授業は無かった。
だから皆知らないし、理解出来ない。無知のままで普通に人を傷付ける発言になってしまうのだ。
男女が惹かれ合い、結婚して子供をもうける。
それが全て。そういう風に教育されて、それから外れたら差別される。
まだ俺みたいなゲイは、昔に比べたら認知される事が多くなって寛容になってくれる人が多くいるようになった。
けど、晴人や茉優みたいなセクシャリティだと知らない人が多いから、住みにくいと思う。
今回の引っ越しだって俺と晴人だけなら、借りれたかどうか疑問だ。
茉優がいて、三人でルームシェアをするという形にしたから、借りれたというのは大きいと思う。
社会的に認知されて無いから、制限が多い事も沢山ある。
ただ、好きな人と一緒にいたい。って皆と変わらない理由なんだけどな。
「ただいま~」
玄関から晴人の声が聞こえてくる。
「おかえり、早かったね~」
俺の隣で茉優が晴人に声をかけて、俺の顔を見る。
………、解ってるよ。喧嘩しねーから。
「ん~、今日はちょっと暇でさ早目に上がらせてもらった」
言いながら自分の部屋に入って行く晴人を、目で追うが言葉はかけれなかった。
「晴君も昨日元気無かったよ、反省してるっぽいからさ?」
「ゴメンな茉優」
「それ、お互いに言いなよ。さ、食べる準備しよ」
茉優は言いながら食器を出して、おかずを皿に盛り付ける。
冷蔵庫からサラダを出して、味噌汁を椀に注いで、茉優と用意すれば晴人が部屋から出てくる頃には直ぐに食べれる準備ができた。
「あ~~~、腹減った~」
「食べよ~」
それぞれの定位置に落ち着き、手を合わせて夕飯を食べ始める。
お茶の変わりに、チューハイを皆で飲みながら。
正面に晴人が座っているが、俺は気にせず茉優と話ながら食事をする。時折チラチラと晴人から視線を感じるが、気付いていない体で。
優しい茉優は晴人にも話を振っている。その度に気不味そうに晴人は会話をしている。
そんな晴人を見れば、茉優が言ったように反省はしてるっぽい感じだが、今回は俺から折れるつもりは無い。
折れてしまえば、今までの生活に逆戻りしてしまうからだ。それが嫌で頑張ってきたのに………。
いつもより早目に夕飯を食べ終わると
「先に風呂いくわ、おやすみ」
食べ終わった食器を重ねて立ち上がり、二人にそう言って流しに食器を置き、風呂場へと行く。
一瞬晴人が何か言いたげだったが、俺は見てないフリでダイニングを離れた。
洗面所で歯を磨いて、シャワーを浴びると風呂から出る。
寝間着に着替えて、ダイニングにいる二人にもう一度挨拶をして自分の部屋へ入って行く。
部屋へ入ると、再びイベントの準備だ。
今度は音を出さないよう、ヘッドフォンを繋いで音の世界へと入って行く。
どの位集中してプレイしていたのか、喉が乾いたなと感じて曲を止め、ヘッドフォンを耳から外すと俺のベッドで晴人が寝ている。
………、いつ入って来た?
俺の部屋は音漏れを気にして消音材を部屋中に貼っている。なので基本部屋の中は暗い。だから基本的には部屋の電気を点けるのだが、夜にはDJブースのところに設置してあるライトと部屋にある間接照明だけ点けている。
ヘッドフォンを付けて、集中していると呼ばれた事も気付かないのでよく茉優に叱られるが、大抵は部屋に誰かが入ってくれば気付くはずなのに
「いつからいたんだ……」
上から覗き込むように晴人の寝顔を見て、一度部屋を出る。
ダイニングの冷蔵庫からお茶をグラスに注ぎ再び部屋に戻ると、ベッドのチェストにグラスを置いてブースへと移動する。
もう、今日は止めるか。
小さく溜め息を吐いてブースの電源を切ると、ベッドの片側が俺用のスペースで空けられているのでそこに潜り込む。
潜り込んでからお茶を一気に飲み干し、何時だろうとベッドに放っているスマホを取って時間を確かめると、午前二時三十分前。
………、結構してたな。
そのまま体を全部ベッドに沈めると、フゥ~。と息を吐き出す。
隣に俺が入って、ベッドが動いた為か晴人がゴソゴソと寝返りをうつと俺の体に腕を回す。
「………、悪い起こしたか?」
回された腕は、少し緊張していて変な力が入っていた為、起こしてしまったかと俺は呟く。
まさかバレるなんて思ってなかったのか、晴人は俺の呟きにヒクリと体を震わせ
「………、大丈夫」
布団で顔が見えず、くぐもった声だけが聞こえる。
俺はそうか。と答えて、寝返りを打って晴人から背中を向ける形で寝る態勢をとるとそのまま俺の背中に晴人の鼻先がくっつき、先程よりも密着した態勢になる。
「晴人、寝にくい」
「…………」
俺が呟いても晴人は無言のままだ。
非常に解りにくいが、晴人にとってこれが精一杯悪いと思っている意思表示。
基本的には俺から折れる。
惚れた弱みじゃ無いが、喧嘩をする事も体力、気力共に疲れる事を実家で嫌と言う程経験している俺は基本直ぐに謝ってしまう。
それでお互いが気持ち良く、楽しく過ごせるならそれで良いと思ってるからだ。
ただ、前に茉優から
『文君ばかりが先に折れるのも、晴君にとっては良い事じゃ無い』
的な事を言われた。
茉優の言いたい事も理解出来る。
学生時代までは、まだ付き合ってた奴には正面から喧嘩が出来ていた。兄弟達とは違う甘えで相手に理解して欲しい欲求も強かったから。だが、それが原因で別れる事も多く、それならば家族同様に先に謝ってしまう方が楽だと気付いた。
それから喧嘩は減った。当たり前だけど。けれど、それでも付き合う人とは長く続かなかった。相手からは『文也は、俺の事好きじゃ無いよね?』と言われる事が多くなった。
好きじゃ無きゃ付き合わない。けれど喧嘩もまともに出来ない奴が、自分の事を好きだとも思えない。と言われてしまえば、俺になす術は無い。
恋愛は難しい。
バー勤務の時は、それこそ恋愛するのが億劫で付き合う事を諦めていたから、セフレだけ作って遊んでいた。
自分にはこれが一番合ってんのかも。と、その時は、思っていたのに………。
自分の都合だけで相手を呼び出して、欲求を発散させてしまえば楽だったから。
けれど、晴人に出会ってしまった。
当初、俺の中で晴人もセフレの一人って感じだったんだが………。
体から始まった関係だけど、晴人の人となりを知ってまえば素朴で、素直で、恋愛に対して慣れてないところとか好感が持てて、ハマってしまった。
まぁ、茉優の事を知った時は、腹わたが煮えくり返るほどムカついたが、それでも好きだという感情が勝ってしまったのだ。
俺からひっついて離れようとしない晴人に、俺は深い溜め息を漏らし好きにさせている。
寝てしまえば気にならない。早く寝てしまおう。
そのまま晴人を無視して、規則正しく息をしていると
「……………ゴメン」
本当に聞き取れるか、聞き取れないかの掠れた呟きが聞こえる。
俺は瞑っていた目を開いて、もう一度深く溜め息を吐き出すとゆっくりと晴人の方に体を向ける。
「本気で言ってる?」
「当たり前だろ」
向き合った晴人の顔は、叱られている子供の顔だ。
「仕事だって言っただろ?」
「聞いた………」
「じゃぁ、何が気に入らない?」
呟く俺に、晴人は視線を上げ
「お前さ……連絡取れなくなるだろ?」
「………、は?」
俺が想像していた言葉じゃない台詞が、晴人から出る。
「どういう意味?」
「イベント行ったら、僕のライン無視すんじゃん」
「イヤ……、あれはプレイ中だから終わったら、するじゃん?」
「プレイ中とか知らねーし」
………、イヤイヤイヤ勘弁してくれ。
可愛過ぎか………ッ!?
「それでむくれて、イベント行くなって言ってんの?」
「グッ………、大人気ねぇとは……思ってるよ」
俺は額に手をあて、呆れたように深く溜め息を漏らす。
晴人はそんな俺を見て、俺が怒っていると勘違いして
「そりゃぁ、何度もラインして悪いと思ってるけど……、お前もプレイする前に連絡するとかさぁ………!」
「………、マジ無理」
俺が呟いた一言に晴人は、ヒュッ。と息を呑む。
「あ~~~ッ、無理!何お前可愛過ぎるんだけど」
「は?………はぁッ!?」
俺は両手を晴人の体に巻くと、そのまま腕に力を込めてそう呟く。晴人はそんな俺の言動に突拍子もない声を出す。
「か、かわ……ッ、可愛いってなんだよッ!」
男の自分に可愛いは無いだろうと、照れながら晴人はコソコソと叫ぶ。
「悪い、それ茉優だけにしてんのかと思ってたから、まさか俺にもしてるとは意識して無くてさ」
茉優からは聞いていた。
晴人は独占欲が強いと。
好きという気持ちが強過ぎて、茉優に執着している晴人は頻繁にラインを送ってきてくれると。
茉優的にはそれが晴人から愛されているサインになるので嬉しいらしく、そうじゃ無いと駄目みたいだった。
昔の方がもっと独占欲は強かったらしく、最近はまだ穏やかになった方だと聞いていた。
だから晴人のそれは、恋愛感情と結びついているから、俺に向けられる事は無いと思っていのだ。
まぁ、他府県に泊まりで家を空けるときは、いつもよりラインの回数が多いなとは思っていたが、そんな事を晴人が思って送っているのだとは考えもつかなかったから、いつも通りの返信だったし元々俺はラインするよりも電話したい派だ。
だから、結構俺的には晴人が起きてる時間帯で、できそうな状況ならプレイ後に電話をしていた。
「は?どういう事だよ?」
俺の台詞に晴人は、何でそこで茉優ちゃんが出てくるんだとブツブツ言っている。
は?コイツ………、無意識かよ。
タチ悪ぃ~~………。
………。俺にも執着してくれてんだ。
男に恋愛感情がわかない晴人が、俺に執着。
「…………、勃った」
「はぁ?お、お前どういう思考回路してんだよッ!」
「イヤ、晴人君が悪いと思いま~す」
「ぼ、僕が悪い!?意味解んねーんだけど」
ブツブツと怒鳴る晴人の唇に、チュッと音を立ててキスをして、そのまま晴人の首筋に顔を埋める。
「俺も悪かったよ。それで晴人が怒ってるとか思ってなかった」
「解かれば良いんだよ!」
「はぁ~……、まぁこれからは、頻繁にラインするわ。俺的には電話でも良いけど」
「電話はいいや……。後ろの声とか雑音に苛つきそうだから」
ハァーーーッ!?堪んないんだけど。
よし、抱こう。
抱き締めるために晴人の体の下になっている腕を引き抜き、晴人の着ているスウェットを弄り始めると
「チョッ、文也お前ッ何してんだよ!」
と、すかさず晴人の手が阻止する為に伸びてくる。
「イヤ、勃ったって言ったじゃん?」
「じゃん?じゃねーよ!何時だと思ってんだよ」
「あぁ?…………三時前だけど?」
ご丁寧にスマホで時間を確認して、晴人に伝えてやると
「寝るに決まってんだろ!」
「無理。オ前明日、明後日休ミ、知ッテル」
晴人のシフトは確認して頭に入っている。
「カタコトで喋んな!」
クスクスと俺に笑いながら突っ込みを入れる晴人に、もう一度首を上げてキスをする。
キスをすると一度黙った晴人だが
「お前が早く俺に気づいたら良かったんだろ!」
と、口を尖らせて文句を言ってくる。
う~~ん、駄目だな。逃してやれない。
ガバリと俺は起き上がり、腕の間に晴人を収める。
「ゴメンけど無理。それに、準備してんだろ?」
ユックリと晴人の顔に自分の顔を近付けると、図星なのか受け入れてくれる晴人も目を閉じる。
早々にお互い着ているスウェットを無造作に脱ぎ散らかして、肌が密着するように抱きしめ合いキスを交わす。
晴人が弱い上顎を執拗に舌先で愛撫して、気持ち良さに立ち上がった乳首を摘むと、フルッと震えながらも鼻から抜ける吐息は甘い。
徐々に勃ち上がる晴人のモノが俺の腹をくすぐるから、乳首から片方手を退けて下へと移動させピクピクと跳ねているモノを握り込む。
「アッ……」
俺が晴人のモノを掴むと、小さく悲鳴に似た喘ぎが漏れてその声に俺は煽られる。
乳首を指先でピンピンと弾きながら、弱い亀頭を重点的に手の平で包み込むようにヨシヨシしてやると、無意識に腰が浮き上がり上下にカクカクと動き出す。その動作がエロくて好きだ。
「なんだよ晴人、気持ち良くて自分から擦り付けてんのか?」
それなのに俺がこういう意地悪い事を言うと、途端にハッとして顔を赤らめ動かしていた腰を止めるのだが、本当はもっとキツく扱かれたいって思ってる事や、腰を動かしたいって思ってる事は手に取るように解る。
「あッ……、~~~~~ッ……」
暫くすると伏せていた視線を俺に向けるが、その顔がトロンと蕩けてそう言っているからだ。
「どした?」
俺は晴人に言わせたくて、再び意地の悪い聞き方をする。晴人は一度唇を噛んで言葉を飲み込むが、快感に点いた火はジワジワと晴人を蝕み最終的には
「触れ……ょ…ッ」
語尾が掠れる小さな声音で俺にそう言う。
言わせる度に俺もゾワッとした感覚が腰から背中にかけて這い、その台詞を聞いてから一度チュッとキスを落としてベッド横のチェストからジェルとゴムを取り出す。
無言でジェルを自分の手に落として、グチュグチュと手の平で温まるまで待ってから双丘の奥にある孔へと手を伸ばし、とりあえずは確認するように一本指を挿入させる。
「クゥ……ンッ」
子犬が甘えて啼くような声を晴人が出すから、その可愛さに再びキスをし内壁を解すように指を動かす。
既に準備の段階であら方自分で解していたのか、壁は俺の指をチュウゥと吸って更に奥へと誘い込むように蠢いている。
あ~~……早くこの柔らかくて温かいトコに俺のちんぽ捩じ込んで……、滅茶苦茶に腰を振りたい……。
凶暴な欲が自分の内側から沸き上がり、入れていた指に沿わせて性急に二本増やす。
「ハァ゛ッ……、ア゛、グゥ…ッ」
いきなり二本も入れられると思っていなかったのか、晴人は苦しそうにくぐもった息を吐き出すが、内壁は直ぐにキュンキュンと俺の指を締め付ける。
「晴人……」
俺は耳元で小さく囁やけば、それだけで指を入れている入り口が締り、そうする事で中に入れていた指を自分の弱いか所へと導いてしまうのか、ビクビクと体が跳ねる。
俺は堪らなくなってそのままグニィッと前立腺を押し上げるように指を上へと反らせば、晴人は顎と喉を仰け反らせ細く長い喘ぎを唇から漏らす。
家にいる時晴人は余り声を出さない。それは茉優がいるからだ。
茉優と俺の部屋の間に晴人の部屋があるし、俺の部屋には吸音材が張り巡らされているが、晴人にとっては無理なんだろう。
だからと言ってことさら優しく抱こうとも俺は思ってないし、手加減なんて出来るはずも無く……。
グチュッ、チュブッと厭らしい音が部屋に響く中、俺は指を引き抜くと手早く自分のモノにゴムを着けジェルまみれになってる手で上下に扱き上げる。
フト視線を感じて目線を上げてみれば、少しだけ顔を持ち上げ俺のモノを物欲しげに凝視している晴人の顔があり
「見過ぎだから」
と、微かに笑いながら指摘すれば
「なッ、……ち、違ッ」
なんて、何が違うのか慌てながら視線をフイと逸らす晴人の太腿をグイッと片手で押し上げ、俺はモノをヒタリと孔に押し付ける。
「ッ……」
期待しているのか晴人の入り口の襞があてがった先端を吸うようにチュッチュッと収縮するので、俺は希望通りそのまま腰を進め怒張を内壁へと挿入させる。
「~~~~~~ッ!!」
挿入と同時に声にならない叫びを口を開け、体を震わせながら零す晴人は、衝撃に上手く息が吸えないのか暫く体を硬直させる。
「オイ、息吸え」
伸ばした手を頬にあてスリリと撫でると、ようやくヒュッと息を吸う音と同時に胸が大きく膨らむ。
「ンァ゛ッ……、ハア、ぁ゛……」
大きく息を吐き出して、そこからは浅い息を繰り返している。その度に呼吸に合わせて内壁が収縮し、俺のモノに絡み付く。
「あ~……ヤベェ…ッ、気持ち良い……」
馴染むまで腰を動かさないように我慢しているが、誘うように動く晴人の中はダイレクトに腰にクる。我慢出来ずにトンッと緩く腰が動くと
「ン、ウゥ…ッ、文、也……も、動け……よぉ……ッ」
堪らずと言った感じで下から晴人におねだりされ、理性の糸が焼き切れる。
俺は晴人の好きな前立腺にカリが引っ掛かるように、押し上げていた太腿から足首に手を移動させるとその脚を肩に担いで晴人の腰を横向きにさせる。そうして浅いか所を執拗に虐め始めた。
「ア゛ぅッ、……ソコッ……、ソコ、だ、め゛……ッ」
「ソコって、どこだよ?」
「ぜ、……立腺ッ、~~~ッ……ぜンッ、ンン゛~~ッ」
「ハハッ、好きなトコだろ?」
俺の下で悶える晴人が可愛くて、無意識に笑ってしまった。もっと乱れて欲しくて空いている片手を乳首へと伸ばして、ピンッと立ったそれを親指と人差し指で摘んで引っ張り上げる。
「ヤァッ!ア゛ッ、……一緒、……駄、目ッ」
「嫌じゃねぇって言ってんじゃん?気持ち良いって言えよ、ン?」
引っ張った乳首を指先でコリコリと揉んで敏感にし、離してから爪先でカリカリと掻くと堪らないのか内壁がギュウゥッと俺のモノを絞ってくる。
そのせいでプクリとなっている前立腺が、カリ部分で押し潰される形になり、ガクガクと担いでいる脚が痙攣している。
「ぎ持ち、良ぃ……ッふみ……き、もぢぃ……ッ」
「ッ……、ハッ、俺も………ッ」
素直に俺に言われたように喘ぐ晴人に煽られ、俺は我慢出来ずに奥まで自分のモノを押し入れる。
「…ッぁ゛~~~~ッッ!」
奥まで挿入した途端にうねるように中が動き、次いではギュウゥとモノをしゃぶったと思うとビクビクと痙攣している。
「…………ッ、イッた?」
「ゥ゛ッ……ふぅ…ッぁ、イッ……た、から……待っ、て…ッ」
「無理だろ?」
射精を伴わない中イキ。待ってと喘ぐ顔はトロンと惚けて、俺は無理だと言いながら担いでいた脚を肩から外し、晴人の両手首を掴むとズパンッと腰を振り始めた。
「ンイ゛ッ!!ア゛ッ、ア゛、……ま゛っで…ッ、ふみ゛ッ」
晴人は俺に手首を掴まれ俺の方に重心が掛かるようになる。俺は晴人に押し付ける形で腰を振っているから、逃げ場が無くずり上がれ無い。
ギリギリまで引き抜き勢い良く差し込むと、差し込む度にピュクッ、ピュクッと晴人のモノから射精のように先走りが溢れ出ていて……。
こんなクッソエロいモン見せられて、待ってられるかよッ。
バツンッ、バツンッとお互いの内腿が打つかる音が早くなるに連れ、俺の限界も近付く。
「あ゛~~、無理ッ……イキそッ……」
追い上げるように強目に腰を振ると、晴人の腹もビクビクと痙攣し始め
「ンぅ゛……ッ、イ゛ッて……?僕、の…ッ中で、ぇ゛…ッ」
「ハッ……クソ、何だよ……ソレッ……、ッあ゛~~~、イクッ、イク、イク、イクッ!」
「ア゛ッ、ふみッ……ふみ゛…ッ!!」
出る直前に一度大きく腰をグラインドさせ奥に叩き付けるように押し付けた瞬間、動作を止めて晴人の中で射精する。晴人も俺と同時に自分の腹の上に白濁の液を飛ばしていて……、俺はその光景を見ながら出し切るようにユルユルと腰を動かした。
「……………ッ、晴人……まだ……」
奥底に燻っている熱がまだ消えない俺は、呟きながら晴人にキスを落とす。
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