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第16話

 黒木はバスルームの前で足をとめた。 「シャワー浴びるよな?」 「んぇっ? あ、う、うん」  やばいやばい俺、挙動不審すぎるっ。  テンパってよくわかんないまま順番にシャワーを浴びて、もう脳内がパンクしてる状態で、気づけばベッドに押し倒されていた。  えっと……なんでこんなことになってんだっけ。落ち着け俺っ!  黒木の部屋で、黒木のベッドに、黒木に組み敷かれて脳内がぐるぐるした。 「どうした急に。ずいぶん脳内テンパってるな?」 「だっ! だだだってっっ! なんか気づいたらもうベッドでっっ!」 「野間、頭パンクしてたからな」  黒木がクッと笑った。 「誘ったのは野間なのにな?」 「そっ?! そそうだけどっ! でも違うだろ?! 想像したのはお互いにだろ! 俺だけじゃねぇだろっ?!」 「ああ、そうだな。ちょっと野間、いったん口閉じようか」  そう言って、黒木が俺の口を唇でふさいだ。 「んぅっ?!」  びっくりしすぎて一瞬固まって、我に返って黒木の胸をグッと押したがビクともしない。 『ま、まままて黒木ーーっ!』  『口ふさいでも心がうるさいな?』 「んんっ、ふ……、ぁ……っ」   黒木まってほんと……っ! 『まてって黒木! ほ、本当にキ、キスもすんの?!』 「……んっ、……ぁ……」 『本当にってなんだ』 『だ、だってっ! キス……だぞっ?!』 『したかったんだろ?』 『しっ……はぁ?! そんなこと俺言ってねぇ!!』 『俺とのキス想像してただろ?』 『は……っっ! う、うあーー! そうだったーーっっ! 見られてたんじゃーーんっっ! 俺バカーーー!』  ぶはっと黒木がキスをしながら吹き出した。 「キ、キスしながら吹くなっ!」 「お前、あんまり笑わすな。ちょっと落ち着け」 「……んっ、……ぁ……」  黒木が優しく唇にキスしたあと、チュッチュッと顔中にキスが降ってきた。 「……ん………」    あ……これ……さっき黒木が想像してたやつ……。  なにこれ……気持ちい……。 「俺は、野間が嫌ならやめるし、お前を絶対に傷つけない。信じられないか?」 「……し……信じてる……。黒木のことは……いつも信じてるよ……」 「やっと落ち着いたな」  優しく俺を見下ろす黒木に、せっかく落ち着いたのにまた心臓がうるさく鳴りだした。   「なぁ……黒木……」 「なんだ?」 「ほんとに……後悔しねぇの? ……男となんか」 「野間は? 後悔しないか?」 「……しない」 「俺も、しない。これが……最後の確認でいいか?」 「……うん」  黒木の顔がまたゆっくり近づいて、唇が重なった。  ……キス……しちゃった。黒木と……本当にキスしちゃった。ドキドキがやばい。ぶわっとなにかわからない感情があふれてくる。   「野間、ちょっと口開けろ」 「……んぇ?……」 「いいから。あーん」 「あー……ン、……ふぁ、……ぁ……」  黒木の舌が入り込んできて、優しく口内を愛撫された。  やばい……なにこれ、すげぇ気持ちいい……。  あ……ダメだ……。思考が働くうちにちゃんと言っとかなきゃ……。 『黒木、お、俺、ただ興味があるだけだからな……? す、すす好きとかそんなんじゃねーから……引くなよな……』 『……わかってる。……俺も同じだ』 『そ、そそそっか……』  『……野間はこんなときでも、口も心も騒がしいな』 『う、うっさいっ!』  だってちゃんと言っとかなきゃ……。  黒木に嫌われたくねぇもん……。   「……ぁ、……んっ、ンッ……くろ……き……」 『野間……俺はお前を嫌わない。絶対に。安心しろ』  黒木の言葉が嬉しくて無性に泣きたくなった。    黒木のキスが唇から少しづつ耳に移動していく。だんだんゾワゾワが強くなって、耳にキスをされた瞬間に身体がはねた。 「はぁン……ッ!」  全身ビリビリして驚いて、思わず黒木にしがみついた。 「すごいな。反応よすぎじゃないか?」 「あぁっ、ンンッ、み……耳元でしゃべ……だめっ、はぁぁッ!」  耳を舐めながら反対の耳もさわさわと撫でられて、もう全身ビクビクがとまらない。 「ンン……ッ、はぁっ、ま……て、ど……しよ……、あっ」 「どうした?」 「……おれ…………も……勃っちゃった……」  どう考えても早くね……?    

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