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第32話 ※

「あ……っ、ンッ、んっ、あぁ……きもち……っ、きもち……ぃ、はぁっ」  黒木の優しい動き方に胸がジンとする。また涙がにじむ。  黒木……優しい……嬉しい……幸せ……。 「……野間……。これやばい」 「……ん? あ……っ、ンッ、なに……?」 「お前と繋がってるとこ……丸見え。視覚でやられる……ぅ……」 「ふはっ、おれ見えねぇもん。ん……っ」  黒木がそんなことでやられるんだと思ったら、可愛くてなんか愛しくなった。  するとすぐにパッと心の映像で、俺らの繋がってるところを見せられた。   「バ……ッ! み、見せんなよ……っ! アッ、あぁ……っ、やめっ、も……っ、見せんなぁ……っ」 「……な? 視覚でやられるだろ?」 「わか……、わかった……からぁ……っ! ひやぁっ、アッ、くろ……あっ、くろき……ぃっ、んん……っ」  やばい、ほんとに視覚でやられる。  これをいま黒木が見てるのかと思うと、恥ずすぎて顔から火が出そう。   『い、いじめっ子っっ!!』 『……野間、可愛い……ほんと可愛い……』 「んん……っ」  黒木の『可愛い』が聞こえるだけで身体中がとろける。まるで魔法の言葉みたいだ。 『顔が見たいな。キスがしたい……野間……』  心臓がドクンと高鳴った。  嬉しい嬉しいやばいっ。俺もキスしたいっ。  後ろを振り返ろうとしたら、お腹に手を添えられて腰を下ろされた。  黒木がふわっと俺を包むように背中に覆いかぶさる。  またゆっくりと腰を動かした黒木が、うなじにジュッと吸い付いた。 「はぁぁっっ、ん……っ、アッ、くろ……ンッ」 「野間……」  黒木の手が俺のあごをそっと持ち上げた。俺が後ろを振り返ると、息もできないくらいのキスをされた。 「んぅっ、ん……っ、ふ……っ、ぁ……」  こんなに激しく求められるようなキス、初めてだ。 「野間……野間……」  唇が離れて、黒木が耳元で俺の名を呼びながら腰を振る。その声がどこか切なげで、なにかわからない感情が俺の中にぶわっとあふれた。  耳元に黒木の熱い吐息をあびてゾクゾクする。  黒木がまた俺のあごを持ち上げて、荒々しいキスをした。 「んんっっ、ぁっ、んっ、くろ……き、ンッ」  なんだろう、喉の奥が熱い。胸が痛い。また涙出てきた。  なんかわかんないけど……なんか……すげぇ幸せ……。  黒木が必死にむさぼるように俺にキスをする。もっと……もっとしてほしい。  後ろから入れられた時点で、もう顔も見ないまま終わると思ってた。  どうしよ……すげぇ嬉しい。 「野間……っ、ぅ……ぁっ」 「あぁっ、くろきぃ……っ、ンッ、あっ、くろ……きぃっ、も……だめ……っ」 「俺も……イク……っ」  「くろき……一緒に……っ」 「ああ、一緒に」  一瞬だけ舌を絡めるキスをして、黒木が最奥に腰を打ちつけた。 「ンゔゔーーーッッ!」 「く……ッッ! ……ぁ……」   二人で果てて、黒木がぎゅっと俺を包むように抱きしめて余韻にひたる。 「くろき……」 「……ん?」 「くろ……き……」 「どうした?」  胸が苦しい……。苦しすぎる……。  俺をゆっくりとあお向けにした黒木が、驚いた顔をする。 「なんでまた泣いてる……?」 「わかん……ねぇ……。なんか、止まんねぇ……」 「どこかつらいのか?」  黒木が指で俺の涙をぬぐいながら問う。  俺は首を横に振った。 「すげぇ……幸せ……」 「……そうか。俺も、幸せだ」 「くろき、も……?」 「幸せすぎて、怖いよ……」  黒木がそう言って、まぶたにキスを落とす。 「……ん……」     俺も、本当に幸せでなんか怖い。  こんなに幸せなのは初めてで、抱かれるたびに胸の苦しさが増していく。  ずっと黒木とこうしていたい。  俺、絶対に黒木を失いたくない……。  

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