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第33話 *
期末考査が終わった。
黒木に勉強を見てもらったおかげで、自力で答案を埋めることができた。これは俺にとってはすごいことだ。
これで結果が良ければ、黒木の家にもっと泊まれる。
一時、調子に乗って全然帰らないでいたらガッツリ焼きが入った。いまは週二か週三。でも黒木と一緒の方が成績が上がるなら文句は言わないはずだ。
俺は黒木ともっと一緒にいたい。ただ一緒にいたい。そばにいたい。
もう少しで夏休みだ。この結果が良ければ、いまよりもっと黒木と一緒にいられる。きっと。
「……んっ、くろき……っ、あぁっ、そこっ、アッ、やばいやばいやばい……っ、ンンッッ!」
「はぁ……気持ちいい……野間……っ」
「はっ、ああぁっっ!」
やばい嬉しいっ。黒木の気持ちいいの言葉がビリビリと俺の快感に変わる。
喘いでる口を黒木の唇でふさがれた。
深く奥まで舌が入ってきて、俺は一瞬でとろけてしまう。
「んぅっ、……んっ……」
繋がりながらキスされるの、俺好き。すげぇ好き。
黒木が優しくて、それがすげぇ嬉しい。ほんとに幸せ。もうずっと離れたくない。
「あっ、も……だめ……っ、くろきぃ……っ、ンゔーーッッ!」
「……は……ぁ、……野間っっ! ……く……ぁ……」
終わったあと、黒木はいつものように俺を抱きしめて眠る。初めは恥ずかしかったこれも、いまはすごい嬉しい。
そして、黒木が先に眠った日に、隠れてキスをするのがちょっと楽しみだ。俺が先に寝ちゃった日は、朝起きてからガッカリする。
本当はいつでもキスがしたいけど、それはなんか違う気がして言い出せない。そこまで考えて、ハッとして気持ちを打ち消した。
黒木がシャワーに入ってて良かった……とホッと胸を撫で下ろす。
昼休み。隣のクラスの女子が二人、黒木のところにやってきた。「放課後、話があるから中庭に来てっ」「絶対来てね」とだけ言って去って行った。
黒木が呼び出されるのはこれで二回目だ。
「……可愛い子だったな。どっちが告白すんのか知んねぇけど」
「そういうのじゃないかもしれないだろ」
「この前もそう言って、やっぱ告白だったじゃん。ああいうのはだいたい後ろで黙ってた方が告白する方だよな。なんか……いい子そうだったじゃん?」
「別に興味ない。わかってるだろ」
「……わかってる……けどさ」
わかってるけど確認したくなった。
興味ないんだ。そっか……。
あれ。俺なんで安心してんだろ……。
……あ、そっか。親友を取られたくないからか。そっか。
興味ないって言ったけど本当かな……。
黒木の心が気になって読んでみたけど、また本の世界に入ってた。黒木は最近、頭の中が本ばっかりだ。
いまは精神統一する必要ないよな……? じゃあ本当に本の世界なんだな。
午後の授業はなんだか落ち着かなかった。
黒木はなんて答えるんだろう。前回は告白じゃない可能性も考えて、もう少し落ち着いていられた。
今回はもう絶対告白だろ、と思うと落ち着かない。
黒木は興味ないって言ったけど、実際可愛い子に告白されたらどうなるかわからない。
黒木がもし誰かと付き合ったら、俺はどうしたらいいんだろう。黒木の家にはもう簡単に行けなくなっちゃうのかな……。と考えて、いや違うだろそうじゃないだろ、と重大なことに気づいて愕然とした。
もし黒木に彼女ができたら、俺もう黒木に抱いてもらえなくなるじゃん……。
どうしよう……心臓が痛い……。まだわかんないのに泣きそうになった。
俺たちはこの力のせいで恋愛はできない。だからこのままでいいじゃんって俺は黒木に言って、それからこの関係が始まった。
でも俺たちは恋人じゃないから、もし黒木に彼女ができても俺はなにも言えない。ただ黙って見てるしかない。
誰とも付き合わないで、なんて言う資格すらないんだ……。
……あれ。俺、誰とも付き合わないでって……本当は言いたいんだ……。
俺がいるじゃん、って言いたい。
黒木には俺がいるからいいじゃん、って言いたい。
誰とも付き合わないでずっとずっと俺と一緒にいてよ、って言いたい。
え……。ただ……黒木を失いたくないだけだよな……?
そこでハッとした。やばい。どうしようっ。
そうだ、呪文っ!
(カウョシデノイブニケダンドンセマイテイヅキニチモキノンブジダマモデレコハマノ……)
俺はとっさにジョージの呪文を唱えた。
こんな気持ち、聞かれたらやばい。
俺はひたすら呪文を唱え続けた。
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