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第68話 ※
「いいよ、やるか? 岳。ぁ……っ」
「もう負けそうだな? 徹平」
「は……っ、だ……からそれ、うなじ……ずりぃって、岳っ」
「体勢のせいだ。じゃあ前からにするか」
『やっぱり徹平の顔が見たい』
前からっ。やったっ。黒木の顔がやっと見れるっ。
嬉しくて飛び跳ねたくなった。
「うん、前からがいいっ」
『ほんとに嬉しそうだな。可愛い……徹平』
はやく。はやく黒木の顔が見たいっ。
「岳、だろ?」
「あ、岳っ、うん、岳っ」
慣れないからついつい黒木って言っちゃう。
「んっぁ……」
俺の中から岳がゆっくり出ていくと、嬉しくてすぐに身体ごと後ろに振り返った。
そんな俺を見て、目尻を下げてクッと笑う岳がめちゃくちゃカッコイイ。
「……おはよ、岳」
嬉しい。やっと岳の顔が見れた。
「おはよう、徹平」
岳の首に腕をまわすと、ちょっとだけあきれたように甘く笑ってキスをくれる。
柔らかい唇がゆっくり優しく俺の唇をふさいだ。なんだかすごく甘いキスに、胸がくすぐったくなる。
岳は俺の頭を枕にうずめると、キスをしながらまた俺の中にそっと入ってきた。
「……ん、ンっ……」
「じゃあ、勝負だぞ?」
あ、マジですんだ、とおかしくなる。
可愛い、黒木。こんな可愛い黒木が見られるなんてうそみたいだ。
あ……岳だった。岳、岳……。名前で呼んでいいって本当に幸せ。
「動くの、無しな? 岳」
「わかってる。名前だけな。徹平」
「ん……岳、好き」
「俺も好きだ、徹平」
「大好き、岳」
「大好きだ、徹平」
『可愛いな、徹平……』
意識しすぎるからか、岳が中でピクッとするたび小さな快感が走る。
「岳、気持ち……い?」
「ああ、すごく気持ちいい。徹平は?」
「ん……、きもちぃ……岳」
「……声が可愛くなってきてるぞ? 徹平」
「ぁ……岳……」
なんで名前呼んでるだけなのに気持ちいいんだろ。
岳とつながってるだけで幸せで、それだけで気持ちいいのに、俺の中でかすかに起こす岳の刺激がもどかしくてやばい。
「キス……したい、岳」
岳の顔を見ていたら、またキスがしたくてたまらなくなった。
「キスしたら、お前感じちゃうだろ? 徹平」
「俺が感じたら、岳もきもちい……だろ?」
「なるほど。ウィンウィンだな、徹平」
「……んぅ、……ん……」
さっきの甘いキスとは違う熱いキス。すぐに舌が入り込んできてゾクゾクした。キス……嬉しい……。
『徹平の番だぞ?』
「……んぁっ、……ふ……」
『岳……好き、大好き。もうずっとこのままがいい……岳』
唇を合わせながら岳が苦笑した。
『それは幸せだが、耐え続けるのはちょっとつらいな。徹平』
「はふ……、ぁ……」
『岳……岳……大好き岳……。幸せ……』
『徹平……すごい締めつけてくるな? キスのせいか?』
『……わかんねぇ。俺締めつけてんの? ……岳』
頭がふわふわしてぼぅっとする。
こんなに幸せで甘々な毎日がずっと続くのかな。
俺、幸せすぎてマジで死んじゃいそう。
『ずっと続くに決まってるだろ、徹平』
『……うん。嬉しい、岳』
『徹平』
「……んっ、……ふ……」
じわじわと気持ちいい感じがもどかしい。腰、動かしたい……。
でも勝負には勝ちたいし、なによりこのままつながっていられるのも嬉しい。
俺たちはキスを繰り返しながら、心の声で勝負という名の会話を続ける。
『……なぁ、岳』
『なんだ? 徹平』
『もしかしてさ。いままでも……本当は朝もしたいって思ってた? 岳』
『どう、だったかな。覚えてないな。徹平』
覚えてないと言いながらも、すぐに『すまん……ウソだ。ほんとは思ってた。……あぁもう俺、どんどん格好悪くなるな』と落ち込んだ声が返ってくる。
心を解放してから、いままで見たことのない岳がいっぱいで可愛くて頬がゆるむ。
「がく……かわいぃ、……っんぁ……」
可愛いと言ったら舌を甘噛みされた。
それがまた可愛くて笑ってしまう。
ゆっくり会話をしながら名前を呼びあっているうちに、だんだんもどかしくなって俺たちの腰は少しずつ動き始めた。
『腰……動いてるって、岳』
「んんっ、……ふぁ……」
『徹平が先に動いたんだろう?』
『は? 岳が先だろ?』
『いや、徹平だろう』
言い合いになりながら、どんどん動きが本格的になる。もうあとはタガが外れて夢中で抱き合った。
「あっ、あっ、んゔゔーーーッッ!」
「はっ、ぅっ、徹平……っ!」
いつものように俺が果てたあとに岳が果てた。
「俺の勝ちだな……徹平」
「な……に、言って……」
『先に腰動かしたほうが負けだろっ。俺の勝ちだってっ、絶対っ』
「いいや、俺は動かしてない」
『動かしたっ!』
勝負は絶対に俺の勝ちだ。
だって俺、絶対先に動かしてねぇもんっ。……たぶん。
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