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第6話
綺麗じゃないオメガを見るのは初めてだった。
その言い方はフェアじゃないかもしれない。
顔半分は恐ろしく綺麗だったからだ。
残り半分は、焼けただれひきつれていた。
オメガを一般世界で見ることは少ない。
アルファと同じように、オメガだとわかったその日から、アルファとオメガ専門の学校に18まで通うからだ。
全寮制のその学校で、オメガは卒業までに番を見つけることを推奨されている。
アルファがオメガを求めるのは本能だけど、オメガがアルファを求めるのは必要からだからだ。
オメガの発情期はアルファでないと治められない。
アルファと性交して中で出されてやっと落ち着くのだ。
抑制剤などその苦しさに対しては気休めでしかなく、飲んだところでとても苦しい。
それに、オメガの発情フェロモンに反応したアルファがオメガに襲いかかってくる
これも本能なので止めようがない。
フェロモンに関しても抑制剤の効き目は体調や個人差があり、絶対ではない。
だからオメガは番を作る。
番になれば、そのオメガのフェロモンに反応するのは番だけになるし、発情は番とすることで解消される。
オメガには番を作ることはメリットが大きい。
現代ではオメガとわかった時に、ホルモンを調整するカプセルを埋め込まれる。
未熟なオメガが発情して「事故」にまきこまれるのを防ぐためだが、それはその薬の強さから20歳までと決められている。
寿命を縮まるレベルだからだ。
出来るだけ早く番をつくり、カプセルを取り出すことがオメガの為でもあるのだ。
そのカプセルが外される20歳までに、番を見つけることはオメガためなので、オメガとアルファの学校はまあ、お見合いの場でもあるのだ。
そんなこんなで、18まではアルファオメガの専門の学校、そこから先は支配者としてエリートを進むアルファとそのアルファに囲われるオメガはまあ、一般世界ではそうそう見ることはない。
ベータであってもエリートか、アルファオメガの家族でもなければ。
家族でも、アルファオメガになってからは、距離が離れてしまうのは仕方ない。
アルファになった子供はベータであった時とは何もかもが変わってしまうし。
オメガもまた違う生きものとして育ってしまう。
それに、まだアルファではなかった頃の関係に拘るアルファはシンくらいで、普通はベータの家族とはどんどん遠ざかってしまうものなのだ。
生きる世界が違うから。
だから、オメガアルファに、ベータは詳しいわけじゃないし、見ることめったにない。
だけど、こんな。
顔がこんな風になってるオメガなんて見た事はなかった。
いや、オメガじゃなくてもそうだけど。
でも、男とも女とも違う、オメガはオメガ、ということがわかる身体つきと、半分の綺麗な顔と、隠そうともしない焼けたその顔はあまりにインパクトがありすぎた。
その人はオレを訪ねてきたのだ。
シンの事で話がある、と。
シンの「カウンセラー」 だと言った。
オレは戸惑う。
シンはアルファなのでもう保護者は必要じゃない。
仮の親権のようなモノは国が持ってる。
オレの家に週末に来るのはシンの意志で、オレの父親が許可しているからだ。
オレの父親はシンの保護者じゃないし、それにまだ高校生のオレとシンの「カウンセラー」が何を話すと言うのか?
とにかく、オレはそのオメガを家に入れた。
アルファの組織を名乗る犯罪組織はありえないからだ。
そんなの秒で潰される。
身分証明証はホンモノらしかったし。
ややこしい苗字の下に名前はカタカナでユキと書いてあった。
カタカナでユキって本名で珍しいな、と思った。
お茶を出すとその人はにっこり笑った。
とても美しかったシンのオメガだった母親よりその顔半分は美しく、そしてもう半分はとても醜かった
なんだかよくわからない不安な気持ちになるオメガだった
「僕醜いでしょ?」
オメガが言った。
とっさだったので頷いてしまった。
「僕の仕事には必要なんだよ、この顔がね」
そのオメガ、ユキさんは言った。
「僕のカウンセリングは基本心じゃなくて、身体の方なんだよ、アルファのね。シンは問題を抱えている」
ユキさんは言った。
真っ青になった。
シンが身体に問題が?
めまいがした。
「ああ、大丈夫。健康だから。そっちじゃなくてね、セックスの話」
ユキさんは何故か面白そうに言った。
オレはポカンとした。
どういうこと?
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