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第12話

「キョウちゃん!!キョウちゃん!!」 校門の前でシンが飛び跳ねている。 オレはシンの通うアルファとオメガの専門校に来ていた。 カウンセラーのユキさんと話をして、見学に行かせて貰うことにした。 「来て、どうするの?」 ユキさんに聞かれた。 「オメガの子とシンをくっつけたいんです」 オレはハッキリ言った。 「シンを好きなオメガの子がいたら、その子が良い子だったなら、シンにその子と付き合うように言います」 オレは決めていた。 シンにはどうあってもオメガと付き合ってもらう。 そうすれば、オレに向けられている性欲が間違いだったと気付くだろう アルファは1度抱いただけでもオメガに執着してしまう、そうユキさんも言ってた。 「シンは、オレの言うことは聞きます」 ちゃんと言えば。 オメガと付き合え、と言えば、キョウちゃんがいいとか言うが、あの子と付き合え、じゃないともう会えない、というなら聞くのは分かってた。 家族がオレしかいないのに、そんなの酷い脅しだとは分かっていたけど、でも。 シンにはオメガが必要だ。 ベータをパートナーにしているアルファ達が、それでも処理のためにオメガが必要なのは、元々、アルファとオメガの組み合わせこそが正しいからだ。 アルファとオメガが一番幸せなカタチなのだ。 シンの母親だって、シンの父親が生きている間は、誰よりも優しい母親だったのだ。 アルファもオメガも番がいることが一番精神が安定することは、誰もが知る事実だ。 アルファの狂気を受け入れられるのは、アルファが生きていくのに必要不可欠なオメガだけ。 アルファの相手はベータじゃない。 オレじゃない。 オレはとてもシンを大事に思っているし、離れるつもりはないけど、でも、正直今でもシンが怖くもある。 それでも離れないけど。 あれ以上の執着なんて、オレには無理だし、そもそもオレに向けるべきじゃない。 「そう?それで君はいいの?」 ユキさんは意味深に言ったか、良いに決まってる。 シンがオメガを得て幸せになるのが一番良い。 それが一番だ。 ユキさんは学園を訪れる許可書をくれた。 家族面会、ということにして。 オレはシンの家族扱いになってるらしい。 そして、ベータがほとんど訪れることのない、アルファとオメガの専門校へ、オレは来たのだった。 正直。 ドキドキしたし、めちゃくちゃ好奇心が・・・。 門から走り出してきたシンに抱き上げられる。 グルグルオレを抱えて回ってる。 「週末じゃないのにキョウちゃんと会えてる!!!」 めちゃくちゃ笑ってるシンは、やはり13歳で、なんだかホッとした。 オレをイカせる時のあの大人びた、ヤラシイ男の顔のシンは怖くもあるのだ。 「下ろせよ!!恥ずかしいだろ!!」 オレは怒る。 めちゃくちゃ見られてた。 校門の前にオメガとアルファが集まってた。 アルファはでかいから、そして、オメガは綺麗だからすぐわかる。 でも、なんで? 人があつまってんの??? 「外から人が来ることはあまりないからね」 シンが笑って、オレを下ろした。 「オレから離れないでね、キョウちゃん。アルファはベータも狙うし、オメガだってそうだから」 囁かれて笑った。 美形ぞろいのアルファオメガがオレを狙うとは思えない。 平凡すぎるほど平凡なベータなのだ。 だけど、シンは真剣だった。 こういうのが、若干怖いんだよな。 オレは一般人が入ることのない、学園内部へと入ることにちょっと目的を忘れて、楽しんでいた。

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