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第14話

「番は要らない。キョウちゃんがいい」 シンは言い切って、テーブルの上にあったオレの手を握った。 そしてそれを大事そうに顔に近ずけ、指の1つ1つにキスをした。 学校の食堂で!! いや、カフェテリアか!! 「ちょっ、シン!!」 オレは真っ赤になった。 「これくらい誰も気にしないよ。どうせここのヤツらはヒマがあったら物陰で嵌めてるヤツらだよ」 シンは言って、また指にキスする。 ペロっと指の股まで舐められて、またぞくっとしてしまう。 シンとの「手助け」はペニスを尻や腿に擦り付けられたり、ペニスをペニスに擦り付けたりするけど、キスとかそういうのはなくて、だからこそ、まあ、「手助け」か「オナニーをし合ってるだけ」と思うようにしてる。 だけど、その行為の間に、シンがオレの臍で指を出し入れしたり、そこを押したりするんで、本当なら何とも思わないそんな橋で、ずっとなんかされてると、そう、最近本当になんか変な感じで。 なんか。 なんか。 なんか。 この前自分で臍をなぞりなからオナニーしてしまったのは内緒だし、耳を毎回舐められてしゃぶられるのとかにも、なんか変になってしまってるのも内緒だ。 だから、こうやって指とか舐められても、その変な感じがしてしまうのも、シンには知られたくない。 シンの手を強引に振り払った。 シンは面白そうに笑うだけだ。 でも、シンの言う通り、誰も気にしてないというより、ベータの学校よりあからさまにカップルがイチャついている。 アルファの膝の上に乗ってるオメガとか、オメガに自分のスプーンで食べさせてるアルファとか。 まあ、分かったのはアルファはオメガにはゲロ甘ってことだ。 ベータの彼氏よりはるかに甘い。 食べさせながら、頬撫でてたり、膝に載せたオメガの腹を撫でてたり。 なんか。 なんか。 見てしまうと恥ずかしい。 思わずキョロキョロしてしまった。 見てられないから視線をどこにやれば良いのか。 あちこちにいるんだから。 でも、敵意ある視線をいくつか感じた。 オメガが何人かオレを睨みつけていた。 その理由は分かる シン、だ。 シンの番になりたいオメガ達なんだろう。 10歳くらいからそれこそ18歳くらいまでのオメガが5人ほど、オレをに睨んでいた。 みんな綺麗なオメガだった。 当たり前だけど。 10歳の子供みたいなオメガは却下した。 いや、オメガ的には問題ないのかも知れないけど、オレが見ていて困るから。 ダメだ。 子供、ダメ。 見てくるオメガの内、15歳位の綺麗なオメガで、大人しそうな子がなんか良さそうだと思った。 綺麗で知的で、上品で。 何より、本を持っててその本かオレの好きなSF作家だったからとても良かった。 あの本を読むヤツに悪いヤツはいない マニアックだけどな。 「あの子、シンを見てるよ」 オレは言った。 「知ってる。何度断っても番になりたいって言ってくる」 あっさりシンが言う。 「あの本を読む子は良い子だよ。付き合えよ」 オレは心から言った。 人の内面はその人の読む本にある。 オレはそう思ってる。 あの本が面白いと思えるなら、人間にとって大切なことをクリアしている。 シンは呆れたようにオレを見つめるとため息をついた。 「ホント、キョウちゃんは・・・」 何か言ったけど聞き取れなかった。 「好きって言ってるよね。キョウちゃんが良いって言ってるよね」 少し怒ったようにシンは言う、オレに怒ることなどシンはほとんどないだけに、怯みそうになるが、オレも覚悟を決めてきたのだ。 シンは大事な家族で、一生守る。 シンが離れて行っても、オレはシンを思ってる。 シンの幸せは良いパートナーを得ることなのはまちがいない。 アルファはオメガが必要なのだ。 オレのために欲望を我慢する必要などない。 オメガと付き合えば、オメガはシンに全てを与えてくれるだろう。 「シン、お前の相手はオレじゃないんだよ」 オレは言った。 そのことを伝えるために来たのだ。 家だと、流されてしまう 甘えられて、つい許して、なんか「人助け」までしてしまっている 「シン、お前が大事だ。誰よりもだ。お前はオレのたった一人の家族だ。それは一生変わらない」 アルファは、親や兄弟とも疎遠になる。 仕方ないのだ。 アルファは闘争に生きる。 アルファはベータと違って他人の力を借りずに戦う。 親兄弟の繋がりを利用するベータ達とは根本が違うのだ。 だから遠ざかる。 親兄弟を優遇することもしないからだ。 アルファはベータよりはるかに平等なのだ。 その結果、オメガだけを傍に置く。 オメガはアルファのすべてになる。 オメガはアルファの重すぎる愛も、激しい欲望も、果てしない孤独も受け止めてくれる。 そういう風に出来ている。 オメガの発情を止めてやれるのもアルファだけだ。 アルファの子供を産んでやれるのも。 ベータからアルファやオメガが生まれても、アルファの子供を生めるのはオメガだけ。 まあ、アルファとオメガから生まれるのはアルファオメガベータのどれになるかは分からないけれど。 シンがオメガと幸せな家庭をつくること。 これはオレにとっても幸せだ。 オレは。 そういう家庭、無理だから。 ベータだし。 子供産めないし。 だからシンには幸せになって欲しかった。 オメガを得て、シンが疎遠になってしまったとしても、オレはシンが幸せなら良いと思ってる。 「・・・・・・キョウちゃん、ほんと・・・」 シンが頭を抱えて何か言った。 また聞き取れない。 「いいよ、キョウちゃん、キョウちゃんがそう望むなら」 だが、ため息をついたシンはそう言ったのだった。

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