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第15話

シンがオレの手を掴んで突然立ち上がった。 オレは飲みかけていたコーヒーを慌てて飲みほして、カップをおく。 食堂の紙コップじゃない、ちゃんとオシャレなコーヒカップだ。 さすがカフェテリア。 そして、シンに強い力で引きずられるように連れて行かれる。 シンはあの良い感じのオメガの子の前にオレと立った。 オレの好きなSF本を手にしていたその子は驚いたようにシンを見上げる。 目が潤んで大きくなってたから、やっぱりシンが好きなんだな、とオレは思った。 「オレと付き合う?キョウちゃんが先輩と付き合えって言うからさ」 シンは絶対オレにはしない無愛想な態度で偉そうに言った。 オメガの子はやはり先輩だった。 だって、シン、13歳だし。 オレと同じ歳くらいのその子はシンの言葉にぱあっと顔を赤く染めた。 白い顔が上気して、とても綺麗だった。 人形みたいに綺麗な顔。 でも、大人しそうで上品で。 震える目と強く結んだ唇がシンへの好意を隠しきれない。 ものすごく綺麗で可愛いくて、これがオメガなんだと、オレがドキドキしてしまった。 「キョウちゃん、こういつのがタイプ?」 シンが面白く無さそうに言う。 オメガがチラリとオレを見たので真っ赤になってしまった。 でも、オメガのオレを見る目は花瓶とかを見るのと同じ無機質だった。 シンに向けるのとは違う・・・ ふん、 シンは面白く無さそうに鼻で笑うと、オレの手を握ってない方の手で、オメガの腕を掴んだ。 オメガが痛そうに顔を歪めたから、オレはシンに怒る。 「何するんだ!!乱暴はダメだ!!」 シンはその腕への手を緩めたけど、掴むのはやめなかった。 「まだオレの番になりたい?」 シンはオメガに顔を近づけて言った それはキスの距離で、シンのアルファらしい、雄みの強いの美しい顔と、オメガの人形のような綺麗な顔がスレスレのところで並んで、驚く程の美しいセットになる。 見惚れてしまう。 「・・・なりたい」 オメガは小さいけど、はっきりした声で言った。 「じゃあ、おいで。試してみよう」 シンはやっと優しげな声を出した。 でもそれは嘘っぽい優しさで。 オレにもその子にもそれは分かったのに、でもそのオメガの子が、それに籠絡されるのも分かった。 悪い男の声だったから。 オレに「人助け」だからと囁く時の声だ。 「じゃあ、行くよ」 シンはオレとその子の両方の手を握って言った。 「どこに?」 オレは聞く。 きっとその子も聞きたかっただろう。 大きな目で尋ねるようにシンをみる。 「オレの部屋」 シンは言った。 怒ってるような、呆れてるような、そして、オレに「人助け」させる時の悪い顔もして。 「キョウちゃんの言うこと聞いてあげる」 シンはそういうと、オレとオメガを引っ張るようにして、歩きはじめた。 オレたちは引きずられるようにして、ついていくしかなかった。

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