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第18話

「いいよ、シン。シンは・・・オメガと番になるべきだ」 オレは言った。 言えたのだ。 何故か唇が震えて言葉が出にくかったけど。 シンは表情1つ変えずにオレを見つめてたけど、不意にため息をついて頭をかいた 「・・・本当にキョウちゃんはバカ」 シンは言った。 怒ったように顔を歪めて。 はあ? オレは思った。 バカだと言われて腹が立った だが、オレを見てシンは唇を歪めて笑った。 残酷そうな笑顔だった。 そして、シンは身体の下のオメガの胸に優しくキスをした。 それは身体を楽しむ行為では無くキスだった。 甘く、優しい。 白い喉に。 頬に。 オメガはただ唇を落とす、それだけの行為に今まではで一番感じた。 キスだけで。 涙を流しながら震えて、声も無く、何度もイった。 射精すらない、その快楽の頂点の甘さが見ていてもわかる。 オレの胸はそして一番苦しかった。 何故だか。 苦しい痛い。 なんで? 分からない。 「キョウちゃん・・・」 抱きしめていたオメガの身体をそっとシンが横たえる。 まだ震えてる身体で、それでもしがみつこうと伸ばされたオメガの手を、乱暴にシンは振り払う。 「ねぇ、なんでそんな顔してんの?」 シンはオレを優しい目で見つめながら言った。 優しい声で。 切なく腕を伸ばすオメガに目をやろうともしないで。 「そんな顔」? オレがどんな顔をしてると言うんだ。 オレは自分の顔に手をふれた。 そして気付く。 指が濡れてた。 オレは泣いてた。 なんで? なんで? 「泣くほど嫌なくせに、それも分かんないバカなキョウちゃん」 シンの声は甘かった。 信じられないくらい。 シンはため息をついた。 身体の下のオメガに言う。 「分かった?オレはこんなに酷い男なの。あんたはあんたを大事にしてくれるアルファにしておくんだね。あんたを抱いたアルファがいるんだろ?そっちにしとけ」 オメガに言うと裸のままのオメガを片腕で軽々と抱えて、もう片方の手で床に落ちてる服を拾った。 片手に裸のオメガ、片手にオメガの服。 それらを持ったまま、シンはオレに言った。 「キョウちゃんオレ、手が塞がってるからドアを開けてくれる?」 意味が分からなかった。 裸のオメガを抱えてどこへ行く気? なんで泣いてるかも分からないオレはさらに分からなくなる。 「キョウちゃん、早く」 でも強く言われて、混乱したまま、ドアを開けた。 そこにはアルファが立っていた。 怒りに震えた大きな、シンより大きなアルファが。 いつから立っていたのだろう。 鬼のような形相で。 そのアルファが見ているのがシンが抱えるオメガだったから、怒りの意味が分かった。 「アルファはオメガの選択には口を出せないもんね。オメガの選ぶアルファを殺すことは出来ても、オメガがアルファを選ぶことを止めることはできない。可哀想だね、本能ってマジ厄介。オレにオメガが自分からついて来てる以上、止められないよね。だってまだ、番じゃないもんね」 シンは心から気の毒そうにそのアルファに言った。 オメガがアルファを選ぶ。 それを本能としてアルファは認めている。 それは知ってたけど、こういうことだとは思わなかった。 番になっていなければ、オメガが他のアルファにいくことを止められないのだ。 そういう風にアルファはできている。 怖い、と思った。 アルファはどこまでも本能に支配されているのだ。 だけどシンは普通の態度で。 そして、抱えているオメガに言った。 本当に優しい声で。 「ごめんね。あんたじゃ無理。あんたはあんたを欲しがるアルファにしとくんだよ」 そうシンに言われて、オメガは号泣した。 「いや、いやぁ、いや!!!」 オメガはそれでも嫌がった。 当たり前だ。 オレの目の前であんなことをされてでも良いくらい、シンがこのオメガは好きなのに。 「ごめんね」 シンはそう言うと、裸のオメガをアルファに渡した。 アルファはオメガを抱きしめた。 「嫌、いやぁ・・・」 オメガは泣いていて、でもアルファにしがみついていた。 シンはアルファに服を渡す。 アルファは受け取る。 アルファの憎しみの目が恐ろしかった。 「まあ、コレで一生恨まれ憎まれ、オレを潰しに来るんだろうけど。一応ね、言っとく。最後まではしてないから。オレはオメガは要らないので」 シンは言った。 「でも、どうせ、これから確かめるんだろ?オレのを挿れてないか。その孔に嵌めて。オメガが他のアルファについていくのは止められないのに、めんどくさいな、アルファってのは」 シンは笑った。 自分もアルファのくせに。 「いつか、殺す」 アルファはそうとしか言わなかったが、それが本気なのだけはわかった。 「やれるもんならね」 シンは笑った。 正々堂々と正面から、アルファは殺しに来るだろう。 合法的なやり方で。 アルファとはそういうものだから。 「シンっ!!」 オメガが名前を呼びシンへと手を伸ばす。 まだ諦められない、と。 「ごめん。オレはあんたは要らない」 シンはアルファとオメガの目の前でドアをバタンと閉めたのだった。 オメガの泣き声が遠ざかっていく。 アルファが連れ去っていくのだ。 自分の部屋へ。 なんと言えばいいのか。 分からなすぎた。 「キョウちゃん・・・」 そして、シンは振り返り笑った。 どうしてだろう。 シンの優しい笑顔が。 凍りつくように。 怖かった。

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