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第25話

【シン】 「全部計算通りかい?クソアルファ」 ユキ先生がオレの上で揺れながら言う。 跨らせて、オメガが自分を欲しがるのを楽しむのも悪くない。 キョウちゃん相手なら、ひたすら可愛くて愛しいだけだろうけど、オメガ相手だとただの欲望を満たす行為でしかない。 肉を食いちらかす以上の意味などありはしない。 「そう、キョウちゃんがオレが苦しんでるのかと思って、身体を弄らせてくれるようになったのも、先生の【説明】のおかげだし。オメガを抱いてることが万が一バレても、アルファが何なのかについては先生から話してもらってるしね。バレたりなんか【絶対】しないけどね。それに何より、これがキッカケでキョウちゃんの独占欲に火をつけられたのは良かったよ。キョウちゃん、我慢強いから・・・オレがオメガに目の前で嵌めても許してしまうかと思って焦ったよ」 正直に打ち明けた。 ユキ先生は唯一無二のカウンセラーだ。 お礼に下から突き上げてやる。 ひうっ ひいっ ユキ先生が顎を反らし背中を弓なりにして、身体を震わせるのを中から楽しんだ。 優しい気持ちなどどこにもない。 キョウちゃんの身体を可愛がっている時の、どこまでもある愛しさなどない。 先生だって今はただのオメガだ。 オメガだってアルファに腹の奥まで満たして欲しいのだ。 先生だって、他にどんなに愛する誰かがいたとしても。 その人を思っていたとしても。 抱いてくれるアルファが必要なのだ。 そのためにセックスを【仕事】にしたくらいだ。 この仕事なら、先生の醜い顔も武器になるし。 そうまでしなきゃいけないのだ。 そうオレ達は。 そうアルファもオメガも。 オメガをアルファを求めてしまう。 身体だけは。 なんて悲惨な本能。 だけど だけど。 誰かを愛する時、愛しているのは本当なのだ。 本能じゃない、心の底から。 アルファになってしまったのはオレのせいじゃない。 アルファになってしまったからって、オレの気持ちが変わるわけがない。 あの暗い部屋で二人きり。 泣いてる子供のオレを抱きしめてくれて優しいキョウちゃん。 お腹が減ってても自分よりオレを優先してくれたキョウちゃん。 オレはキョウちゃんの温もりしか知らなかった。 それで良かった。 キョウちゃんが笑ってて、抱きしめてくれたなら。 早く大人になって。 キョウちゃんの欲しいものをあげたかった。 今度はオレがキョウちゃんの世界を満たすのだと。 オレは幸せだったから。 だって毎日毎日あのクソな母親といない方が良かった。 キョウちゃんと毎日居られる方が良かった。 キョウちゃん キョウちゃん キョウちゃん アルファになって身体を作り替えられる、時に死ぬこともある、あのひと月。 凄まじい苦痛に耐えたのは、キョウちゃんの所へ戻るためだった。 誰が。 諦めるものか。 キョウちゃんはオレのだ。 オレだけの。 この執着はアルファの本能などではない。 アルファにならなかったとしても。 オレはキョウちゃんに執着しただろう。 「キョウくん・・・気の毒に。幼なじみがストーカーだって知らなくて」 ユキ先生が嫌そうに言うから。 そのくせ、欲しがるように動くから。 上に乗せてたのを下へと引き倒し、殺すつもりで腰をぶつけた。 どうせ死なない。 悦ぶくらいだ。 いいっ いいっ ほら、もう正直になってユキ先生は泣き喚いてる。 押さえつけて犯す腰が、それでも淫らに動いて、さらに貪欲に欲しがっている。 弄ってやらない乳首を自分でも弄りながら、ユキ先生は何度でもイク。 こういうユキ先生は使っていて申し訳ないけど、反吐が出るほど嫌いだ。 汚いオメガだと思ってしまう。 オレの母親のように。 嫌だね オメガもアルファも。 最悪だ。 キョウちゃんだけが綺麗だ。 オメガの子宮への道を今度は犯しながら、決して実を結ことのない精液をぶちまける。 本能の命令なのに意味のない行為。 時々考える。 アルファは特に虫みたいだ、って。 虫は脳など無くても本能だけで動ける生き物だ。 全てが本能に支配され、その結果、人間よりも見事に機能することが出来る。 学ばなくても最初から全てのことができる。 なんなら蜂のように社会生活も営める。 アルファが優秀なのは本能に支配されているからではないか? 優秀さと引替えの本能ではないか? 何だっていい。 全部オレのせいじゃない。 なりたくてなったわけじゃない。 本能を強い抑制剤でおさえつけるつもりもない。 そんなことをして、寿命を短くしたら、キョウちゃんを誰かに盗られてしまう。 「キョウちゃんに【優しく】出来るように、もっと使わせてね、先生」 オレはユキ先生に言った。 アルファがベータを殺してしまうことはある。 アルファとベータのセックスは、アルファにとっては遊びだ。 もちろんオレは違うが。 それでも。 たまに。 つい本気になって、殺してしまう事故は全く無いわけではないのだ。 ほとんどないが。 でも。 オレはキョウちゃんにこそ本気だから。 だからこそ。 先生を使わないと。 万が一などないように。 「クソ・・・アルファ。諦め・・て、やったら・・・」 ユキ先生が、出した後をさらに動いてやってイクのが止まらないくせにそんなことを言う。 ユキ先生はオレがキョウちゃんを騙すのに賛成はしてないのだ。 反対も邪魔もしないけど。 「嫌だ」 オレは当然言う。 オレがキョウちゃんを離すことなど。 ありえない。

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