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第44話

もうそんな気分ではなかったけれど、水族館の中に入っていたから見てまわることにした。 シンがあのオメガから逃げるためにここに逃げ込んだのも確かだったし。 でも、シンは明らかに沈んでて、考えこんでてて、とにかく後で話し合わないとと思った。 でも。 「やっぱりクジラはいないね」 とオレが言うとシンはやっと笑った。 そこは大きな水槽で、水のトンネルにもなってて頭の上にも魚がおよいでいた。 そして、イワシの群れまでいたけれど、オレがシンにはなしたようなクジラとイルカが群れで泳ぐような水槽はなかった。 当たり前だが。 だが、閉じ込められた部屋でオレとシンは、想像の中でそんな大きな水槽を眺めていたのだ。 それはもはや海だった。 「キョウちゃんの話してくれた水族館が一番いいな」 シンは笑った。 その笑顔に不覚にもときめいた。 可愛いすぎる。 可愛い可愛いオレのシン。 やっとオレ達は笑いあった。 いつもの2人でいる時の空気が戻ってきた。 「キョウちゃん、本当にアイツとは何でもないから」 シンが真剣に言うから、わかってると伝えるつもりで手をにぎった。 思い出したら平気ではない。 胸が苦しくなる。 でも、あの時のことで1番傷ついたのはオメガの彼だ。 そのことについてはまたゆっくり話そう。 シンがそうなのか、アルファがそうなのかわからないけれど、どうにもシンにはオレ以外の人を道具のように使うところがある。 そこは。 話し合わないと。 それは見過ごせないことだから。 「愛してるよ、シン。帰ってから話そう。ね?」 オレが優しく言うと、シンはホッとしたようだった。 「キョウちゃん、喉乾いてない?コーヒー買って来ようか?それともお茶する?」 シンに聞かれる。 もうかえりたかったし、コーヒーを頼んだ。 家で話をしなきゃ。 シンが下の階の自販機まで買いに向かったその時背後から声がした。 「あんたに言いたいことがあるんだ」 その声に振り返る。 そこにはあのオメガが立っていた。 水族館の前を通りかかった感じだったし、どう見ても仕事中のスーツ姿だ。 オレとシンを追って中に来たんだ、とわかって緊張した。 オメガの顔は真剣だった 「怖がらなくていい。でも、どうしても言いたいことがある。シンに聞かれたらまずい。一緒に来て欲しい」 オメガはそう言った。 オレは迷った。 迷ったけれど。 オレがついてくると疑いもせずに歩きだすオメガの後に、オレはオメガがの思うがままついて行ったのだった。

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