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第51話
オレはぼんやりしてた。
どうやって家に帰ったのかも覚えてない。
シンがひっきりなしに話しかけてきたような気がする。
何か答えたのだろうか。
わからない。
「キョウちゃん、キョウちゃん!!」
悲鳴のようにシンか叫んで、身体を揺さぶられて、なんか意識が戻った。
シンは必死な顔をしていて、泣きそうだった。
いつもならそれに心が動くのに、何も感じない。
何も何も何も。
ああ、これが乖離ってやつか。
そう思った。
心を切り離しているのだ。
母親から冷たくされる度にしてきたことと同じだな、と思った。
辛くないように。
シャットダウン。
「オレを視て、キョウちゃん!!」
シンの悲鳴。
それでも。
相手がシンだから。
オレは泣いてるシンをまもらないといけないから。
オレは笑った。
笑えたはずだ。
「大丈夫。少し時間が欲しいだけ」
オレは言ったのに。
笑えて言えたはずなのに、シンはそれを見て、さらに悲鳴をあげた。
「キョウちゃん・・・キョウちゃん!!!」
シンは混乱して、オレを抱きしめて泣き始めた。
オレはされるがままだ。
シンが泣いてる。
シンが。
「泣くな、シン。泣かないで」
オレはぼんやり言った。
シンは小さいから。
シンにはオレしかいないから。
オレが守ってやらないと。
大丈夫。
シン。
オレがいるからな。
「キョウちゃん・・・キョウちゃん・・・違うんだ・・・」
シンの言葉が遠くながれていく。
「眠りたいんだ。シン。オレ寝たい」
オレは心から言った。
何も考えずに眠りたかった。
それはシンか来る前の部屋に似ていた。
母親が帰って来ない部屋で一人ぼっちで閉じ込められていた時。
眠れば時間がすぎて母親がもどってくると知っていた。
はらが減っても眠った。
喉が乾いても眠った。
泣いても誰も来てくれないと知っていたから。
ただ、眠りこの時間が終わるのを待った。
終わってくれ。
終わってくれ。
辛いんだ。
辛いんだ。
「キョウちゃん、キョウちゃん、オレの話を聞いて!!」
シンの声。
泣き声。
泣くな。
シン。
でも。
少しだけ。
眠らせて。
眠りたいんだ。
オレは目を閉じた。
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