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第57話
【シン】
キョウちゃんはキョウちゃんの中に逃げ込んでいる。
それは理解した。
今のキョウちゃんはキョウちゃんが現実を耐えるためのキョウちゃんだ。
このキョウちゃんもキョウちゃんなので大切にして、優しくしているけど、このままキョウちゃんを逃がしてやるつもりはなかった。
優しいキスやスキンシップ以外はしてない。
めちゃくちゃ可愛がりたいけど我慢してる。
セックスしてめちゃくちゃ感じさせたなら引きずり出せるかな、とか思ったけど、そういうのじゃダメだ。
キョウちゃんがキョウちゃん自身で出てきてくれないと。
ユキ先生とのカウンセリングは続いているけど、今のところ効果無し。
キョウちゃんの自己防衛は完璧だ、とのこと。
「何をする気だ?何をするにしても、おまえのやることは根拠がない」
先生は言う。
だけど、根拠はある。
オレにはある。
少なくとも、キョウちゃんは笑って優しいキョウちゃんをオレのためだけに現実に置いて行った。
そのこと自体が根拠だ。
仕事は調整して、今はほとんどを家にいる。
元々キョウちゃんと過ごせるのを週末だけにしていたのはキョウちゃんのためだ。
万が一でもキョウちゃんを襲って引き裂いてしまわない用、ユキ先生を抱いてから家に帰ってた。
ユキ先生が【仕事】に出かけているのはオフィスではなくオレのそのための部屋だ。
もちろん、オフィスの形式はとってるし、その仕事もしてる。
でも先生がここで最優先でしてるのはオレとのセックスだ。
床でも机でもソファでも。
奥の部屋のベットではもちろんだ。
秘密を守るためにものすごく慎重にユキ先生との【行為】は隠されている。
オレもその部屋の入り口からは入らない。
2つ隣りの事務所からユキ先生の「 オフィス」にはいる。
ユキ先生にオレのビルの部屋を貸してることはキョウちゃんには言ってある。
万全だ。
万全だったのに。
なのにキョウちゃんがこうなって、ユキ先生にドヤされた。
「最初からお前がドクズでキョウ君に不釣り合いなのは分かってるだろ。なら、絶対にバレないようにするべきだったのに」
と。
ミサキと再会するのは予想外だった。
ミサキだってオレに会いたくなかっただろうに。
だがこれからはどんな可能性も潰していく。
だが。
その前に。
ミサキに責任を取ってもらわないとな
キョウちゃんをキョウちゃんの中から引きずり出すために。
オレはオレをキョウちゃんが愛してることに絶対の自信があった。
だからこそ、キョウちゃんには。
自分から出てきてもらう。
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