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第58話
【シン】
「なんで僕が責任とらないといけないだ。お前のせいだろ」
ミサキは電話の向こうで言った。
まあ、この対応は予想とおりだった。
それにミサキは優しいので本気でキョウちゃんがオレから離れるのを願ってるのも分かってた。
「あのな、オレとキョウちゃんは別れたわけじゃないんだ。キョウちゃんはオレの傍にいるし、なんならいつだって可愛がってセックスしてやれる。キョウちゃんは笑ってなんでもしてくれる」
まあ、あれ以来キョウちゃんにそういう意味では触れてないので半分嘘だが、事実でもある。
キョウちゃんはおそらく何でもさせてくれるだろう。
笑顔で。
めちゃくちゃ感じるだろうし、甘えてさえくるだろう。
それに何より、こんなに長く抱いてないことがなかったので、キョウちゃんももう限界なのだ。
オレに抱かれて悦ぶだろう。
身体が疼いて仕方ないはずだ。
オレはキョウちゃんの身体をそういうふうにしてきたからだ。
いやらしい身体にして逃げられなくしようとしたのは間違いではなかった。
昨夜こっそりキョウちゃんが風呂でオナニーしていたのは、カメラで確認してある。
自分で乳首を弄り、穴を指で苛めるキョウちゃんは可愛いすぎた。
上手くイケなくて泣いてるのもたまらなかった。
オナニーなんてしなくていいくらい可愛がってきたから上手に出来ないのだ。
それでもなんとか一人でイく姿は胸が熱くなる感動モノの動画だった。
その録画した動画を見ながら、ユキ先生を犯していたのは内緒だ。
「クソ変態アルファ」と罵られまくったが、そんなのどうでもいい。
めちゃくちゃ興奮した。
先生が気絶しても止めなかったし、何度も何度もリピートして先生の孔を抉りまくった。
キョウちゃんには内緒だが、実はGPSこそつけてないが、家のあちこちにはカメラはある。
「へぇ、別れないんだ。・・・なら何も問題ないでしょ。僕が責任とることなんかない」
ミサキは冷たくいう。
ちょっと失望したようなのは本気でオレとキョウちゃんの破局を願っていたからわだな、と殺意は湧いた。
が、そこは抑える。
ミサキが必要だ。
殺しちゃ悪い。
「お前のせいだよ。キョウちゃんはショックをうけて現実を拒否してしまったんだ。今じゃただの人形だ。アルファのオレに好きなようにされるだけの。良かったな、ミサキ。それがお前の望みだったんだろ?」
ミサキの「優しさ」に賭ける。
ミサキがキョウちゃんを見捨てられないことに「賭ける」。
「まあ、オレには理想通りではあるんだけどな。もうキョウちゃんはオレから逃げたりしないし、もうオレが何したって笑って許してくれる。なんならキョウちゃんの前でオメガを抱いても許してくれるかもな」
これは本意ではない。
だがミサキがそう思ってくれればいい。
オレにだけ都合が良い状況なんて、ミサキには絶対許せないことだから。
「なんで都合が良いなら僕にそれを言うんだ」
ミサキは鋭い。
「都合は良いけど、オレはキョウちゃんを愛してる。キョウちゃんが本来の姿でいてほしい。その上でキョウちゃんが別れたいなら・・・まあ、考えてみても、良いかもしれない」
愛してるのは本当で、別れるなど考えもしない。
だが気弱さは本気で滲ませたから、ミサキには効果があったようだ。
「僕がお前のキョウちゃんに何が出来るって言うんだ」
ミサキが考慮し始めた。
優しいなぁ、ミサキ。
利用させてもらうよ。
「彼が別れたいと言ったなら、別れるか?」
ミサキは言った。
「ああ」
これは嘘じゃない。
言ったらね。
「誓えるか?」
さすがミサキ。
縛りを入れてきた。
オレたちアルファは「誓い」に縛られる。
それをミサキは知ってるらしい。
オレたちはアルファは化け物でクズだがだが、行動が本能に縛られてもいる。
アルファ達が公開したくない事実の1つだ。
「誓うよ。キョウちゃんが別れると言ったら別れる」
渋々誓った。
だが。
上手く行くはずだ。
「お前のアルファに内緒で来いよ」
そこは言っておく。
「ちなみにお前のGPSはピアスだと思うぞ」
と教えておく。
電話の向こうでミサキが絶句していた。
おそらく自分で買ったピアスなんだろう。
贈られたモノは身に付けてないはずだから。
まあ、やり方は色々だからな。
無言で電話は切れた。
さて。
上手くいくと信じてる。
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