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第61話

それでも育ちが良く、人を疑うことを知らないミサキはオレがその隣りに行くまで逃げようともしなかった。 まさか、と思っていたんだろ。 残念だ そのまさかだろ。 だがオレはヒョイとソファからミサキを抱き上げた。 そのまま肩に担ぐ。 そしてようやくミサキは正しい理解をした。 「何するんだ!!止めろ!!」 ミサキが暴れるが、まあ、こんなもん魚が跳ねてるみたいなもんだ。 オレはそのまま平然と片腕でミサキを担ぎ、そして、それをニコニコして見ているキョウちゃんのところへもどり、もう一つの腕でキョウちゃんの腕をとった。 「キョウちゃんもおいで?」 オレは優しく言うとキョウちゃんは大人しく手を引かれついてくる。 「何をする!!」 ミサキが暴れてる。 だがオレ達アルファの腕力にオメガが逆らえるわけがない。 オレは答えの代わりにドアを空けておいたままの奥の部屋へと入る。 そこにはベッドがある。 アルファようの大きなベッドが。 ミサキが察する。 分かってはいたはずだけど。 「なんで!!」 ミサキが言う そこはミサキには分からない話だから当然だ。 「前にお前をイカせた理由と同じだよ。キョウちゃんが本当のことを言うためにお前に触って、イかせ続けた。今度もキョウちゃんが自分から出てくるまで、お前とヤる」 オレは言った。 キョウちゃんは前にも逃げた。 その時はオレを恋人ではなく、弟だと思い込もうとした。 キョウちゃんの望み通り目の前でオメガを抱くことで、キョウちゃんの本音を引きずりだした。 キョウちゃんはオレがミサキを抱くのが嫌なのだ。 オレがキョウちゃんのものだと、キョウちゃん自身がそう思ってくれているから。 「前にもキョウちゃんの本音を引きずり出せたんだ。今度もキョウちゃんを引きずりだせるかもしれないだろ」 オレはそう言って、ベッドの上にミサキを下ろした。 キョウちゃんはそれを大人しくぼんやり見ている。 ミサキは恐怖に引きつった目でオレを見上げる。 「そんな適当な理由で・・・」 ミサキは涙ぐんでる。 可哀想だと思えたらいいのにな。 オレはアルファになった時、他人への思いやりはどこかへ行ってしまった。 アルファは自分のためになら何でもする。 いや、元々。 アルファになる前からオレは化け物だったのかもしれない。 オレはオメガより、キョウちゃんだけに執着しているのだから。 ミサキが抵抗しないのは無駄だからだ。 アルファに触れられたなら、オメガは可哀想に、どんなアルファが相手でも感じて欲しがってしまう。 それをミサキは良く知ってる。 そうやってあの男にレイプされ、オレにも身体を弄られた。 そして、番にさせられた時だってそうだったのだろう。 「なあ、ミサキ。お前だって、思い知らせてやりたくないか?」 オレは優しい声を出した。 オレだって無理強いはまあ、できればしたくない。 最終的には好きなようにさせて貰うが、出来れば合意がいい。 やさしく頬を撫でてやると、それだけでミサキはピクンと身体を震わせた。 可哀想なオメガ。 オレが相手でもこうなる。 「何を・・・」 それでも気丈にミサキはオレを睨みつける。 こういうところは嫌いじゃない。 オレはミサキは嫌いじゃない。 嫌われているがな。 「なぁ、アイツに好きにされて、番にまでされて。お前、アイツに死ぬまで縛られて。アイツを傷つけてやりたいと思わないか?いいチャンスだろ。お前が逃げたり浮気出来ないようにGPSまでつけられてたんだから。今ならアイツが最も嫌なことをしてやれる。アイツに復讐するチャンスだぞ」 甘く囁く。 この夜に復讐ほど甘いモノはない。 アイツはオレを殺しにくるだろうが、それは前から同じだし、アレはオレとは違って可哀想なくらいアルファだから、復讐のためにキョウちゃんを狙ったりしない。 何故なら。 アルファは誇り高いから。 オレの場合全ての本能をキョウちゃんへの執着が凌駕する。 ユキ先生もオレのこの執着を怖がっていたよ。 オレがアルファの本能を自己欺瞞的な方法で、回避している、と。 オレの場合。 自分の存在以上にキョウちゃんがある。 「なあ、ミサキ。アイツだけにその身体を喰わせてやらなきゃならない理由はお前にはないだろ?アイツにそんな義理が?お前はお前の好きにしていいはずだろ?」 ミサキに囁いてやる。 身体を弄り、感じさせ、欲しがらせるのは簡単だ。 アルファとオメガだから。 だが、ここは。 のちのちのためにも、同意はとっておきたかった ミサキが蒼白になってる。 そんなこと考えたことなかったのだろう。 犯され、逃げて、また捕まって(オレが渡したけど)今度は番にまでされて、飼われ続けたのだ。 誰よりも憎んでいるはずだ。 復讐。 復讐したいだろ? なあ、ミサキ。 「ミサキ・・・」 オレが耳元で囁くと、ミサキの身体がくたりとベッドに蕩ける 復讐は。 身体の欲望より。 甘い。 オレがゆっくり服をはいでも、ミサキはもう無抵抗だった。

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