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戯れの時間

「じゃあ始めて、蓮太郎」  ソファに悠然と腰掛けた鬼崎さんが俺に向かって静かに言い放つ。俺はおすわりの姿勢を取り、シャツの裾を握った。鬼崎さんからの射るような視線に羞恥心が煽られ、耳まで真っ赤に染まりながら、シャツをゆっくりと胸の上までたくし上げた・・・・・・。  マグカップを渡した日から一週間、俺たちのあいだでは大きく変わったことがある。  それは二人にとって暗黙の了解となった、『躾』と称した就寝前の触れ合いタイムだ。  この時間以外はこれまでのように健全でプラトニックな同居人に近い関係だが、俺がアルバイトから帰宅して夕食を取った後の数時間、鬼崎さんは俺の完璧なご主人様に変わる。 「あ・・・・・・あうっ・・・・・・」  見られているだけなのに、声が出る。  自分でもびっくりなのだが、鬼崎さんに見つめられるのが、俺の一番感じてしまう瞬間だ。  今俺はすっぽんぽんで、上半身も下半身もまっさら。首輪だけを残して服を脱ぎ捨て、何も身につけていない。その状態で足を開いてしゃがみ、両手を胸の前に垂らした『ちんちん』のポーズで『待て』をさせられている。 「まだ何もしてないのに嬉しくなっちゃった? 本当に蓮太郎は可愛いね」  鬼崎さんはほくそ笑み、いつまでも俺に触れてくれない。身体に注がれた視線ひとつで犯され、みるみるうちに呼吸が上がっていく。  はぁはぁと上下する胸の尖りがぷっくりと主張をはじめると、ピンク色に色づき、いじめてほしくて焦れてきた。 「・・・・・・くぅ・・・・・・ぅん」  空気が肌をひんやりとかすめ、見られている箇所がじんじんと痺れていく。 「駄目、もうちょっと『待て』だよ」  『待て』と言われたら、待つしかない。  自分で弄るのも、『待て』なのだ。疼いて疼いてたまらない乳首。ここ数日で男に可愛がられることを覚えたソコは、時間が経つごとに赤く熟れ、ピンと張り詰めて立ち上がっている。 「はあっ・・・・・・ううっ」  俺は口をだらしなく開き、暴れ回ってしまいたいほどの強い衝動を必死に押し留める。どんなに情けない顔をしていても、いっさい気にする余裕などなかった。  懸命に耐えていたその時、嬉しそうに鬼崎さんがソファから立ち上がり、俺の頭を撫でた。 「よし、記録更新だよ。いい子だね。この前の三十分を超せた」  もう少し頑張れそう? と微笑まれ、さすがに力無く首を横に振って見せる。 「ははっ、分かったよ。偉かったね。触って欲しい時はどうするんだっけ、蓮太郎?」  待ち望んだ言葉に俺はお腹を見せてごろんと寝転がった。ひっくり返った蛙のように両足を大きく開き、あられもない姿でご主人様におねだりする。 「はっ・・・・・・はっ・・・・・・あぅん」 「よし。よく出来ました、ご褒美だよ」  鬼崎さんは俺の上に覆い被さり、鼻先を乳頭に近づけた。くすぐったさに腰を浮かせると、鼻先は唇に変わり、いやらしい舌の動きを見せつけられる。 「ほら、ちゃんと見てて、いくよ」 「・・・・・・ひあ・・・・・・ぁああ!」  ちゅううと唇が吸い付いた。口に含まれ、俺の乳首はころころと飴玉みたいに押し潰される。  痛いほどに張り詰めたところで、やんわりと歯を立てられ、思いきり腰がのけぞって震えた。 「ひううッッ!」  歯を食いしばらないと耐えられない快感だった。  ———アッ、そこ・・・・・・。  鬼崎さんの手が下へ伸びる。陰嚢を柔やわと揉みしだかれ、焦ったくて切ない刺激が腰全体に広がった。これじゃイケない。俺はぱんぱんに勃起したペニスを鬼崎さんに擦り付けた。   「そっちも触って欲しいの? ん?」  もぅ、意地悪だ。すぐに触って貰えなくて目に涙が滲む。   「・・・・・・くぅん」 「はは、わかったよ、ごめんね蓮太郎」  鬼崎さんは陰嚢から手をずらし、俺のそれを優しく包み込んだ。上下に一回扱かれると、びくんっと腰が大きく跳ねて、白濁がこぼれ落ちる。 「あーあ、またちょっと触っただけで粗相して」  咎める言い方に興奮が混じっていた。鬼崎さんの喉仏がごくりと動き、歪んだ表情で見下ろされる。 「可愛いけど、言いつけの守れないイケナイ子はお仕置きしようね」  鬼崎さんの声に俺の興奮も煽られた。 「・・・・・・やあっ・・・・・・ンん」  強めに乳首を摘み、ぐりぐり押しつぶされ、痛くて目から涙が溢れる。痛い・・・・・・、しかし、そう言えずに涙目で見上げるしかない。 「痛いの? でも痛くしてるからね、蓮太郎は痛くても感じちゃうんだから。ほら、ここは気持ちいいって言ってるよ?」 「アッ・・・・・・ん」  一度出しているのに、俺のペニスは首をもたげていた。先っぽの丸みを手のひらでこちゅこちゅと擦られ、すぐに達してしまいそうになる。 「今度はいいって言うまで、イッたら駄目だよ」 「・・・・・・ひぃぃ! ・・・・・・あっあっ!」  ご主人様の容赦の無い囁きに、腰が砕けた。男としての威厳なんて微塵もなく、俺は情けなくぴゅるぴゅると粗相した。そうすればご主人様は俺を叱る。けれど、その声は嬉しそうだ。俺は知っている。ご主人様は俺の痴態が大好きなのだ。  ・・・・・・ここまでにしようかとお許しが出たのは、それから一時間後のこと。汗と精液でベタベタになった身体を鬼崎さんに抱き上げられ、浴室に連れて行ってもらう。  触れられていた余韻が残る肌に温かいシャワーがかかり、俺の身体は敏感に反応を示した。 「・・・・・・ん・・・・・・」  ———気持ちいい。敏感な場所はとくに念入りに、皮や皺の間まで指が這う。わざとかと思うほど、丁寧に洗われる。 「駄目だよ。動かないでね、こうしないと洗えないから、汚いままだと病気になっちゃうよ」  そう言われても、気持ちいいものは気持ちがいい。 「んん・・・・・・んんっ・・・・・・」  心がふわふわとしてくると、鬼崎さんの名前が呼びたくなった。禁止されているわけではないけれど、恋人みたいに「名前を呼ぶ」ことで普通ではない関係が壊れてしまう気がするから、口を堅く結んで目を閉じた。 「さあ、終わったよ、偉かったね」  鬼崎さんの優しい声がして、シャワーのお湯が止んだ。ぺたんと浴室の床に座り、拭いてもらえるのを良い子で待つ。柔らかいタオルで包まれると、一気に身体の力が抜けた。  この時間はいつも心も感情も麻痺している。自分の感情に目をつぶったままで、俺は鬼崎さんに身を預けていた。

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