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ペアマグカップの行方

「ふぅ・・・・・・」  鬼崎さんの家の前に立っている。返せずに持っていた鍵を使ってドアを開け、久しぶりに家の中へ足を踏み入れた。鬼崎さんが帰宅する前の時間だ。  誰もいない静かな玄関。自分から出て行くことを決めた手前、のこのこと戻ってきたのが後ろめたい。なかなか靴を脱ぐ決心がつかなくて、玄関の先に入るのを躊躇ってしまう。  二十分かかりやっと靴を脱いだが、沿道をバイクや車が通るたびに、ドアが今にでも開けられ、しかめ面をした鬼崎さんが帰宅してくるのではないかと緊張した。  廊下を進み、懐かしい匂いを胸いっぱいに吸い込んで気がつく、何か違う。臭い? しかし異臭の正体が分からぬまま、リビングへ入り驚いた。あの綺麗好きで几帳面な男の家とは思えない。  空缶と瓶が床に転がり、脱ぎっぱなしのシャツが無造作に放ってある。  泥棒でも入ったのではと疑いたくなるような有り様。キッチンの流し台には汚れた食器が放置され、その中には自分があげた紺色のマグカップも含まれていた。  とにかく目についたものから片そうと、戸棚に近づき、あれと思う。ペアで買った自分のマグカップが無い。置いて行ってしまったから、処分して良いと思われたのかもしれない。それなのに鬼崎さんは、片割れを失くしたマグカップを一人で寂しく使い続けていたんだろうか。 「はっ、てことは」  もしかして、首輪も捨てられてしまったのではと思い立ち、胸がざわついた。  ゴミ袋を放り投げ、俺は二階に走った。  ドアを開けて安堵する。二階の俺の部屋は手付かずのまま、出て行った時と変わらない。机の上に置いた首輪は、ちゃんとそこに残っていた。 「良かった」  首輪を手に取り、迷わず首に付ける。  久しぶりの感覚。はたから見れば奇妙に思われる嗜好だ。絶対に変なのに、これがしっくりくる。それがたまらなく嬉しくて、「へへ」と笑ってしまう。 「さて・・・・・・」  首輪をつけたところで、腰に手を当てて唸った。サビにと急かされて、動物病院から真っ直ぐ来てしまったけれど、鬼崎さんとは上手く話し合えるだろうか。  バイト先二箇所には病欠の連絡済みだ、今日はもう何も予定は無い。話し合う時間はじゅうぶんにある。  だが勝手に出て行ったくせに、また勝手に上がり込んで、さすがに鬼崎さんも怒るのではないか。そう悩んでいるうちに、何か物音が聞こえた。 「えっ、なに?!」  物音は複数回、聞こえてきた。口を閉じて耳を澄ますと、壁や床に物がぶつかるような音のようだ。  まさか留守のあいだに泥棒が入った? リビングの荒れ具合は、本当に荒らされたものだったのか?  恐怖に震えながら武器になりそうな物を探し、整髪用のスプレー缶を手に取る。使えそうな物はこれくらい。深く息を吐いてから、足を忍ばせて部屋の前へ出た。物音が聞こえた方向はどっちだった・・・? 耳をそばたててゆっくりと進む。 「ここか」  突き当たりで足を止めた。そこは鬼崎さんの部屋の前。下へ降りるには俺の部屋の前を通る必要があるが、そんな足音はしなかった。つまり、鬼崎さんの部屋の中に泥棒が潜んでいる。  ごくりと唾を呑み、スプレーのキャップを外して右手に構えた。できる限り音を立てないようにドアノブを捻り、足元に視線を落としながら、少しずつドアを開けた。  息を止めて部屋の中に足を踏み入れ、だが人影は見当たらない。窓も開いていない。隠れられる場所はあまり無さそうな部屋で、唯一考えられそうなクローゼットは開けっ放し、スーツのジャケットは綺麗に横一列に並んでいる。  なんだ。聞き間違いか。ほっと胸を撫で下ろし、振り向いて仰天した。大声を上げそうになるのを、咄嗟に口を押さえてなんとか耐えた。 「・・・・・・誰か寝てる?」  ばくばくと心臓が鳴る。慎重にベッドに近寄ると、ベッドの上にはこんもりと山が出来ていた。明らかに人が入っていると分かる大きな盛り上がり。誰かなんて考えなくても一人しかいない。ベッドの主は真冬でもないのに、掛け布団と毛布を重ね掛けして細かく震えていた。  さらに顔を寄せると、ひどく酒臭かった。わずかに見えている鬼崎さんの額に手を当ててみる。熱い・・・。熱があるのに酒を飲んだんだろうか、そもそもいつから飲んでいたのか。仕事はどうしたんだろうか。ぐるぐると色んな疑問が湧いてくる。   「ねぇ、鬼崎さん。もしかして俺が居なくなったからこんなになっちゃったの?」  鬼崎さんの前髪を撫で、そっと問いかけた。苦しそうな寝息が聞こえて、胸が締め付けられる。  ———そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない・・・でも今はそういうことにしておきたい。  震えている鬼崎さんをなんとかしてあげたくて、布団の中に潜り込んだ。鬼崎さんの頭を胸に抱えるように抱き締めると、じわりと瞼が濡れてしまった。 「こうすると、あったかくて安心するでしょ。俺も熱が出て倒れたばっかりなんだ。一緒だね、俺たち」  抱き締めた鬼崎さんの身体があまりにも熱いから、釣られるように熱が上がっていく。同じ温度の肌と肌がぴったりと溶け合って、一つになったみたいに錯覚する。  この感じが好きなんだ。心地が良くなり、そのまま微睡む。その時、体温よりも少しだけ低い、ツルツルしたものに手が触れた。鬼崎さんの指に引っかかっている。俺は手を伸ばしてそれを取った。 「ああ、もうっ、何でこんな物を手に持って寝てるんだよ」  鬼崎さんが抱えて寝ていたのは俺のマグカップだ。  酔っ払った人間のやる事など本気にすべきじゃない。でも、落ち着きがあって大人で、隙のない男のくせに、実は寂しがり屋で意地らしい、そんなこの男が愛おしい。死んじゃうくらいに愛おしい。 「鬼崎さん、一人にしてごめんね。ほんとにごめんね」  目を覚ましたら必ず気持ちを伝えたい。鬼崎さんのおでこに優しくキスを落として、瞼を閉じながら固く誓った。  目を覚ました時、自分が抱いていたはずなのに、なぜか鬼崎の腕の中にいた。そういえば、同じベッドに入ったのは初めてだった。緊張しながら、身体を起こす。眠っていた時間は一時間にも満たない。もうすぐ十九時を回るが、部屋の中は眠る前と変わらない明るさだった。  鬼崎さんからは、まだスゥスゥと静かな寝息が聞こえていた。そっと額に手のひらを当て、起こさないようにベッドを抜け出す。一階でタオルを濡らして部屋に戻り、鬼崎さんの額にそれを乗せ、また一階に降りた。  俺は腕をまくり、リビングとキッチンを片付けをはじめた。散らかったゴミを分別して袋に入れ、服を洗濯機に放り込み、食器を洗って棚にしまった。棚の一番手前にはマグカップを二つ並べて置き、満足して微笑む。   「蓮太郎」  その声に振り向いた。濡れタオルを握り締める鬼崎さんの顔を見て、喉が引き攣るような感覚を覚える。 「どうして家にいる? なんで帰ってきたんだ」  久しぶりに顔を合わせたのに、ひどい質問攻めだ。素直に歓迎されないだろうと予想していたけれど、「おかえり」くらいはあってもいいのに。  ———俺のことを想って言えないの? それとも、言いたくないの?  もし「言いたくない」だったとしても、もう逃げたくない。俺は口を引き結び、鬼崎さんの手を取ってソファに座らせた。 「ちょっと待ってて、コーヒー入れてくる。あっ、その前に」  鬼崎さんの額に手をやる。 「まだ少し熱がありそうだけど平気?」 「ああ・・・・・・」  あからさまに目を逸らされると、やっぱりキツい。でも負けるな。俺は俺に気合いをいれる。 「うん、分かった」  そして立ち上がり、キッチンに向かった。初めて触るコーヒーメーカーで入れ方が分からず、セットするまでに手間取った。その間、鬼崎さんは黙り込んだまま、眉間の皺が二倍になったんじゃないかと思うほど難しい顔をしていた。  ———負けない。逃げない。  俺は紺と赤の揃いのマグカップにコーヒーを注ぎ、テーブルに運んだ。鬼崎さんは戸惑うように手を伸ばす。一口飲んで、わずかに顔が綻んだのが見えた。 「甘い」 「鬼崎さんがブラック苦手なの、じつは知ってました」 「・・・・・・そうか」  話し出すキッカケになればと思ったが、鬼崎さんの反応は薄い。ふたたび黙り込まれ、微妙に和んでいた空気がピリピリと凍りつく。  ここは思い切って、小細工なしでいくしかない。  俺は姿勢を正して座り直した。心の中でゆっくり三秒数えて、大きく息を吸う。息を吐き出すのと一緒に、言葉を紡いだ。 「鬼崎さん聞いてください。俺はあなたが好きです。勝手に出て行ってしまったけれど、また一緒に暮らしたいと思っています。近づくなと言うのなら、その通りにします。だから・・・・・・またここに住まわせて下さい、お願いします」  一息で言い切り頭を下げたので、鬼崎さんが今どんな顔をしているのか見えない。見たい。見たくない。反応がこわい。 「・・・・・・君は俺が恐ろしくないのか?」  俺は身体を起こした。間を置き、自嘲気味に笑った鬼崎さんの顔が歪む。 「あの時はびっくりしたけど、今は恐ろしいなんて思いません」  膝の上の拳が震えた。ここで引き下がったら、今度こそ鬼崎さんとの関係は切れてしまう。たとえ目を合わせてくれなくても、逸らしたくない。 「鬼崎さんは俺のことを考えてくれているんだよね? でもその心配は必要ないよ。鬼崎さんが俺を拒む理由はなくなったんだよ?」 「・・・・・・だ」 「え?」  聞き返すと、鬼崎さんの顔が苦悶に歪む。 「君のその顔が・・・・・・」  そこまで言い、言葉が切られた。葛藤するかのように唇を震わせ、立ちあがろうとする。 「待って、俺の顔がなに?」  俺は鬼崎さんの手を取り、立ち上がった。手を握った瞬間、鬼崎さんの肩が強張った。不自然に背けられた二つの目が泳いでいる。額を流れる汗は発熱からくるものではないだろう。  でも大丈夫、胸を高鳴らせているのは俺も同じ。男の身体は笑っちゃうくらいにわかりやすい。明らかに欲情されているのに、気がつかないはずがなかった。 「俺、期待してもいい?」  恐る恐る、鬼崎さんの頬に手を添えた。 「逃げないなら、このままキスしちゃうから」  上目遣いで囁けば、鬼崎さんが拒めないのを知っている。自らの確信犯的な行動に呆れながらも、久しぶりの鬼崎さんの高ぶる顔、俺も興奮が隠せなかった。 「鬼崎さんの唇、あっつい・・・・・・」  唇を重ねた後に、鬼崎さんの瞳を見つめた。 「うれし、目、やっと合ったね」  唇を寄せると、またキスが始まった。激しく求められる口付けに、身体の芯がちりちりと炙られる。感情の赴くままに唇を食み、口内を舐め回す舌先を夢中になって追いかけ、混ざり合った唾液が淫らに音を立てる。 「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・鬼崎さん・・・・・・ごめんなさい・・・・・・いけないペットでごめんなさい」 「蓮太郎ストップ、それ以上言われるとヤバいから」  耳元で呟かれた素の声に、思わずドキッとして肩を震わせた。 「いけないペットなんかじゃないよ。可愛すぎて、止めてあげられなくなる」 「止めなくていい・・・・・・っ。鬼崎さんの全部を受け入れたい」  自分で驚くほど甘えてねだる声だ。息を呑む音が耳元で聞こえて、鬼崎さんの腕にいっそう強く力が籠る。ギュッと引き寄せられて、鬼崎さんの心臓の脈動が俺の身体にも響いてきた。 「くぅん」  頭がぼおっとする。意識せずとも、俺はちゃんとペットらしく鳴いていた。大好き、大好き、あなたが大好き。それだけを伝えたくて、鬼崎さんの首筋をぺろぺろと舐め、チュッチュッと何度も吸った。 「蓮太郎・・・・・・本当にいいんだね?」    鬼崎さんに顎を上げられ、念押しをされる。俺は答える代わりに、鬼崎さんの口をキスで塞いだ。 「んっ・・・・・・ふうん」  そのキスがスイッチになった。気づけば少しずつ後ろに追い込まれ、ソファに仰向けに倒されていた。  服を捲り上げられ、乳首に柔らかい唇が触れる。チュウと性急に吸い上げられ、敏感なそこは鬼崎さんの舌の上でコロコロと遊ばれる。 「あっあっ・・・・・・きもち・・・・・・い」  途端に乳首を強くつねあげられ、悲鳴を上げる。 「なんで、痛いよぉ」 「犬は犬らしく鳴かないとダメじゃないかな?」  冷たい視線と一声に、下半身がじわりと熱くなった。ぽろっと涙が溢れてしまったが、「返事は?」と囁かれ、慌てて「わん」と返事をする。 「蓮太郎は、どこをどう触られるのが好きだった? 忘れてしまったから、教えてくれ」  意地悪な質問だ。答えられないでいると、乳首から指と唇が離れてしまった。  先ほどギュッとつねあげられたばかりで、両方の乳首がジンジンと痛む。痛みは痺れに似ていて、痺れたままで放置されると、今度は疼いてくるのだと教え込まされている。  その感覚が身体に蘇り、余計に焦ったくて、舐めるような視線に腰をくねらせながら切なく鳴いた。 「・・・・・・あぅん・・・・・・」 「答えにはなってないけど、よしよし、いい子。いっぱい触ってあげよう」    ぷっくりと尖った乳首が弾かれ、腰まで響く快感に呑まれた。俺の下半身はくっきりと反応を示していて、ズボンを押し上げている。飴玉でも転がすように両方の乳首に愛撫を繰り返され、ペニスが先走りでぐちゃぐちゃに濡れているのが分かってしまった。パンツの中で先端を擦りつければ、すぐにでもイッてしまいそうだ。 「蓮太郎のここは甘い。砂糖がまぶされているみたいだよ・・・・・・ふふ、それいいな、実際に今度やってみようか」 「あん、ああっ」  鬼崎さんは夢中で俺の乳首を舐める。ペチャペチャと音を鳴らしながら、時折、甘噛みすることも忘れない。舐められすぎてふやけたピンクの粒に、容赦なく歯を立てられ、たまらずに鬼崎さんの肩を強く掴んだ。 「・・・・・・ひぁ・・・・・・うぅ」 「ふ、どうした?」  分かっているくせに、鬼崎さんは俺の腰の動きを見て笑う。擦りつけすぎたせいで張り詰めた股間にはシミができ、恥ずかしい。けれど、もっとして欲しいという気持ちと羞恥心が交互に込み上げる。  鬼崎さんの手は肌を縫い、下へ伸びた。何の前置きも無しに股間を強く握られ、痛みと驚きに腰が跳ねる。 「うわっ! ・・・・・・うあっ、うそぉ」  与えられた痛みに俺は達していた。ズボンと共に粘つくパンツを抜き取られ、下半身をあらわにされる。  部屋の電気が付けっぱなしだったと後悔した。仰向けの股の間で滑稽に揺れるペニスの先は白く汚れてドロドロだった。隠そうとしたが、先読みされて腕を掴まれる。 「隠したら駄目だよ、出したところをちゃんと見せて。蓮太郎は、この体勢が好きだったよね?」  鬼崎さんは脱がしたズボンを使い、俺の手首を縛った。両足を思い切り開かされて、股関節が痛い。首を横に振りたいけれど、振ったらお仕置きがまっている。 「あれ? 蓮太郎のここは元気だ。いっぱい溢れてくるね。お仕置きして欲しくなっちゃった?」  指先で先端の雫を掬い上げられ、鬼崎さんは滑り気を帯びた指を俺の前に見せつけた。 「・・・・・・ひ、あう」  指を口の中に突っ込まれ、青臭い自身の味にたまらず顔をしかめる。 「自分で出したものでしょ、ちゃんと舐めて。これは命令だよ、上手にできたら射精させてあげる」  喉奥まで乱暴に刺し込まれ、胃の辺りから気持ち悪さが込み上げる。それでも命令通りに指を咥え、精液を舐めとった。苦しくて涙が出るたびに、鬼崎さんの瞳が嬉しそうに細められ、悦楽をたたえて怪しく光る。 「いい子だね、蓮太郎。ありがとう」  たっぷりと奉仕させられたのち、濡れそぼった指が引き抜かれた。その指で陰嚢の下を撫でられ、尻の穴が反射的にキュッときつく閉じられる。   「ひぃっ」  穴の周りを優しく指が這い、はじめての感覚に腰が浮いた。逃げようとする腰を抱えられ、見上げる位置にあった鬼崎さんの頭が股の間へ移動する。「まさか」と思うよりも早く、勃起したペニスをパクりと咥えられた。窄まりのヒダを解しながら前を口で扱かれて、気持ち良くないはずがない。 「ンア・・・・・・うああ・・・・・・」 「蓮太郎のここ、ヒクヒクしてる」 「ん、う、んうう」  わざと口に出され、耳までカッと熱くなった。まだイかせないようにしているのだろう、口淫の刺激が緩やかになり、穏やかな快感の波に揺られていると、指が一本後ろの入り口に潜り込んできた。 「あ! ううっ・・・・・・」  痛みはないがそれだけでも苦しい。 「大丈夫? 思ったより狭いね」  ぐねぐねと腹の中で動いていた指は一度止まり、ペニスがまたヌルりと生温かくなる。くびれに舌を這わされ、先端をきつく吸い上げられると、爆発しそうな気配に腰がくねる。圧迫感が和らいだところで指が動き出し、中を広げるようにかき混ぜられる。  なんとも言えない気持ち悪さに慣れたころ、ある箇所を押し上げられ、身体に電流が走った。   「ひっ?! んやああっ!」  みっちりと埋められた指がそこを往復するたびに快感が湧き上がり、我慢できずに精液が噴き出す。  どこをどう触られているのかも分からない、前も後ろも一緒に刺激されて、俺は頭を振り乱して喘いでいた。  前を弄られるのとは別の、腰が砕けそうな刺激に震えながら身悶え、出したばかりのペニスがまた膨らみ出し、すぐに強烈な射精感が襲った。 「あっあっ・・・・・・やあっ・・・・・・やあっ!!」  自分では止められない快感に嫌々と首を振る。 「蓮太郎、気持ち良さそう、指増やすね」  腹の中を蹂躙する質量が増える。弱い場所をぐりぐりと責められ、内側から快感が押し出されてくる。 「う、ん、あああーーーー!!」  背中をのけ反らし、精液が勢いよく放たれた。余韻でビクビクと身体が痙攣する。いっぱい出したのに、熱がいつまでも引かない。  もっと、もっと・・・・・・と、俺は鬼崎さんの股間に目を向けていた。力強く隆起した鬼崎さんのモノ、それが欲しい。  拘束されて動けないため、届かない舌を懸命に伸ばして鬼崎さんを求めた。 「蓮太郎は欲しがりだね、ほんと可愛い」    手首の拘束は解かれ、身体がうつ伏せにされる。高く腰を上げた姿勢で、尻の穴に熱いそれが押し当てられた。入り口は柔らかく開き、鬼崎さんの充溢を受け入れる。 「ああっ・・・・・・」  入ってくる。身体がブワッと熱を帯びた。奥に腰が進められ、中のものが進むごとに圧迫感で汗がじわりと吹き出した。鬼崎さんはゆっくりと全てを埋めてから、大きく息を吐いた。 「ぜんぶ入ったよ」  ぐっと増した中の体積。指とは比べられないくらいに、ずっとずっと苦しくて、動かれなくても正直辛い。内臓が押し上げられて吐きそうだけど、後ろから抱きしめられて、中も外も鬼崎さんの体温でいっぱいで、腹の奥がジンと痺れた。 「蓮太郎の中、キュウキュウって締め付けてくる。動いていい?」  少しずつ腰が揺さぶられる。中が押し広げられ、鬼崎さんのペニスが出たり入ったりしている。たくさん触ってもらったおかげか、不快感と痛みぎ気持ちよさに変化してきた。 「んうう・・・・・・んああ」  俺の喘ぎに応えるように、しだいに律動が激しくなった。強く腰を打ち付けつけられ、一番奥に切っ先が擦れると、俺の身体は気持ちがいいらしい。  たらたらと精液をこぼし、ソファの表面にしがみつく。快感の波はどんどんと大きくなり、食いしばった歯の間から嬌声が漏れた。 「前も触ってあげるね」  鬼崎さんの手が腹に回され、ペニスを握られた。抵抗できるはずもなく、後ろを貫かれながら、前を弄られて、気が変になりそうなほど気持ちが良い。  またあの感覚・・・・・・何か出そう。もう駄目、漏れちゃうっ。その瞬間、頭の先から爪先まで、ぴぃんと張り詰めた。 「あああっ・・・・・・あああっ!!」  何度目かも分からない射精。尿でも精液でもない透明な液体が先端から吹き出し、足腰に力が入らなくなる。  しらむ意識の中で仰向けに転がされ、見下ろしてくる鬼崎さんと目があった。 「まだトぶのは待てだよ、蓮太郎、『待て』」  ゾクゾクと、ご主人様の命令が耳に響く。俺は自分で足を大きく広げ、うっとりと涎を垂らしてうなずいた。

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