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第3話

…………… 空気が悪い 剣呑な雰囲気である ヒスイと共に着いた部屋の扉の前にいる僕たちにも 部屋の中の嫌な圧を感じる 「…なんだよこれ」 「…し、しらないよ」 訝しむような顔をされるが僕にだってわからないのだから、仕方ないでしょ? わざわざ虎の尾を踏むようなことをしたくは無い …. 音を殺して、ゆっくりと扉を開ける 隙間から、中の様子を窺う算段だ 光が隙間から漏れて一瞬眩しさに眩む 何度か瞬きをして慣らす よし、大丈夫 黙って見つめていたヒスイも眉根を寄せながらも 真似をして覗く 僕より大きいので上だ 悔しくは、ない あれ 「…何も見えない」 眩しかったのに暗くなった ?…… 視線を上にすると既に離れていたせいで視線が衝突する 「ふぁ!」 「何をしているんです?」 できた隙間から冷徹な目がこちらをみていた ユダでした 「いつまでも部屋に入らないので何事かと思いましたよ」 丁寧に扉を開けてくれながら言った 「えぇと、まぁ…」 下手な誤魔化しをして入室する ヒスイは何食わぬ顔をしていて既に性格がわかった こいつは悪戯に誘ったくせに見つかったら真っ先に消えるタイプだな 睨みつけるも欠伸をして気にしていないヒスイ 「遅かったなセウス。おかえり」 カチャンと皿にティーカップを置いてログナスが言った 「うん。ただいま」 あの重苦しい雰囲気は霧散していて、勘違いかと思うほどだった 「今お茶をお淹れしますね」 「あ、ありが…」 視界の端、というか思いっきり存在していたのに僕は気付けなかった 「シ、シルヴァ!?さん!」 思わず呼び捨てにしてしまう所だった 窓際に立って大きな置物の様に立っていた 確かにここは銀冠の騎士団の本拠地だけど、大物にその日に会えるとは… 彼がこの重苦しい空気の要因だったのか ログナスが珍しく毛嫌いしてたからなぁ 基本無関心なのに 「お久しぶりです」 ピクリとも動かなかったのに綺麗にお辞儀をされ 僕も慌てて頭を下げる 「お、お久しぶりです」 そういえば、以前寝てしまった僕を運んでくれたらしいしお礼を言えてなかった 「あの」 「はい」 ……視線が怖い 「以前、運んでくれたと聞きまして、その際はありがとうございます」 「……いえお気になさらず」 「……へへ」 空気に耐えられず変な笑い声を出してしまった 後ろでヒスイが笑っていて既に殴りたい気持ちだ 「セウスが怖がっているだろ」 僕の肩を後ろから掴んで離される ログナスが僕の後ろから胸に寄せる様にしてシルヴァを睨みつける 「…申し訳ございません。では私は失礼させて頂きます」 また一礼して シルヴァはヒスイを一瞬見流すと退室していった 「あっ、僕失礼だったかな…」 彼は何も悪いことをしてないのに勝手に臆して 不快に思っただろうか…… 「構わんだろ」 ログナスがそう言い放ち僕を先導してソファに座らせられる 前ではヒスイが足を組み勝手に僕に出されたお茶を飲んでいた ユダが横目で冷たい視線をヒスイに放ちながらも新しいお茶を僕に淹れてくれた ドカンッ!! 「おわッ!?」 爆発音が響いた 「な、何事なの!?」 慌てて僕はログナスに捕まる 彼はくっつく僕を宥める様に頭を撫でる 「おー派手にやってんなぁ」 棒読みで目の前のテーブルの皿の上に置かれたクッキーを取ってサクサクと音を立てて食べながらヒスイが言った 「は、派手?」 「おう。いつものことだから気にすんな」 ズズズと音を立ててお茶を飲む 行儀悪いな 「本当に?」 今も先程では無いが、戦闘音が響く 少し離れた先だ 「大丈夫だろ?こっちまで来ないと思うぜ。あいつらだってわかってて騒いでんだろうし、隊長のコレクション壊したら泣くのはあいつらだし」 知っらねーとケラケラと笑う どんな状況なのか、よくわからないけど安全ならいいや うん、そう思っておこう 隊長?隊長ってシルヴァだよねどんなコレクションなんだろ ちょっと気になる 「むぐっ!にゃにするのしゃ!」 「変なことを考えていないか?」 綺麗な顔を近づけルビー色の瞳で覗き込むログナスに 僕は両頬を片手で掴まれて抗議するもダメージは与えられなかった 「か、考えてません」 「…ならいい」 優しく頬を撫でられゾクッとした刺激を感じたがそれを誤魔化す様に顔を振って払う 「で、僕たちはこれからどうすればいいの?」 「坊ちゃんがこれから過ごす寄宿舎のお部屋には荷物は届いているそうなので夜は荷解きですね。それまでは観光するも学校施設を見て回るのもお好きな様に」 淡々とユダが説明してくれる 「使用人どもの宿舎も隣接してあっからな。行けばわかんだろ」 「そっかぁ。なら安心だなぁ」 「ほんとお貴族様の坊ちゃんだなぁあっ、王子だっけか」 「そうだけど、文句ありますー?」 「いえいえ滅相もございません」 小馬鹿にする様に嫌に丁寧に言われる 手慣れてるな 「で、どうすんだよ?俺も暇だし案内ぐらいしてやんよ」 「それ「それは結構だ」」 返事を返す途中で遮られる こんなことばっかりされる気がする 結構傷つくよこれ 隣のログナスがヒスイを一瞥しながらそう言った 「お前に言ってないんですけど」 「問題はない。セウスのことはわかっている」 当たり前の様に言い放つ 「会話になってなくないですか?俺はそこのセウスに言ってんだけど」 「馴れ馴れしく呼び捨てにするな」 「あぁ?なんで俺がお前に指図されなきゃなんねぇんだよ」 「指図では無い。確定事項だ」 「うっざぁ。そんな態度だと坊ちゃんに嫌われちまうぜ。関白宣言の自己中とかな」 「…そんなつもりはないし、セウスの意思は尊重している」 「ハッ、どうだか」 「…何が言いたい」 け、剣呑な雰囲気第二回戦ですか? ユダに止めてほしくて目で訴えかけるもクッキーを黙々と食べていて気づかない 主人よりお菓子かこのやろう! 「ちょっとばかし地元でチヤホヤされて調子に乗ってる騎士様だからって、セウスに上から目線で押し付けていたら可哀想だと思ってよぉー」 「だから貴様がセウスを呼び捨てにするな」 「それしか言えねぇのか?ほんとシルヴァの旦那とそっくり」 キィン…… 青い光を反射する剣先がヒスイの喉元に突きつけられる だがヒスイは動揺せず冷たい、深緑の瞳でログナスを見る 「俺に剣を向けるってこと、わかってねぇわけじゃねぇよな?」 「……」 「だんまりか?この国を、銀冠の騎士団を敵にするってことの重さわからねぇわけじゃねぇよな。俺はいいぜ。たかが馬鹿が一人、死ぬだけだ」 当然の様に言い放つ 「…俺は、負けない」 「お気持ち聞いてるわけじゃねーぞ。今ここには一席と他数名の騎士がいる。そして隊長だ。確実に死ぬぞ」 「…」 「えっ」 緊張感で張り詰める部屋の中で僕の声が響く 「ヒスイ、騎士だったの?」 「「……」」 「………まじかよ」 ポカンとした顔で見つめられても、知らなかったんだもん 「チッ、…まぁしゃーねぇのか。基本的に騎士団の連中は個人でしか動かねぇし顔を見せねぇ」 「いや、そうじゃなくて…」 ついそう言ってしまった 「なんだよ」 誤魔化すのを許してもらえなさそうな声音だった 「……お、怒らない?」 「怒るぜ?」 「はへぇ」 「ふざけてねぇでちゃんと言え。泣かすのはしねぇからさ」 安心できないんですけど 「…け、結構、子供でもなれるんだなって」 「そんなことかよ。銀冠の騎士の選定基準に年齢なんて関係ねぇ」 「そうなの?」 「そうだよ。‥‥正確には俺は」 「ん?」 「なんでもねぇ。だから俺様は選ばれし騎士なんだよ!黒騎士なんて目じゃねーぜ!」 誇らしげにそう言った 「ふん。比べる必要などない。守るべきものを守る。それだけが騎士の遵守すべき道理だ」 「お堅いねぇ。モテねぇだろ」 「興味がない」 「ケッ、そこまで一緒かよ」 その言葉にまたログナスは冷たく睨むがヒスイは無視をする 「あー飽きた。観光がてら遊ぼーぜ!」 「え?いいの?」 「いいだろ別に。隊長に任せられてんだそんぐらいサービスしてやんよ」 感謝しろよなってウィンクされる ムカつくが様になっている 「いらん。俺が「お前はダメだぞ」」 「何故だ…」 「滞在許可証に不備がございます」 「何を言って…」 「なので、現在貴方様は不法入国となっております」 突然受付の人の様に嫌に丁寧に接し始めた 「ふざけるな。俺はこの国の学校の卒業生だろ」 「関係ございません。そもそも卒業資格はあっても、学ぶべきことはもうない。とか言って勝手に出ていったアホに配慮するべきことなど、ありませんね」 え?飛び級で卒業したんじゃないの? 「あれは、時間がなかったんだ」 「へぇー。わざわざ試験のために隊長が時間をお作りなったのに、逢瀬のためにドタキャンした馬鹿に情けは必要ありませんよね。恩知らずが」 「クッ…」 悔しそうに歯噛みするログナス 誰に会っていたんだ……… 「仕方なかったんだ。誕生日に間に合わなくなってしまうだろ」 誕生日? 「あぁ、あの日ですね。魔導馬車が自壊するほど魔力注がれて急いで来方なさった日ですよね。あの年のお誕生日会には来れないのかと思っていました」 お茶でお口をリセットしたユダが言った それって、僕の誕生日のこと? 申し訳なさと、嬉しさが滲む 「そうだったんだ」 「だから仕方ないだろう」 「知らねぇよ!関係ねぇわ!」 ドスンと床を踏み締めてヒスイは言ったナイスツッコミ 「なので、強制退去か再試験ですね。一応情けで、休学扱いらしいし」 面倒臭そうに言い放つ 「わかった。ならすぐに済まそう」 待っててくれとログナスが僕に言う 「それは無理じゃね」 呆れた様な態度だ 「何故だ?確か卒業試験内容は秘密だが、例年なら担任か主任教師と一騎討ちだろう?」 「まぁそうだな。だがなお前は別だ」 「別?」 「そう別。飛び級だし少なからずお前は迷惑をかけた。よって特別処置とした」 「……それはなんだ」 「滞在期間中の奉仕活動、それと騎士との一騎打ちだ」 「一騎打ち?」 つい言葉を挟んだ 「それってどこの騎士と?」 ヒスイはニヤッと笑う 「どこのって、ここは騎士庁舎だぜ?」 「えっ!?銀冠の騎士と?」 それはいくらなんでもログナスでも厳しいはず 「問題ない」 迷いなく言い放つ 「だ、ダメだよ!いくらログナスでも相手が悪すぎる!」 僕の言葉にログナスはなぜか嬉しそうに微笑む 笑ってる場合か! 「心配してくれるんだな」 「当たり前だよ!」 憤慨する僕と反対に穏やかなログナス 「…イチャつかねーでもらえます?」 呆れた様な声でそう言われ 僕はそそくさと身を正す 「一応、救済措置として大型モンスターの討伐とか瘴気発生地の原因駆除とかあっけど」 「それもやってやる」 「大盤振る舞いだな」 「些事だ」 「言うねぇ。じゃ騎士は指名させてやんよ」 ヒスイは不敵に笑う 「第一席、二と三、四と六あとは、知らねぇな。まぁ他は碌でなしばかりだし殺されねえだろうけど…」 「けど?」 「第二席はやめとけ。確実に殺される」 「えっ」 「…」 ふざけている様子はなかった 卒業試験で殺されるって… 「そんなに、強いの?」 「まぁ強いな。てか弱いなら俺が殺してる」 当たり前の様に告げる 「性格的にだな~。お前、あいつに少し似てるし機嫌わりーから普段なら半殺し程度だろうけど今は、殺されんじゃね?」 サクッとクッキーを齧って言う 「気分でそんな…、や、やめとこうよ」 「そうだな逃げていいんだぜ」 「逃げない」 即答だった 「……その、席順って強さ順なの?」 その質問に嫌な顔をした後、不貞腐れた様にヒスイは言う 「違う。はず……」 騎士本人でもわからないのかな 「隊長が決めてんだよ。お前は何席だぁ的なー」 あと、と付け足す 「席順は他のやつに聞かねーよーにな。気にする奴は気にしてるし、気にしてねー奴は全く気にしてねーからな」 「そうなんだ。因みにヒスイは……」 「聞かなきゃわかんねぇか?」 暗い瞳で睨まれ僕は黙る 「じ、じゃあ誰がいいんだろ?てかログナス一騎討ちはやめとこうよ」 「いや、いい機会だ。ここの騎士どもがどの程度の腕前か知れるからな」 …見た目と違って脳筋なんだもんなぁー 「へぇ、言うじゃねぇの」 不敵に笑う みんな脳筋、平和的にね 「因みに、…第六席は」 「俺だけど」 「へ、へぇ~」 藪蛇でしたか 「俺はパス」 「え?」 「オフの日にやってられっかよ。俺は隊長優先なの!こいつに時間使いたくねぇーの!」 子供の様な口調である 「さ、さいですか…」 「大丈夫だお前に用はない」 「はぁ?」 苛立った声を出す いちいち煽る様にしか言えないのかな? 「俺は一席に挑む」 ログナスは決意を込めた様に言い放った ▼ 「フフフ…。シルヴァに挑戦者なんて、何年ぶりだろうね」 「そうですか…」 軽快に笑うサイファー 王城内にある訓練場という場所に連れてかれて白い彫刻の様な建物の中を案内されるとそこには開けた、闘技場の様な場所があった そして見下ろせる中央の所に移動。テーブルと椅子が用意されていて観戦できる様になっていた そこで既にサイファーがお茶を飲んで待っていた その隣には立って側に控える様に立っているシルヴァさんがいる 「連れて来ましたよ」 「お疲れ様。と言っても早い決断だったね。当日とは…」 フフフと笑う そして二人が下がり闘技場の広場で向かい合う こちらまで緊張感が伝わる ただ一人呑気に笑っているサイファーに僕は毒気を抜かれる 「君たちも座りなよ」 「すみませんお誘い嬉しいですけど、俺たちは後にします」 「!何を勝手に」 ユダの肩に腕を乗せ馴れ馴れしくした後ヒスイは耳打ちした 何を話しているのだろう 嫌そうな顔をしたユダが真顔になり無言でヒスイについて行ってしまった 「……」 微笑むサイファーとまた二人きりになってしまう 「心配かい?」 「まぁね…」 そりゃ心配さ…我が国では最強のログナスでも相手が 世界の英雄で伝説がいくつもある人物だ 心配にもなる 「彼なら大丈夫さ。シルヴァ相手なら殺されはしないよ。きっと」 不安なんですが… 「今までシルヴァさんに挑んだ人は…」 「今の銀冠の騎士団員以外だと、いないね」 そりゃそうだよね 「そもそも普段銀冠の騎士に挑む資格なんてないですし、相手にしません」 「そうなの?ならなんで今回は」 「興味だよ。今後必要になるかもだろう?」 それは、僕の復讐の為ということだろうか ログナス自身が今後どう強くなるか、どこまで強くなるか を見定めて今後に役立てようというつもりなのかもしれない 「使えない様なら、盤上から消えてもらうからさ」 「!?」 「嘘だよ。フフ、ただ邪魔になったら君も困るだろう?」 「じ、邪魔って」 「少なからず彼は強い。それは君が一番知っているだろう。だから今後彼がどう選択するか、それ次第で決めなければならない」 「…」 「意地悪で言っているわけではないからね」 「それは、わかっているよ」 一度目の人生では敵対していた そもそも、僕自身が人間不信となって対話を拒絶していた …僕が、悪かったんだ 「そろそろ始めようか」 そう言ってサイファーは席を立つ 見習って僕も同じ様に立つ 僕たちが立っていると 二人がこちらに向き直る シルヴァはサイファーを見上げ丁寧に頭を下げ抜いた剣を掲げる それは騎士の誇り 誓いを立てる行為だ この剣は主人のために 勝利を貴方に、と そしてログナスも僕を見つめ微笑むと 同じように剣を掲げる 僕は主人ではないけど その気持ちは伝わった 「これよりログナス・ヴァーミリオンの卒業試験を始める。両者共奮闘するように。ルールは相手に負けを認めさせるか戦闘不能にすること。又は指名された対戦者が卒業資格を認める場合とする」 「「はい」」 二人は返事をする どうか、無事に勝利して欲しい 「頑張って!!」 他に観客もいないので僕の声が響く その声を聞いてログナスの瞳が輝く 「……フフ、面白い」 小さくサイファーが呟く 「シルヴァ」 「はい」 小さな声に忠義者が返す 「武を示しなさい」 「御意」 二人の騎士が見据え合う 「始めよ」 ガキィン!! 開始の合図と共に激しい鍔迫り合いをしている二人 シルヴァさんの剣は抜かれていない 納刀されたままであった ログナスは黒い刀身で刃を向けた 重なった箇所から迸る閃光が放たれる 「ハッ!!」 「…」 目にも止まらない速度の剣撃を表情を変えずに受けるシルヴァさん。達人、強者同士の戦いだった 「疾れ雷光!」 ジュッ! 水が急激に沸騰するような音がした後 周囲全体に雷撃が広がる 「…」 剣を一払いして吹き飛ばすシルヴァさん 余裕そうだった 辺りは焼けた地面のせいで煙が立っている 「!」 煙を貫くようにログナスが刺突をした それを首を動かして躱す 当たっていたら即死だろう そしてログナスも冷静に連撃をする 「……すごい」 思わずそう言葉が漏れた 「君の騎士はやるね」 お茶を飲んでサイファーが愉快そうに言う 「うん。ま、まだ僕の騎士ってわけでもないけど」 既に何度も誓いの言葉をかけられてはいるけどさ 「でも…」 攻めているのに ログナスが勝てそうだとまだ感じられなかった まだ、剣は抜かれていない 「…舐めているのか」 「そのようなつもりはない」 「ならなぜ抜かない!」 ガキンッ!! 鍔迫り合いだ 「誓いだからだ」 「ッ!」 ログナスが吹き飛ばされた 鍔迫り合いから一撃で…… それまでに力の差があるのか 「銀冠の騎士はそれぞれ、武器の解放に制約がある」 「制約?」 「そう。条件を課すことで彼らの武器は真価を発揮する」 「そうなんだ…あの人はどんな制約なの?」 「フフ、直接聞くんだね」 「あっ、秘密だった?」 「構わないさ。問題はない」 ティースプーンでぐるぐる液体を回す 「シルヴァの剣。あれは現世に顕れる崩壊の地獄を内包している」 「それって!現象。理を具現化した神の造りし兵器ってこと!?」 「あんなものと一緒にしないで欲しいな。あれはオリジナル。原本を作ったのさ」 「作った?」 「他の人には内緒だよ?五月蝿いからね。この世界には歪み。即ち世界の欠片がある。それをアカシックレコードから抽出し器を作り記憶を入力したものさ」 「どういうこと?」 難しすぎてわからない それって、禁忌じゃない? とフレンドリーには聞けなかった 返事が来る前に正面の二人の戦闘が佳境に至ったようだ 「我が身を青光となりて!敵を滅ぼさん!」 魔力が膨れた上がり漏れでた魔力で地面が吹き飛ぶ 「うわ」 パチン 僕に余波が来て驚いたけどサイファーが魔術で防御してくれたようだ これで安心して観戦できる ログナスの剣が、身体が青い雷に包まれる あれは大技だ 「無限の光《インフィニティライト》!」 膨れ上がった魔力が集約し 光線の様に一直線に突撃する 凄まじい威力だ 生身なら吹き飛ぶだろうし、国の防壁結界であろうと 容易く射抜かれるだろう威力だ 「フッ」 小さく誰かが笑った 「絶望剣(レプリカ)」 白い光が周囲を包む そして 「亡罪断(ロスト・ジャッチメント)」 剣が抜かれる すると光がまるでカーテンを閉じる様に吸い込まれ 爆ぜた 「ッ!?」 暗闇の光 誰かの悲鳴が聞こえた様な気がした いや、無音だったはずなのに 視界が黒に染まる 闇だ

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