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第6話

チ………チリリ…… ……… グイッ …… ツンツン…… 「……ん………」 ククッ… 「……うぅ…?」  ギュッ 何かにしがみつく 枕にしては硬い… …… コチョコチョ 「アヒャヒャヒャ!?」 「!?!?」 飛び跳ねて起きる な、なになに? まだ寝ぼけている頭を覚醒させつつ音の発生源を見る そこには僕にくすぐられたらしく涙目で、白いシャツの上に白い生地に透けた紫色の紐が掛かっている上着を着ている正装を着たヒスイが、頬杖をついて横になったまま僕を見ていた まるで添い寝して共に朝を迎えた様な姿に僕は固まった ………? 「おはよう、ねぼすけ」 「え?」 目だけを動かして時計を探しだし壁時計を見つけて時刻を確認する 九時半………あれれ、おかしいなぁ 「お前の執事は来ないぜ。会場作成に協力してもらう仕事があるからな、言われたろ?」 言われたっけ? まだ僕の頭は覚醒していない様だ グイッ 「んわっ」 口角を上げて悪い笑みを浮かべたヒスイはなんと僕の腰に腕を回して抱き寄せた 「ちょ、ちょっと!?何して」 「はぁ?お前が最初に誘ってきたんだろ?」 何を言ってるんだお前は! 僕がそんな事するわけないだろ と伝えると 「抱きついてきたろ?」 「はぁ!?………あれ」 さっき確かに、感触が違うものに触れた気がする 「あ、あれは不可抗力?とか勘違いみたいなものだし」 「あ?誰と勘違いしたんだ?」 「あっ違う!違うから!言葉のあやだから!!あと勝手に部屋に入ってこないで!」 僕はヒスイの腕から逃れベッドから降りそう言った 朝から心臓に悪い 昔……寝つきが悪くて寝れない時、ユダが何も言わず寝るまでそばに居てくれたり ログナスが来ている時はベッドに勝手に入ってきて我が物顔で一緒に寝ていたことがあったから つい、反射的にくっついてしまったみたいだ 子供みたいなことをして恥ずかしい… 僕が朝から怒っていると じっと僕を見ていたヒスイが口を開く 「ふーん、別にどうでもいいけどよ。急いだ方がいいんじゃねぇのお坊ちゃん」 「お坊ちゃんっていうのやめてよ。急ぐ?」 ポカンとした顔でヒスイを見つめる 軽くため息を吐かれた 「記憶力ねぇのかお前。今日は大事な入学式だろ?」 そう聞いて僕の頭は急速に活発した 「あー!!」 「うっさ!」 僕は大慌てで着替え始める え、えっとシャツはここで、ズボンはあれどっちだ?こっちでいいか。ジャッケットは何で四着あるの?これだから格式にこだわる連中はめんどくさい んん?これどっちが前?サスペンダーってどうやってつけるの?ガーターって必要?リボンってどうやって結ぶの? 僕は混乱していた 「はぁ。しゃーねーな」 後ろからため息を吐いたヒスイがぬっと現れて持っていた服を戻す 「なにして」 「じっとしてろよお坊ちゃん」 そう言ってヒスイはクローゼットから素早く制服を取り出して 僕をベッドに座らせて着せてきた 「次ズボン」 「うん」 テキパキと着せてくれる その手先は丁寧で素早かった 「……上手。てか慣れてる?」 「…まぁな。こんぐらいできねぇと、立派な大人になれねーぞ」 「こんな事ぐらいできるようになるし!」 「そういうことはできるようになってから言うんだな。ほら、顎を上げて」 言われた通り顎を上げる するとスルスルと光沢感のある水色のリボンが僕の首元を彩る 「……よし、立っていいぜ」 「うん」 立つとピッタリの制服が姿見に写っていた 「仕上げでございます」 恭しく言われて背後のヒスイが持っているジャケットに腕を通した ………うん。完璧 「ありがとうヒスイ」 「お安い御用で、ってわけにもいかねぇな。高いぜー」 「はいはい」 「特別だぜ。仕方なくやってやったんだから覚えてろよ」 「うん善処するー」 「…いい性格してんな」 呆れた様にヒスイはソファに座る 見ると時刻は十五分立っていた 「今はちょうど歓迎パレードやってんな」 窓の外を見て言ってたので僕も見る 木々の奥に魔法光と共に音楽が流れていた 花火の様に空にカラフルな光が光っていた 「ほら、見てねーで行くぞー」 「あっ、うん待って!」 慌ててヒスイを追いかける 隣のベッドは空だった てか同室の人、結局来なかったんだけど?サボり? ≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫ 「はぁ……はぁ…広すぎ」 「ほらへばってねぇで走れー」 ヨロヨロと走っている僕の横を平然と並走するヒスイに舌打ちしたくなったけど我慢した お行儀良くないからね 「最近のおチビはヒョロイなぁちゃんと飯食べてるのか?身長伸びねぇぞ」 「チッ」 仕方ないよねこれは 軽快に舌打ちをして曲がり角を曲がる 「逆だ逆。お前本当に方向音痴」 「う、うるさいなぁ来たばかりなんだから仕方ないでしょ」 プリプリと怒りながら振り返って進む この建物は似たような作りが多くて困る 別に僕がおかしいわけじゃないし と言い訳しながら窓の外をチラッと見る そこからは立派な校舎が見えた まるで王宮をモデルにした一流ホテルのようだった 学生身分にしては豪華すぎないか? でも各国から身分の高い人が在籍してるらしいしお金があるのかも 「そういえば、ヒスイは一応先輩だよね。暇なの?」 素直に疑問を尋ねた ヒスイは眉間に皺を作り明らかに不機嫌そうな顔になった 「朝起こしてもらって道案内してもらってる人間に尋ねる言い方じゃねーと思うぞコラ」 「ごめんなさい」 「許す。俺はでかい男だからな!」 色々とな!と余計なことを言って笑ったヒスイ 「御師様がお前がぐーすか寝てっから心配しててよ。俺様が態々起こしに来てやったんだよ。俺だって忙しーのによ」 「そーですかーどうもー」 「おう生意気な後輩だな」 軽口を叩きながら話す 友達って、こんな感じか 友人との交流に感動していた僕 周りが大人びて過ぎだし身分とか、…復讐でそれどころじゃなかったから新鮮で楽しい 「ショートカットすんぞ」 「えっ、ってえぇ!?」 ヒスイは僕の了承も得ずに抱えて開いた窓から飛び降りた 「ひぃやぁ~!」 「あはは!」 別々の反応をして風を感じながら僕たちは青い屋根の上に着地した 僕の体重も乗っているのにヒスイは平然としている 「急ぐぜー」 走り出す あれ僕抱えられたままだけど… 「降ろしてよ!」 「こっちの方がはえーだろ?」 「そうかもだけど、恥ずかしい!」 「おまっ!?暴れんな!」 僕が暴れたせいでバランスを崩して二人して落ちる ヒスイが落ちた先のベランダの手すりに着地したが 強く風が吹きまたバランスを乱されたのでヒスイは舌打ちした後、なんと僕を投げた 「わぁ!?」 「このまま下に降りれば!会場だから迷うなよー!」 ヒスイは落ちながらそう言い放った 大丈夫なのか!?ここ五階だよ!? 見るとヒスイは壁を走って下に消えていった ……器用だね 「…どうしよう」 後ろを見回すとここは、…倉庫? 布に覆い隠された彫像や積み重ねられた書類、 薬品棚に魔道具らしき物の保管庫がある まだまだ沢山のものがこの部屋にはあるようだ ふわりと横でカーテンレースが揺れる …… 「……あのぅ」 「ッ!?だ、誰?」 突然声がして驚く 誰の気配もしなかったのに ゆ、幽霊とか?なんかの本であったな物置小屋で見つからなくて幽霊になったお話の本 「……あのぅ」 まだだ! どこにいるんだ? 警戒して魔術の発動の構えをとる 幽霊だから神聖術とか光魔術かな 僕扱えないんだけど 「ねぇ」 ビクッ! やはり、声が近い 「ねぇってば、流石に退けてもらえると、助かるよ」 退けて? 下を向いた そこには黄色っぽいライトブラウンの髪を乱した 柔和な顔の青年がいた どこか困ったような笑みを浮かべて頬をかいている 片手は僕の腰を支えていた 「あ、ああごめん!ごめんね!」 慌てて離れる 下敷きになった人はゆっくりと立ち上がり僕を見る 怒ってる? 「…よかった。怪我はなさそうだねー」 えへへと笑う その笑顔にのほほんとした空気が流れる 僕が(ヒスイが)悪いのに、怒るどころか心配してくれるなんて優しい人だ あ、同じ制服を着ているから生徒か 大きいから先輩かもしれない 「こちらが悪いのに、すみません。お怪我はありませんでしたか?」 対人モードで接する 「んー?全然平気だよ。ちょっぴり驚いただけかな」 ふぁっとあくびをして彼は乱れたシャツを直した おおいい腹筋ですね 僕はいくら鍛えても筋肉どころか割れ目すらできなかったからね 三日で飽きました ユダにはやっぱりって顔された 「…大丈夫そうだねー。次は気をつけるんだよー。怪我をしたらいたいからね。……じゃ……おやすみー」 そう言って彼はぽりぽりと鎖骨の当たりを掻いた後 周りのものと同じかけ布を自分にかけて横になった 「ぐぅ…….」 「寝た?」 寝るの早すぎないか? ギィ…… !? 誰か来た! と思ったら横からすごい早さで僕は掴まれた 「むごっ」 「シッ…………静かに」 すごい近くで声がした 彼の吐息を感じる どこか落ち着くホッとするような 森の中のような香りがした 「……去ったようだね」 その声に意識を戻す 「あごめん」 僕は彼の肩に凭れるように頭を乗せていたようだ あの少しの時間で眠くなったようだ 彼から睡眠効果のある何かが発せられているのかもしれない 僕の肩にはさっきから抱き寄せられるように腕が置かれている 知らない人との密着具合にドキドキした 眠たそうな垂れ目にフワッとした髪の毛のまたイケメンがいる 美形多すぎだな 少しぐらい身長分けてくれてもいいと思う 「もう行っていいと思うよ。見つかるとすごい怒られちゃうからねー」 あははと緩く笑う もしかして常習犯? そう考えた時彼の動きが止まった 「あー、はい。俺です。……えっと今は、確か第八教室です。……はい。えー……、はい。んーわかりました。一緒に行きますー」 …念話のようだ 条件を満たすと互いにのみ会話ができる わざわざ口に出して言わなくてもいいけど、彼は口に出して話していた 魔術の素養は高いみたいだと判断する ふぁあ…と大きな口を手で隠してあくびをする彼 焦るというか、マイペースすぎてこちらまでのほほんとしてしまう 「………えーと、君、セ…なんだっけ?」 「僕はセウスです」 とりあえず名乗った。今の会話相手から僕を聞いた? 「そうそうー。君迷子なんだってねー。よかったら俺が案内してあげるよ」 フニャッと笑う なんだろうこの、森のクマさん的な おおらかな大型犬のような感じ 飼いたい! 変な欲望が漏れ出した 「ありがとうございます!」 案内してもらえるなら安心だ 「あの、あなたの名前は?」 名前が知りたかった 友達になれたらなぁーなんて しかし歳上ばかりだな僕の友達と友達候補 「そうだねー。ええっと、俺はケイ。ケイ・ガーランドだよ。よろしくねセウス」 嬉しそうに笑って僕を抱きしめるケイ うわぁあったか!犬だぁ!(違う) 犬派な僕はメロメロだった 「………」 「………?」 「…‥…グゥ」 「寝てんの!?」 ケイは眠り姫らしい 「ほら、行くよ」 「……うん。ありがとうー」 大きな手を握って引っ張る ケイは眠たそうに目を擦っている 大きな子供のようだった 静かな廊下を歩く 「……そこを、右」 「うん」 「その階段を降りる」 「了解」 「……そこを」 「頑張って!後少しだよ!」 暖かい日差しが通路に差し込んでいてケイには耐え難いようだ もうちょっと頑張って 「ケイは寝るのが好きなんだね」 「…うん。そうかもー。俺、どこでも寝ちゃってさー。よく幼馴染に怒られちゃうんだ」 全然申し訳無くなさそうに笑うケイ 癒しキャラに僕はメロメロだった 一家に一台欲しい 僕の周りは殺伐としたいじめっ子しかいないからね あとネジが飛んでいるかそもそもない人ばかり 「そっかー。でも眠くなっちゃうのは仕方ないよねー」 「そうそうー。セウスわかってるねー」 「そう?えへへー」 既に別世界の住人だった ケイに肩車されて廊下を進む 頭が天井にギリギリ届きそうだった 「えー、………あわわ」 「ん?どうしたのケイ?」 のほほんとしたまま慌てるケイに尋ねた 「早くしろってさー。お尻叩かれちゃうかな。仕方ない、急ごうかぁー………」 しょんぼりとしたケイ 念話だろうか。さらに尋ねようとした時異変が起きた 「走るよ~~。しっかり捕まっててねー」 「あっ、いやな、よかんがぁ~、するぅーーー!!」 片足を後ろに引き、強く地面を蹴り上げたケイ その反動で僕は揺れる これ!デジャヴ!?うちの脳筋の幻覚が手を振ってるよ! 僕は空気の壁に叩きつけられながら 高速で走るケイと共に会場まで進んでいた 景色が流れる は、はやい!安定感はあるけど!緩急も丁寧で加速感もすごいけども!って思うぐらいなれてしまっている自分に呆れる 主にヘイムのせいだ ヘイムに嫉妬?か対抗してログナスまで僕を肩車したがって大変だったのは記憶に新しい 綺麗な調度品が並べられている部屋を素早く通り過ぎ この建物と違う雰囲気の部屋を通る あれ一瞬悪魔召喚の魔法陣が見えたような…気のせいだよね 思考が中断される 「飛ぶよー?舌噛まないようにねー」 「と、飛んでからいわないでー!うわぁぁあ!!」 暴走列車の如く崖から飛び降りるようにケイは大きな窓から飛び跳ねた 真下は、どうやら会場だった あっ みんなが見上げている 大衆の注目をその気もなく集めてしまったセウス ケイはキョトンとしたままだった 「お、落ちる~!?」 「あれ~」 重力に従って二人とも落ちていく 「な、何をしてるんだ!?クッ、風よ!」 下で誰かが魔術で風を発生させてくれたようだが 調整が甘いようで回転しながら落ちた ドガンッ! ……………… 土煙をあげて不時着した 「い、いた~……くない?」 思ったより衝撃がなく痛みはなかった 横でケイが仰向けに落ちたようで僕の衝撃を緩和してくれたようだ 自業自得だけど、助かったよ 怪我もなさそうだし僕は安堵した 「ふぅ……よかったぁ」 「なにも、……よくあるかぁ、この馬鹿野郎….」 下から呻き声と共にそう聞こえた 下を向くと誰かが下敷きになっていた 「ご、ごめん!」 慌てて退ける 今日で二回目だ 「いってぇ……」 頭を打ったのか摩りながら上体を起こす彼 僕は背を支えた も、申し訳ない名も知らない人! やらかして冷や汗をかく 「…まったく、貴様らは何をしているんだ」 「あれ、君…」 「はぁ?…」 見つめ合う 先日戦闘時に助けてくれた人だった ツンとした髪がかき上げられて意志の強そうな目が印象的だ 「あれー、やっちゃったかなぁ?」 「やっちゃったかなぁ、じゃない!アホケイ!何をしているんだと思ったらこの有様はなんだ!騎士として自覚はないのか!?」 「えー、まだ騎士じゃないよー。入学式前だしー」 「そんな心構えでどうする!誉れ高い騎士となるのに貴様は……」 「なにその口調ー?貴様ーとか初めて言われたよー。ケイって呼んでよ」 「う、うるさい!場を弁えろ!今までのようにたるんだ考えでは立派な騎士になれないぞ!」 「僕はそんなになりたいとか、おもってないなぁー」 「お、おおお前!?聞き捨てならないぞ!」 「あのー…」 「なんだお前!先日から問題ばかり起こしやがって!」 本来は堅苦しい物言いではないようで少し崩れている てか好きで起こしているわけじゃないし僕がたまたま巻き込まれているわけだし… そう言うと彼は凛々しい眉を寄せて怒った ガミガミとうるさい人だ ストレス溜まっているのかな? 「おい、貴様ら」 重い声が聞こえた 僕たちは声の主を見上げる そこには銀の留め具が肩についたマントを羽織り 狼のような仮面をした紺色の髪の男が立っていた 仮面から黄色い瞳が光っている あ、銀冠の騎士だ 共通した格好でわかりやすい そっかここなら遭遇することもあるか 騎士姿はシルヴァさん以外は初めてで、まじまじと見つめる 「…式の途中だ。騒ぐなら退場してもらうがどうする?」 淡々と語るが、有無を言わせない圧を感じ 僕たち三人は顔を見合わせて立ち上がる 「「「……すみません。整列します」」」 「……ならさっさと並べ」 言い捨てて去っていく 今更だが僕たちは前列に着地したようで慌てて列に並ぶ 周りの視線が突き刺さっていた事に今更気づいた 「……プハッ」 声に反応して顔をあげる そこには仮面をした男が笑いを堪えるようにして口元を押さえていた あ、あれは!仮面で隠しているけど明らかにヒスイだった 先に着いて整列していたようだ 自分と同じ制服を着ている生徒たちの列の正面に立っているから 運営側なんだろうけど 仮面? 「…静粛に」 さっき人の一言で周囲が静まる まるで軍人のような佇まいだ 「式を続ける。…学長、挨拶をお願い致します」 音楽が流れ出した 布がかけられたアーチを誰かが進んできた あれは、シルヴァ・シリウスレイ!?学長なの? い、意外… 以前見た鎧に黒い羽飾りのついたマントが風に揺れている 悠々と闊歩して壇上に…上がらない? 寸前で立ち止まる 新入生の視線が集まった 見つめているとちょこんと一束はねた髪が見える 黒い貴族服を着たサイファーだった んん?学長? 「こんにちは皆さん。学長を任せてもらっているサイファーと申します。皆さんがこの学舎にて、たくさんのことを体験し学び、成長できることを願っております。我らは国や信仰、習慣や言語、考え方が違くてもここでは同じ学舎の同士であることを忘れないでください。将来選択し生きていくのは君たちです。後悔も成功も、君たちの歩んだ軌跡です。隣にいる一人一人が様々な道を進みます。けれど、困難や挫折、苦難が道を阻むでしょう。そんな時、同じ道を歩む我らをどうか忘れないで欲しい。決して、一人ではないことを」 一礼してサイファーは下がった その言葉に僕たちはきっと同じことを感じたことだろう そして式は終わりに近づいてきた 落ち着いてきて周りを窺う余裕ができたので観察した 周りの見習い騎士たちはさすがと言うか、雰囲気からしてエリート揃いだった 僕たちの騒ぎに一瞬動揺したがすぐに冷静を取り戻したようで教育がちゃんとなされているようだった そして見習い騎士の新入生の隊列の隣に 魔術師の制服の格好をした人達もいて騎士だけではなく魔術師の教育機関として機能していることがわかった 後で知ったけど普通科もあるらしい さすが世界一の学校だ 手広い分野を教えているようだ 周りを見ていると 既に下がって寛ぎモードのサイファーが日傘の下でお茶を飲んでいる ここには仮面の男が四人いる 一人は怖そうな紺色の髪の男 二人目は、ヒスイ?暇そうにしてサイファーの隣で茶を飲んでいる。茶会か!? 三人目はサイファーの後ろに控えているシルヴァさん そして四人目は、……?全身を白いローブで覆い隠し仮面部分だけが出ている、不審者?に見える男のようだった 女性にしては体格がいいからそう判断した あそこにいるってことは騎士なんだろうけど、怪しすぎる そう思って見つめていると その仮面の男が僕を見た 強い視線が僕を貫く なんだ?この視線は… つい視線を逸らしゆっくりと顔をあげると既に奴はこちらを見ていなかった 「ながぁーーーい!!!」 怒声が響いた な、何が起きた!? 慌てて見ると一人の真新しい制服を着崩した赤毛の…… え?犬?いや、狼? 吃驚して見つめる あれは、獣の耳だった 周囲の人たちも気づいたようで小声で 獣人?と小さな声が聞こえた そう あれは獣人である種族の特徴だった モフモフの獣人は遠吠えするように吠え そのまま走り出した 周囲に驚く声が聞こえる 誰かが静止する声が聞こえた そして四足歩行で人の間を駆け抜け、飛び跳ねてそのままお茶会をして寛いでいたサイファー達のテーブルに着地した テーブルに乗っていた茶器が空中に舞うのを僕はただ ポカンと見つめていることしかできなかった

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