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45.求められる

   未知の感覚に混乱して、握られていた手を自分からも強く握っていた。何かに縋りたかったのだ。 「ン……ッ、ふ、ぁ……ゔぅ〜っ」  ライルの舌が縦横無尽に動き回る。唇を柔らかく喰まれたり、縮こまる舌を舐められたり。  上顎をこすられた時はビクリと体が跳ねてしまい、ライルの鼻息が荒くなった気がした。  握られていない方の手でライルの背中を叩くが、次第にそんな余裕すら無くなって手触りの良い服を掴むだけになっていた。  何度か口を離されたが角度を変えてすぐに塞がれるから、まだ呼吸に慣れないリクは酸欠で頭がクラクラする。 「ふぁ……んぅっ」  しかしクラクラする理由が酸欠だけでは無いようで、自分でも知らない甘い声に気づいて恥ずかしくなる。  くちゅりと濡れた音すら耳を犯し、恥ずかしくて逃げ出したくなるが、腰も頭も固定されてしまってどうしようもない。  ようやく口付けから解放された時にはもう、満身創痍だ。  ライルの服を握っていた手も力が入らなくなって、パタリとベッドに落とした。 「絶景だな……」  頬を上気させ、荒い息を繰り返しながら力なく横たわるリク。瞳は涙で輝き、ぼぅ、とライルを見つめる。  そんなリクを、舌なめずりでもしそうな顔でライルが見下ろしていた。 「んっ」  熱い吐息を感じながら首筋を吸われ、また甘えるような声がもれる。  大きな手のひらがリクの体を服の上から弄り、くすぐったくて身をよじるがやはり逃してはくれない。 「ひぁっ!?」  かと思えばライルが胸の素肌に唇を寄せたもんだから、驚きの声が上がる。  何事だと見てみれば、いつの間にか胸元の服が乱されて大きく肩口まで開いていた。  乱れた服に驚き、咄嗟に服を手繰り寄せようとした手は当然ながら阻まれる。 「や、待って、ライル様……っ!」 「もう、十分すぎるほど待っただろう」 「あ……っ!」  そう言うなり服を脱がされ、上半身は完全に裸になってしまう。  そんなリクの首筋にライルは顔をうずめ、そのまま舌で首を舐め上げる。  ライルの右手は相変わらず胸の上にあって、時折指先で中心に触れるものだからびくりと体が反応してしまう。  その様子を楽しむようにライルは何度も同じ場所を攻め続け、ついには両手を使って両方を刺激し始めた。 「んぅ……ふっ……」  刺激される度に恥ずかしい声が漏れそうで必死で我慢するが、それを知ってか知らずかライルの舌は指先と共に更に胸をいじめる。  ライルが胸から離れないせいで、胸の中心はさらに固く尖っていく。  その様子を楽しんでいたライルだったが、次第に右手が下方へとおりてきた。  ライルの服を掴んで必死に快感を逃そうとしていたリクは、ライルの不埒な動きに気づかない。 「ひっ……!?」  しかし、下穿きの中に手が侵入してきた事でようやく気づき、体を強張らせた。  侵入したと同時に何の躊躇もなくやわやわと握られて、快感よりまずは驚きが勝る。  咄嗟に足を閉じようとしてもライルの体を挟むだけで、なおさらライルを喜ばせるだけに終わった。 「んぁ、だめ、そこ、汚な……ぃ」  言いながら、いやいやと首を振るが、ライルはかまわず先端を親指でぐりっと擦るもんだから、体が跳ね上がる。  そんな様子に口角を上げたライルは、ゆっくりと手を上下させる。 「汚い訳がない」 「ふ、ぁ……きっ、汚いです、よ……っ」  高まる快感を我慢しながら何とかしてライルを止めようとした。するとライルの手が止まったのでホッと気を抜いていたら、それが間違いだったとすぐに思い直す事となる。 「そうか? では確かめるからしっかり見せてくれ」 「へ……ひっ、ぎゃあぁっ!」  何だかとんでもない事を言われて、脳が理解する前にライルが動いた。  これまたとんでもない早業で下穿きごと剥ぎ取られてしまったのだ。  思わず「変態!」と叫びそうになるが、あまりの事態に言葉にならず「ぎゃあぁっ!」しか口から出なかった。  色気も何も無いのだが、それでもライルは楽しそうだ。  そして完全に裸になってしまったリクを腕で囲い、うっとりと見つめる。 「ほらみろ……綺麗じゃないか」 「……っ」  そんなわけあるかと思うが、こんな熱のこもった視線を投げられては反論も出来ない。  せめてもの抵抗として手で下半身を隠したが、なぜだかライルの顔が怖くなった。  怒っている顔ではない。なんだか、怖いのだ。 「そんな顔で必死に隠そうとして……」  ライルが発した言葉は、リクに向けてではなく独り言のようだった。 「リク、よく覚えておけ。男は隠されると暴きたくなる生き物なんだ」  そう言うライルは鼻息が荒い。これはもしや、良くないスイッチを押してしまったのだろうかと後悔するが、時すでに遅しである。 「特に愛しい者があられもない姿でいるんだ。おまけに真っ赤な顔と潤んだ瞳で身をよじる光景を見せられて……正気でいられると思うかっ!」 「ぅんん──っ!」  アンタがあられもない姿にさせたんだろっ!!  と思わなくも無いが、思考も叫びもライルに食われ、性急すぎる動きで体を暴かれた。  顎を掴まれ深くキスされたかと思えば、隠そうとする手を掻き分けて下半身の中心を探り当てられてしまったのだ。  竿の裏すじを親指で擦り、やや乱暴な手付きで上下に扱く。明確な意図を持って昂らせようとする動きに、色ごとに慣れないリクは簡単に翻弄される。 「ぁ、ん……ふ、ふぁっ」  鼻から抜ける甘い声に煽られたのか、ライルの口付けが更に深くなる。唾液と共に舌先を吸われ、上顎や歯列まで余さず舐められる。  舌裏の付け根を強く刺激されると、背中から痺れるような感覚に襲われた。  過ぎる快感に身を震わせながら、ぼんやりしてきた思考で思う。  ──……これ、なんかヤバイかも、と。  自分の恋愛対象は異性だと思っていた。ライルへの気持ちを自覚した後も、男同士でどこまで出来るのかと不安もあった。  なのにどうだ。男同士なのに嫌悪感が無いどころか気持ち良いと感じてしまう。苦しくて怖いのに、もっとと強請りそうになる自分が居るのだ。  そんな動揺を見透かすようにライルの手の動きが激しくなった。 「……ひゃ! あっ!」  突然訪れた強い快感に思わず口を離し身を捩るが、許さないと言うかのように抱き込まれ、再び唇を奪われる。同時に、ライルの手が信じられない場所に移り、リクは驚きで体を跳ね上げた。  大きな手が尻の谷間を掻き分けて入ってきたのだ。  リクの先走りで濡れた指で中心を探り当て、穴の縁をなぞるライル。  そして節くれだった太い中指が、ゆっくりと狭い入り口を押し広げながら入ってきた。 「んーッ!!」  異物を受け入れる違和感と圧迫感に息苦しさを感じてライルの胸板を叩くと、ようやく解放してくれた。  だが、ほっとしたのも束の間。今度は耳元へ顔を寄せたかと思うと、ずいぶんと熱っぽい声で「リク……」と名を呼ぶ。 「んぅ、ら、ライル様……ッ」  まるで耳まで侵されるようなゾクゾクする感覚に身震いすると、ライルの舌が首筋を辿る。  小さな体を強く抱く腕はそのまま、体を密着させて己を求めるライルに、怖いはずなのにどうしようもなくドキドキした。  

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