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第3話

 初めて、転校生・正親に声をかけられた日から1日が過ぎ、2人はなんと恋人同士になっていた。 「えーと、つきあうって誰と誰が?」  元石は極めて何でもないように繕いながら、正親に確認をとる。 「勿論、俺とお前だ」  正親豪として生まれ変わった現世においても、屈託のない笑顔に、強引な物言いは前世と変わっていないようだと元石は思った。  多分、1度、言い出したら聞かないところやとりあえずダメ元でやってみるところも変わっていないだろうが、確かめずにはいられなかった。 「……僕は女じゃない」 「うん、まぁ、実は女なんだよって言われると、それはそれで驚くかな? そういうのはラノベとかだけで良くない?」 「じゃなくて、同性愛だってことで……」 「なんだ、そんなことか」  正親はふぅっと息を吐くと、空を見上げる。  いつもクラスでも明るく、良い意味でも、悪い意味でも表情がコロコロ変わる男だが、整った顔立ちを神妙な面持ちにして暮れていく空をすっと見るのが様になっていて、元石はずるいと思った。 「頭、おかしいんじゃないのかって思われるかも知れないけど、俺は前の世界で好きなヤツがいたのよ」 「前の世界……」 「前の世界。前世っていうのかな? まぁ、でも、覚えているのは元石に似たヤツが好きだったっていうことぐらいなんだけど」  確かに頭がおかしいと思われても、仕方ない発言だが、元石自身も前世の記憶は持っているし、そこは否定の余地はなかった。 「僕に似た人……」 「ああ、似てるというか、そのものというか、その元石に似たヤツは元石の生まれ変わりで、同一人物だと思っている」 「凄い自信だね」  元石は穏やかに言いつつ、正親の言い分は正しいと思った。何故なら、元石も正親は前世で好きだった人間が転生した人物で、同一人物だと思っていたからだ。  だが、先日、正親から『前に会ったことがないか』と問われた時に、元石ははっきりとは答えなかった。  元石の感覚的には知らないという体で話を進めた方が良いような気がして、口にした。

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