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第4話(R15)
「僕らが仮に、前世で会っていたとして、その時はつきあえなかったんだ?」
「あぁ。どうして、思いを告げなかったのかまでは忘れてるんだけど、今の世界の常識は通じなかったって。だから……」
というのは、男同士以前に、彼らの立場が原因かだった。
元石は人殺しにして、弱冠17歳で国1番の名医・メディニエ大老に次ぐ医師だった。そして、目の前にいる正親は前世で、元石を主治医とする皇族の第1継承者だった。
「だから……?」
「今度は好きって伝えて、できることならつきあいたいって思ってる」
真っ直ぐな正親の意思に、元石はどう答えるか、一瞬、悩んだ。
前世でのこととは言え、人を殺し、現世でも人を殺したかも知れない人間が幸せになって良い筈がない。
さらに、男同士でも気にしない、と正親は言うが、現代でもそれなりにハードルはあるだろう。
しかも、過去世とは言え、片や一国の皇子。片やその皇子つきの主治医。
国の為に生き、国の為に死した2人。
とても赦されるような関係ではなかった。
だが、よく考えてみれば、最初の『人殺し』の部分で、大部分の人間が去るのではないだろうか。
と、まで元石は思うと、卑劣極まりない言葉を口にしていた。
「良いよ。つきあっても」
「ほんとか?」
『女じゃない』だの、『同性愛だ』だのと言われた先の言葉は意外とあっさりとしていたもので、正親は意表を突かれたのだろう。
『本当に良いのか?』や『買い物につきあうとかゲームの相手としてつきあうとかと思ってる?』と聞き返す正親に対して、元石は静かながらも、はっきりと明言した。
「ああ。実は、正親のことは何だか、初めて会った気がしなくて、凄く気になっていたんだ。もし、正親が良いのなら僕の方から頼んで恋人になりたいくらいだよ」
文字だけで見ると、近年にはあまりないだろう熱い部類の告白なのに、その一方で、なんて冷たく、哀しい響きのする『恋人』なのだろうか。
まるで、正親に『人殺し』か『主治医』だったと思われる元石の前世を思い出されてしまったら、それまでの恋なのだというように。
「やった! じゃあ、今日からよろしく!」
終始爽やかで、明るい正親は思い余って、テニスのゲームを始めるように右手を差し出す。だが、高校生が恋人になろうって申し出ていて、握手だけという訳もないだろう。
元石は正親の右手を引くと、物陰の方に行き、正親の唇を奪った。
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