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第12話

「あ、そう言えば、慎はメディニエ大老は覚えている?」  朝食に食べるものを買った5分くらいの帰り道、正親の口から思いがけない名前を聞き、不自然に肩がピクっとなる。  メディニエ大老。元石の師にして、国1番の名医だった老人だった。 「ははは、そんなにピクってして……やっぱり、そうなるよな」  正親は元石が記憶のないように振舞っているとは思わなかったのか、カラっとした態度で続ける。 「俺も全部が全部、覚えてる訳じゃないんだけど、よく苦い薬を飲まされたりしてたことは強烈で、よく大老の食事に薬を紛れ込ませたりしてたのよ。で、大老も俺を見て、ああ! って言って」  正親は懐かしいというように笑うと、また笑い出した。 「しかも、俺たちよりもずっと長生きだったらしく、生まれ変わったのも最近だったみたい。1年前にロスで会ったんだけど、最初は誰かは分からなくて」  どうやら、現世のメディニエは名うての名医の姿とはかけ離れた幼い姿らしい。  しかも、なんと性別も男性から少女になっているとのことらしい。 「これが、その時の、画像……」  もはや、声になっているか、いないか、怪しいが、正親は震えながら、スマートフォンをタップして、グリフィス天文台をバックに写っている正親とメディニエを元石へ見せる。  緩やかにウェーブのかかった長い金髪、ぱっちりとしたヘーゼルの目の可愛らしい少女にはメディニエの面影は全くない。 「この姿で皇子って言われて……あ……」 「えっ……」  正親は皇子であることを知っていたのか、と元石は思うと、驚いてみせる。 すると、正親は「しまった……」という面持ちで、「家に戻ってから話す」と言い、2人は元石の家へと向かった。

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