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第15話

 それから、元石は呆気ない程、何事もない1週間を過ごした。 「(思ったよりテストの点が良くなかったから勉強したいんだ、とか、今、家がバタバタしていて、ちょっと落ち着かなくて……とか、正親にはそんなことを言って距離をおこうとしてたけど)」  正親が帰った日の翌日か、元石は正親への言い訳を考えて実際に言おうとしたが、無駄も良いところだった。  というのも、海外での生活が長かったこともあり、正親は現文や古文の勉強で追われていた。 「赤点は免れたけど、殆ど慎のノートを見てとれたようなものだしな」  なんて正親は言い、暫くは勉学に励むというらしい。  おまけに、元石の退路を塞ぐようにさらに畳み掛ける。 「あと、悪いんだけど、冬休みは家のことでちょっと忙しくなりそうでさ」 「家のこと?」 「ああ、実は親父が年末に再婚するんだけど、最初は式は挙げないってことだったのがやっぱり挙げるってことになったらしくてさ」 「再婚……」  何でも、正親の母親だった女性は15年くらい前に亡くなっているらしく、正親の父親は正親の母親代わりに時々、世話をしてくれていた女性と再婚を決めたのだという。 「あ、一応、言っておくと、俺、学校は小学校から寮だったからあまり毎日、会うって感じじゃなかっただけ。夏休みとかいっぱい美味いもの、作ってくれてたり、会えなくても、連絡くれたりしててさ」  あくまで彼女とは正親も正親の父もこの上なく良好な関係だったのだと言う。  だが、元石が覚えている正親の前世では継母との折り合いは決して良いものではなかった。         そして、これも王族のポピュラーな事情の1つではあるが、正親の義弟にあたる第二皇子を王に据えるべく何度も刺客を向けたという噂が絶えずあった。

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