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第16話

「慎がそんな顔しなくても、今は大丈夫だよ。刺客や暗殺なんて過去の話なんだし、俺も親父と彼女が良いなら良いと思う。まぁ、俺はそんなに器用にできてないけど」 「器用って?」 「ああ、一生に2人も好きになれそうにないかなってこと。あ、だからって本当に再婚には反対って訳じゃなくて。あくまで俺は難しいってだけ。だって、慎を超えるくらいのヤツなんて現れるなんて思わないしさ」 「……」  確かに前世で思いが通じ合っていたにも関わらず、結ばれずに……しかも、時の流れにその事実を癒される間もなく、若くして生を終えてしまった2人。  元石としては「僕もそうだな」と言うなり、「その時になってみないと分からない」と答えるなり、何かしら、反応のしようもあったと思う。  元石が正親と別れるべきと思っていようが、いなかろうが、まだ彼らは別れた訳ではないのだから。 「……って、話がだいぶそれたけど、家に来てもらうの、次の水曜はどうかな? 平日にはなるんだけど……青水ってもう自由登校の時期になるし」  自由登校。  青水学園ではギリギリで文科省のカリキュラムを終えることはなく、かなり前倒しで授業が進んでいく。それ故、テスト期間が明けると、各自の自主性に任せて、苦手分野を克服したり、リフレッシュしたりする期間が終業式の日まで独自に設けられていた。  ちなみに、一応、部活のような集まりも存在するらしいが、個々の能力が高く、ある世界ではそれなりの立場についている者も少なくない青水学園ではあまり盛んと言える文化ではなかった。 「あ、うん……じゃあ、その日で」  元石が考えていたよりもその日は早く訪れたが、考えようによっては良かったのかも知れないとも思った。 「(いつか終わらなければならないのなら短い方が良い……)」  元石は正親をチラリと見ると、そんな風に考えた。

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