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第18話
「この家、お父さん達と3人で暮らしてるの?」
元石は正親邸の全ての部屋を見た訳ではないが、通された広すぎるリビングに、誰も使わないシガールームやバーカウンターまで設えた洋館について聞く。
元石としては全く圧倒されていないという訳ではないが、もし、正親以外の誰かがいて、あの話を聞かれたくなかった。
すると、先程までキッチンにいた正親はプレートにカップを2つ載せて、元石の座る席の近くまでやってきた。
「うーん、親父達も日本で仕事をする時はいるかな? まぁ、世界中を飛び回ってるから、家にいても夜だけいて、朝、起きたらいなくなってるなんてこともある」
正親はカップを元石に渡す。
元石は渡されたカップへ視線を落とすと、カップからコーヒーや紅茶を考えていたのだが、どうやら中身はココアらしい。
「あ、ココアかって思っただろ? でも、意外とバカにできないから。まぁ、さては一口飲んだ。飲んだ」
などと正親は元石にココアを勧め、元石は話を切り出す前に一口飲む。
温かくて、甘い……のだが、確かに市販のものと比べると、コクのようなものを感じた。
「最初は胡椒か生姜にしようかと思ったんだけど、塩が無難かなって……」
「へぇ……」
正親もココアを飲むと、元石は正親がカップを置くのを待つ。
なるべくさりげなく……。
確かに正親とは別れた方が良いとは思うが、友達……いや、前世も同じ時代に生きて死んだ者として存在するくらいは許されて欲しいから。
「あの、さ……」
正親がカップを置くのを見計らうと、元石は声をかける。
やっぱり、恋人でいるのは無理だから友達でいないか、と正親に提案する。
だが、その元石の声は途中で切れてしまった。
「(え、目が……開か、ない……)」
確かに元石はこのところ、今日の日のことを考えて眠れない日々を送っていた。だからと言って、こんな風に意識を失っていくなんておかしい。おかしいが、元石が椅子から倒れ落ちそうになる。
すると、正親はまるで予期していたかのように元石を支えた。
リビングにある窓から差し込む、雲間から見えた冬の太陽の淡い光。
その光は彼らを祝福するでもなく、断罪するでもなく照らしていた。
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