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恒星:玄英が実家にやって来る!(何も聞いてないけど)5
「痛っ!急に何すん……」
「だだ、だってまさか、ご主人様から『結婚しよう』なんて言われるなんて思ってなくて……夢みたい!」
派手な音を立てて床とショットガン・マリッジしてしまったくせに、痛みにも負けず感動しながら俺を撫でくり回す玄英。
「話聞け!何をどう聞いたらそうなるんだ!この馬鹿犬!」
「ツン専門のご主人様基準のそれってもう、世間的には『結婚しよう』って事じゃないですか!」
……え、そ、そうなのか?
「いや待て。日本の法律じゃ異性と同じ結婚は無理で……いや今は、そういう話をしたいわけじゃなくてだな……」
うっかり納得しかけてた。危ねえ……
「海外でならいくらでも正式に結婚できますよ」
流石に「いくらでも」する気はねえわ。
「ああ、あなたの気が変わらないうちにこのままプライベートジェットに押し込めて、手続きしてしまいたい」
「それじゃ拉致誘拐と密出入国だ。婚姻届出す前に強制送還されて前科持ちだぞ」
「式は両方白のタキシードがスタンダードなんでしょうが、恒星は和服も似合うでしょうね。現地で羽織袴が調達できるといいんだけど……」
おおい、戻ってこーい。
「初夜には脱がしっこしましょうね」
熱に浮かされたようにあちこちを触り、服を脱がしにかかる。
「ストップ!その辺で止まれ、この変態!どさくさに紛れてんじゃねえ!」
玄英の肩を蹴り飛ばして、どうにか起き直ることができたーー危ねえ。
「まだ話は続いてんだよ!」
ソファに戻り剥がされかけた服を直す俺と、めげずに恋人座りでくっついてくる玄英。
「わかった、もう少し頑張ってみる。手だけ繋いでていい?指輪はプラチナとゴールド、どちらが……」
「プレイにすんな。指絡めんな。夢小説から離れろ」
もう片方の手でもちょこちょこ変な触り方してくるから、油断も隙もない。
「だってほら、恒星がよく言うじゃない。ええと……『思い立ったら吉日』?」
「聞きかじって都合良く引用してんじゃねえぞ。吉日じゃねえこともあるんだよっ。仮に……仮にだぞ?結婚を決めたとして、そんなふわふわした話より先にすることあんだろ」
「婚姻届は紙一枚だよ?僕経験あるもん」
……だからそうじゃない。
「お互いの家族に挨拶くらいするってのが筋だろ」
「……僕の家族はクリアできると思う。たぶんね。恒星の方は複雑そうだね」
玄英もやっと現実に戻って、冷静に俺の話を聞く気になったようだ。
「両親は俺が生まれてすぐ離婚してて、今はそれぞれ新しい家庭もあるから俺は俺で好きにさせてもらおうと思ってる。
でも、男手一つで育ててくれた祖父ちゃんには筋を通したい」
それに、できれば長年勤めてて家族も同然の職人のおっちゃん達にも……いい人達なんだが、頭の中は恋愛観や結婚観が昭和のままアップデートされることなしにおそらく止まっている。
「俺たちの関係を理解してもらうのは、月までのエレベーターを建設するくらいの難業だ」
「いいね。難易度高いとか燃える」
玄英が俺の手のひらにキスしたまま、ビスクドールのような瞳に闘志を漲 らせ射抜いたーーちょっ……誰このヤバ過ぎるイケメン(抱いて!)
「事はそう単純じゃねえんだよ」
俺は耳まで真っ赤になりながら、慌てて玄英の手を払った。
「祖父ちゃんは青葉造園の社長で、俺はたった一人の祖父ちゃんの孫だ。造園屋は継がないって宣言してるけど、おっちゃん連中含めてまだ期待持ってるフシあるし……嫁さん貰えって圧もそれなりに」
「継いじゃったらいいじゃない。何だったらコンサルタントつきで資金援助もするし」
いやいやいや。これだからアッパークラスってやつは……
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