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恒星:玄英が実家にやって来る!(何も聞いてないけど)6
「単純じゃねえって言ってるだろ。ああいう零細家業はその世界ならではの繋がりや地元の付き合いで持ってるようなとこあるし。外に出ちまって何もわからない俺なんかより、何十年も働いてる職人さんの誰かに任せた方がよっぽどいい」
「いつも他人事みたいに言ってるのに実は真剣に考えてるの、恒星らしいね」
玄英はそう言うと俺の手を両手で握り直し、今度は甲にキスした。
「でもね。ひとまず僕らの事だけ考えようよ。卵を割らなければオムレツは作れないよ」
きゅん(再)……誰この王子様。
「理解の第一歩は、相手にとっても身近な問題にしてしまうことだよ。そうじゃなきゃいつまでも他人事で理解は深まらない。そう思わない?」
「……それもそうだな」
ド正論。玄英のこういうとこ、本当にカッコいい。
「いっそ爆弾を落とそう。堂々と交際を宣言するんだ。決戦は日曜日」
いやいやいや!ちょっと待て!
さすがノルマンディー上陸作戦とパールハーバー奇襲のお国のハイブリッド……恐ろしい子!
「『ならば戦争だ』的なことがしたい訳じゃないんだよ!祖父ちゃんだって歳いってるし血圧高いし!」
「そうか……では穏便に『お坊ちゃんを僕にください』と言ってみる」
おんなじ事じゃね?
「一度やってみたかったんだ。『どこの馬の骨とも知れん奴に孫はやれん』からの土下座……」
「いい加減に漫談辞めろドM。いつ時代のホームドラマだよ」
「でも僕、正座できるかなあ……」
えっそこからなの……?まあいいけど。
「玄英」
今度は俺のターンだ。俺は玄英の両肩に手を置き、彼の瞳に焦点が合うギリギリの至近距離からのぞき込み、噛んで含めるように語りかけた。
「真面目な話、今はその時じゃない。臥薪嘗胆 って知ってるか?」
「がしん……?何それ、ことわざ?」
「塹壕 掘って耐久戦ってことだ。差し当たって日曜日に波風立てるのだけは止めておこうな。あんたの会社にとっても大事な研修だしさ」
「そうか……そうだよね」
玄英はまだちょっと残念そうだ。
「俺はカミングアウトするなら最悪、実家と絶縁覚悟だと思っている。悪いがまだその覚悟は無い。時間をかけて最大限努力するつもりではいるが、それが必ず届く保証はない。俺が不甲斐ないせいであんたまで無駄に傷つけてしまうかもしれないし……」
「僕は平気だよ。それに僕だって、君の大切な居場所が無くなってしまうことを望んでるわけじゃないんだ」
「これだけは覚えておいて欲しい。たとえ周囲の全員と縁切る羽目になっても俺は、たぶんあんたと一緒にいたい」
「恒星……」
玄英は、上気した目元を潤ませた。
「わかった。とりあえず開戦は保留だ」
素直でよろしい。
「会社のみんなにも事情は話しておくよ。信頼していい人達だから安心して」
とりあえず玄英が納得してくれたのでほっとし……
「ちょっと待て!いきなり覆い被さってんじゃねえっ!どこ触っ……」
「話は終わったんでしょう!ご主人様!我慢したんだからご褒美くださいっ!」
こいつ自分でMだとか言ってるけど、いつも振り回されてるの俺の方だよな……雁字搦 めに手足縛ったまま放置プレイすんぞ、くそ。
外れるといいんだが、どうも嵐が来る予感しかしないーー
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