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第8話 聖女様を、よろしくお願い致します(語り:マリア様)

「聖女様!!」 リアムとデューク団長が部屋から出て行ってから数分が経った頃、廊下から聖女を呼ぶ声が聞こえた。 「ニーナ?」 呼び方からして、ただ事ではないことは一目瞭然だった。 慌てて外に出てみると、そこには目を腫らしたリアムと、バツが悪そうにしているデューク団長が居た。 「何事ですか?」 2人に問いかけると、答えたのはデュークだった。 「俺たちが言い争ってる内容聞いて、聖女様が走って逃げていったんだよ。」 「何を話していたのです?」 「あんたの話だよ。」 私の話? 「どういうことか説明しなさい。」 デュークは、私の部屋から出たあとの事を説明した。 その間にリーナが戻ってきた。 彼女は、聖女を見失ったことと、どこにいるのか検討がつかないことを私に伝えた。 私はリアムの前に立つ。 「リアム、顔を上げなさい。」 リアムは、虚ろな目で私の目を見た。 パシーン!! リアムの頬を叩いた音が、廊下中に響き渡った。 「私が考え事をしていたのは、そういう理由ではありません。確かに、自分が聖女であればと思ったことはありました。しかし、あの方に対して、嫌悪の気持ちを抱いたことなど一度もありません。恥を知りなさい。」 「マリア様………。」 私はリアムの言葉を無視し、ニーナの方に向き直る。 「まだそう遠くへは行っていないはずです、思い当たる場所全て探しなさい。」 「……!はっ!」 ニーナは敬礼をした後、聖女が走り去った方へと向かった。 「リアム、あなたも行きなさい。」 「……ですが、」 「リアム・バートン騎士団長。」 「……!」 「聖女様は、まだこの世界に来たばかりで土地勘がありません。見つけるのに時間がかかれば、魔獣が生息している森に誤って足を踏み入れてしまう可能性もあります。そうなれば、あなたの首が一つ飛ぶ程度では済まされませんよ。」 「……。」 「行きなさい。」 「……はっ。」 リアムも私に敬礼をし、聖女を探し始めた。 「デューク騎士団長。」 「……なんだ。」 「不満があるなら私に直接言ってください。リアムに八つ当たりしたところで、何の解決にもなりません。」 「……悪かったよ。」 デューク団長は、頭をガシガシと掻きながらそう言った。 デューク団長が悪い人ではないことくらい、私は知っている。 幼いながらに街の自営団体で活動していたのだ。 いつもはぶっきらぼうだが、正義感が強くて、仲間思いな人だ。 「じゃ、俺も探してくるわ。」 「あなたも探してくださるのですか?」 「当たり前だろ。多分、リアムとあの女には見つけられないだろうからな。」 「!思い当たる場所があるのですか?」 「まぁな。」 聖女がデューク団長とそんなに仲がいいとは知らなかった。 「聖女様を、よろしくお願い致します。」 私はデュークに一礼をする。 「この世界の長が、簡単に頭なんか下げんなよ。」 デュークはそう言って、去っていった。

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