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第135話

「はっ、ん、はっ、あ、んん……あっ!」 「ハルトの啼き声は世界一すばらし……」  お株を奪われた。くちづけに二の句をさらい取られて、燃えるように熱い舌が絡まってくる。  その、つたなさを熱情で補って余りある動かしようをそっくりそのまま真似て刺激を加える。脊梁が弓なりに反り、爪先が下草を蹴散らす。 「いいかげん、しつこいって……ん、あっ!」  罵声はたちまち嬌声に取って代わられて、ぎゅうぎゅうとしがみついてくる。蜜がとろみを増せば、初心者と記された札をぶら下げているようなイスキアでさえ限界が近いと察しがつく。  愛しい人をよがり狂わせたい。一心に願ってやまない場で研究熱心なのは強力な武器だ。  名案が閃き、キュウリの蔓を別の支柱へと誘引する方法を応用して、強弱をつけて穂先をさすった。黒い瞳が欲情にけぶり、しなやかな肢体が弓なりに反る。  試してみたい淫技はよりどりみどり、あれもこれもと欲張るのはやめて、じっくり丁寧にの精神で次回へとつなげよう。うれしくも悩ましいイスキア自身、猛りが下穿きにひしがれ〝皿〟が炙られるような気がするぶんも、ふぐりを撫でころがしながら更にしごく。 「やだ、射精()ちゃうよお……」 「遠慮はいらぬ、射精()すがよい」    けしかけるように、あるいは快感の波でさらうふうに指さばきを速めても、負けん気が強いところを見せて持ちこたえる。  ならば、と戦法を変えた。爆ぜる予兆に花茎が脈打つたび、わざと手を休めて焦らしに焦らしぬく。  崩落を迎えるよう(みだ)りがわしいやり方でそそのかしつづけているうちに、ぴゅっ、と先触れがしぶいた。それを皮切りに、栓が弾け飛んだように淫液が放物線を描いて迸った。 「やっ、見るな、向こう向け……あっ!」 「つれないことを。しどけなくも愛らしい姿には千金の価値があり、また、とっくりと鑑賞するのは許婚の権利であるのだ」  朱唇が達した余韻にわななき、荒い息づかいとひとまとめに食んで愛おしむ。ハルトを首尾よく遂情へと導いてあげられた。その感激は冷めやらぬものの、大仕事が残っている。本当の意味での本番が。    かたやハルトはたくましい胸にくたりと寄りかかった。時たま自分で慰めるのと同じく、コンゼンコーショーも闇にまぎれてこそこそと事におよぶのが普通、と漠然と想像していた。  ところが昼日中に、しかも遠乗りの行き帰りに時々立ち寄る場所で致すとは。はしたないザマをさらして恥ずかしいわ、親密度が格段に高まったようでウキウキするわ、ともあれ小難しい理屈は抜きにしてイチャつくのって楽しい。

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