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第139話
「ん、んんん……えっ、えげつないことばっかすると〝皿〟に原色で水玉模様の帽子をかぶせちゃうんだからな」
「なんと可愛らしい脅し文句なのだ。礼をせねばならぬな」
「う、ひぃ……ん、っ!」
中指につづいて、人差し指が門をくぐった。花びらがゆがむさまが痛々しいものの、むしろ嬉々として呑み込む。隘路でひしめき合うのを肉の環が食い止めたかと思えば、ぐちゅりとさざめき、まといつく。
灰汁 を丁寧に抜くことでワインの旨みが引き出されるのと同じ原理だ。かき混ぜられればかき混ぜられるほど、そこと対を成すような雄渾 で満たされるときを待ち焦がれて内奥がこなれていく。
蜜がしたたり落ちた場所には翌年の春、滋養に富んだ実をつける樹が芽吹いた。
ちなみに、そのころ羊飼いの村では歓迎の宴の準備に村民総出で大わらわだった。
熱気球とやらでやって来たケッタイな帽子の御仁は領主さまのお従弟殿だって? どひゃー! ハルトが領主さまをお迎えにあがって、おっつけご来臨あそばすって? うひゃー! ──という次第だ。
さて、池の端では別の準備が大詰めを迎えていた。
「あっ、もっ、指、ダメ、ぐりぐりするの……おしまい……あ……っ!」
淫靡な水音が絶えず足の付け根にくぐもり、小鳥のさえずりが伴奏をつける。花茎が痛いほど張りつめて、この調子で前戯をほどこされていたら、合体にこぎ着けないうちに白旗を掲げる羽目になりそうだ。
蝶が羽化するのにも似て、無垢な躰が結ばれる宿命 にあった男性 のため咲き初めていく。
「よがらせる愉しみに病みつきになるとはいえ、わたしも、さすがに限界だ」
前紐がほどかれるが早いか、怒張が下穿きをびりびりと裂く勢いで、その威容を現した。
精通を迎えて以来、およそ二十年にわたって宝の持ち腐れに甘んじていた鬱憤を晴らすような堂々とした勃ちっぷりで、どっしりとエラが張って迫力満点だ。誘いかけるように蕾がほころび、すぼまるにつけ、猛りのほうも雄叫びをあげかねない様子だ。
だが、鮮紅色に華やいだ内壁がちらつくまでに潤 びていても、そこは、乳飲み子の〝皿〟以上に繊細な造り。
逸る心を抑え、がっつき防止を兼ねて、イスキアはワシュリ領国の法典を何節かそらんじた。仕上げとして花芯にも、砲身にも例の軟膏を塗りたくる。てらてらと光って、我ながら獰猛さを増して見えるのが難点だが。
「努めて力を抜くのが手折られるさい有効──ものの本は受け手の心得として説く。では、参る」
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