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第140話

 後ろから腰を抱え込まれて、ハルトはもう頷くのが精一杯。それでもイスキアにすべてをゆだねて、うがたれやすいよう這いつくばったままじっとしているさまが健気だ。  とはいうものの灼熱の塊が谷間をなぞり下ろしていけば、自分が(ほふ)られる羊と化したように感じられて眩暈に襲われる。逃げるのは卑怯でも、いっそのこと池に飛び込んでしまいたい誘惑に駆られる。  勇気を奮い起こすための爪痕が地面に幾筋も刻まれて、ところが(いただき)が中心に押し当てられたのもつかの間、向かい合う形に抱き寄せてきた。  その拍子に昂ぶりが太腿を掃きあげていき、子種がぎっしりといった猛りように、たじろぐ。おびえた色が漆黒の瞳をよぎると、魂そのものを鷲摑みにするように語りかけてくる。 「愛の儀式は、やはり見つめ合いながらでなければありがたみが薄れる。かまわぬか、かまわぬと賛同してくれ、頼む」 「もう好きにして、だし、今さらだし」  頬を両手で挟みつけ、(いにしえ)の河童さながら口がせり出すまでムギュムギュとへこませた。そなたと呼んでとねだり、接吻であやしてもらうにつれて、散らしてもらいたがっているふうに花が(あで)やかに色づく。  丸めたマントが地面と双丘の間に挿し込まれた。腰が浮き、さらに鋏を開いた恰好で下肢を肩に担がれた。  十八歳にもなって、おむつを替えてもらうような姿をさらしてみっともない。そう思うと、どっと汗が噴き出す。だが今や燦然と輝く〝皿〟はイスキアが狂おしいまでに求めてくれている証し。  愛の儀式──心の中で唱えると、雲が切れて青一色に澄み渡るように不安が消し飛んだ。  微笑(わら)いかけると、先ほどにもまして慎重にあてがわれた。キュウリの熟れぐあいを見極めるような間をおいて、ついに先端がめり込んだ。  指でこねくり返されるのが、ほんのに思えるほどの圧がかかり、めりめりと襞が軋む。 「ぅ……っ、うう……っ!」  太くて硬い男の武器が、こじ入っては引き返し、攻め込んでは退き、破城槌(はじょうつい)で堅牢な門を打ち壊すような動きを繰り返す。  かくいうイスキア自身、脱・童貞に付き物の戸惑いの色を隠せない。えぐり込む角度はこれで正しいのか、何段階に分けて貫けば負担をあまりかけずにすむのか、春本のの項を今いちど確かめたい──等々。

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