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18.シャワーを浴びて

 フェリアとの初めての行為は夢中になってしまうくらい悦いものだった。  抱き合う前から勃ち上がっていて、期待していた中心は、狭くて熱いフェリアの中に入ると腰を少し動かしただけで達してしまったが、カイは非常に満足していた。  フェリアを満足させられたか心配で聞こうと思いながら、コンドームを外したときに血がついているのに気付いて、カイは慌てた。  傷付けるつもりなんて少しもなかった。無理をさせるつもりもなかったし、フェリアも苦しそうにはしていたが痛がってはいなかったはずだ。  さぁっと全身の血が引いて行くような思いで問いかけると、フェリアはどこも切れてないという。  そして辿り着いたのが初潮、つまりは生理だった。  生理中の女性は子宮の内側が剥がれている怪我人と同じだから、大事にしなさい。  生理用ナプキンを買って来させられたり、鎮痛剤を買って来させられたりしたカイに姉のルカが言った言葉。それが頭を過って、カイは大急ぎで服を着て車の鍵を借りてドラッグストアに駆け込んでいた。  生理用ナプキンには色んな種類がある。  昼用だの夜用だの、羽根つきだの羽根なしだの、素材も様々だ。  経血が出ている間はそこが蒸れるのだということは聞いていたので、一番いいコットンの蒸れないナプキンを買った。鎮痛剤は姉と妹が愛用している胃に優しいものを買う。  戻って来たカイがフェリアがシャワーを浴びている間にシーツを替えると言えば、フェリアはシャワーは一緒に浴びようと言ってくれた。 「そんなに気を遣わなくても平気だよ。痛みもないし」 「これから痛みが出て来るかもしれません。貧血も起こすかもしれないし」 「それじゃ、尚更一緒にシャワーを浴びてもらわないと。俺がバスルームで倒れてないか見張っててくれよ」  にやりと笑うフェリアに勝てる気がしない。  抱いたときにもフェリアはカイを受け入れてくれていた。初めてで恐る恐る壊さないようにフェリアに触れるカイに、「おいで」と大人の余裕で迎え入れてくれた。  シャワーで身体を流していると、フェリアがカイの髪に触れている。きつく三つ編みにした髪は解いていなかったが、フェリアは解こうとしているようだ。 「この髪、洗わせてくれないか?」 「洗ってくれるんですか?」 「綺麗な髪だから触れてみたい」  髪を解かれてたっぷりのシャンプーで洗われる。長さがかなりあるので洗うのは一苦労なのだがフェリアは構わず楽しそうに鼻歌を歌ってカイの髪を洗っていた。コンディショナーもつけて、流したところで、カイはフェリアと体を入れ替える。 「今度は俺がフェリア様の髪を洗わせてください。俺、髪を洗ってもらうのなんて子どものとき以来だからすごく気持ちよかった」 「俺も髪を洗ってもらうのは子どものとき以来だな。お願いしよう」  淡い金色に輝くフェリアの髪を洗っていると、カイの真っすぐで硬い髪質と違って、ふわふわで柔らかい髪質にうっとりしてしまう。長さも短いので、簡単に洗えてしまう。  バスタブに膝を突き合わせて座っていると、フェリアの手がカイの股間に伸びた。つつっと指先で中心に触れられて、カイは息を詰める。 「くっ……あっ! ダメです、フェリア様」 「まだ硬いし、勃ってる。これ、舐めたら出せる?」 「な、なめ!? ダメですよ!? フェリア様、生理中なんだから、大人しくしておいてください!」 「舐められるのは嫌か?」 「嫌じゃないです! う、嬉しい、けど、今じゃない! 今じゃないんですよ!」  美しいフェリアがカイの股間のものを舐めている光景など、見ただけで達してしまいそうだが、それは今ではない。今はフェリアは生理中で、カイは無茶をさせる気はなかった。 「口と女性器は関係なくないか?」 「関係ないかもしれないけど、俺が気にします」 「それじゃ、手なら?」  がちがちになっているカイの中心が余程気になるのだろう。そこまで言われるとカイの方も股間は苦しいので開放して欲しくなる。  バスタブから出てバスタブの端に腰かけると、フェリアもバスタブから出てカイの中心に手をかける。両手で包み込まれるように握られて、手を上下されると先端から透明な雫が滲んでくる。  フェリアが濡れた髪を耳にかけて先端に軽く唇を触れさせた。  ぢゅっとフェリアの唇が滲み出た雫を吸ったのが分かる。 「フェリア様!?」 「キスしただけだ」  唇を離して手で扱いてくれるフェリアに、さっきの唇の感触が忘れられずに、カイは高まっていく。興奮した中心はますます質量を増して、やがて弾けた。  フェリアの白い腹に白濁が飛んだのを見て、カイはこくりと喉を鳴らす。 「シャワーで流しましょう」 「あぁ」  シャワーでフェリアの身体を流しながら、カイはフェリアの身体をしっかりと見た。白い肌には首筋に、胸に、点々と薄赤い痕がついている。色素が薄いのでカイが吸った場所が一目で分かってしまう。 「フェリア様、すみません」 「ん? 何が?」 「綺麗なお体に痕をつけてしまいました」 「あぁ、いいよ。俺も痕つけてるし」 「え!? どこ!?」  全く気付いていないカイが驚くと、フェリアは「これこれ」とシャワーの前の鏡にカイを連れて行って、カイを背中が見える角度で立たせた。カイの背中には薄っすらとフェリアの引っ掻いた痕が残っている。 「ごめん、爪は切ったつもりだったんだが、予想以上に強い力でしがみ付いてしまったらしい」 「これくらい平気ですよ。背中は目立たないし」  それよりもフェリアの首筋の赤い痕だ。  襟の開いたシャツだと見えてしまうのではないだろうか。 「すみません……フェリア様の肌が綺麗で夢中になりました」 「いいよ。お互いに所有の証をつけたってことだろ?」  唇の両端を吊り上げて微笑んだフェリアが、カイの髪に指を差し込んで唇を重ねて来る。舌を絡めるキスに、もう一度下半身が反応しそうになって、カイは必死に耐えていた。 「カイ、ナプキンの使い方分かる?」 「パッケージの後ろに書いてあると思いますよ」 「あぁ、本当だ。裏面が張り付くようになってるんだな。これ、羽根つきって書いてあるけど、ボクサーパンツでいいのかな?」 「そうだった! フェリア様は女性用のショーツじゃないんですよね。羽根つき買って来ちゃった」 「ま、いいや。何となく分かった」  脱衣所でボクサーパンツにナプキンをつけたフェリアが、簡単に髪を乾かして、その格好のままベッドに向かう。ドライヤーを受け取ったカイは長い髪を乾かしてからベッドルームに入った。  ベッドのシーツは既に替えてあって、ボクサーパンツ一枚のフェリアが寝転んでいる。バスローブを着たカイが来ると、バスローブを剥がされてしまった。 「セックスはできないけど、抱き合って眠るくらいいいだろ?」 「フェリア様が嫌じゃないならいいですけど」 「すごいなー。胸板厚いんだな。腰も引き締まってて、太腿もがっしりしてる」  下着一枚でお互いにベッドの上にいるカイとフェリア。フェリアは興味深そうにカイの身体にペタペタと触っている。  ぷにぷにと胸筋を押されて、カイは笑ってしまった。 「フェリア様、くすぐったいです」 「力抜くと柔らかいんだな。俺の胸は胸筋もないただのつるぺただもんな」 「すごく綺麗ですよ」 「カイは俺を綺麗って言う。俺は自分の容姿が面倒くさくて、整形を考えたこともあるけど、カイが褒めてくれるならそのままにしておいてよかった」  抱き付かれるとフェリアの平たい胸とカイの胸がぴったりと重なり合う。心臓の音が聞こえてきそうな近距離で、フェリアの存在を感じられるのがカイにとっては至福の時間だ。  同じシャンプーとボディソープを使ったのに、フェリアの身体からは甘いにおいがするような気がする。  フェリアの肩口に顔を埋めて、カイは目を閉じた。

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