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第14話
「え……なんて?」
「だから僕を抱いてって言ってるんだけど?」
俺は今、男に抱いてと言われている。なんだ?この状況は……?
「いや無理です男なんて抱けません!」
「はあ?なんで?紫恩 とはしたんじゃないの?なのでなんで僕が抱けない?え?舐めてるの?」
え?逆になんでそんなこと出来るとか思ってんの?こえーよ。どいつもこいつも。ヤクザはやっぱヤクザだよ……
「別にしてないですよ」
「はあああああ?!冗談だろ?」
「いや本気ですけど……」
俺がなにか余計なこと言っちゃったのかわかんないけどニヤリと笑った顔で俺を抱き寄せてペロリと舌を出す。
「ふーん?じゃあ穴 、処女なんだ?うーん、気が変わった。僕がキミを抱くことにする」
いやそれもおかしくね?なんて思っているとどこから出してきたのかわからないロープで俺の手を縛る。その間、抵抗してみたがさすがヤクザの若頭……かなうはずもなかった。ニヤリと嗤 うその顔はまるで悪魔だ。残った足で抵抗してみるがそれも無理。まあ確かにイケメンとやっとくのも経験か?なんてバカみたいなことを考えながらキスをしてくるであろう顔を前に目を瞑る。柔らかい感触が俺の口に纏わりつきこれはもうスタートの合図。そのままを身を任せる覚悟をした時、
"ガタッ ドンッ ガッシャーン”
とてつもなくうるさい物音にそのムードは壊される。
「え〜?もう来ちゃったの〜?紫恩 」
「え?紫恩さんここにいるんですか?」
「ご登場みたいだね〜」
騒がしい足音と共に襖 が開く。
600円男のご登場だ……けど、なんだ?あの殺意に侵されている目は。怖すぎて目が合わせれない。部屋に入ってきたと思えば『九条組』対『元木組』若頭の喧嘩が始まる。殴るわ蹴るわでもうその間にすら入れない。
「てめえなに人様の獲物に手出してくれてんだ?」
「あ?今すぐここで犯してやってもいいぞ?見ていくか?」
「調子乗んじゃねえよクソガキ」
「だまれくそじじい」
なんだこのくそしょうもない言い合いは……
あとから聞いた話だが紫恩さんと光輝さんは父親同士が仲が良くお互い裏 側ということもあり昔からよく顔は合わせてたらしい。でもなぜかこの二人は昔からお互いを気に入らないようでライバルだと言われるようになったとたこ焼きさん(紫恩さんの手下)から聞いた。
「てめえのことは絶対殺してやるよ」そう言い残して、俺の手を引っ張りながら車の後ろに押し込まれた。
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