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第17話

何も喋れない俺に「おーい」と言う瑞希の声も入ってこないくらい俺は混乱していた。なんとか声を振り絞って瑞希に聞く。 「なんでそんなことに?」 「俺だってわかんないけど誰だお前って聞いたら九条紫恩だって言ってたんだよ!暗くて顔も見えないしそしたらいきなり変な薬のまされて……それで……」 「薬……?」 「ああ。それを飲まされた瞬間に性欲が抑えられなくなっちゃって九条紫恩だって言う男に襲いかかったかもしれない。記憶がないんだ!でもケツの穴が痛いんだ!」 まあ所詮ヤクザだし薬を持っていることはおかしい事では無い。でも俺はそんな物には絶対手を出さないとどこかで期待していたのかもしれない。絶望に落とされた気分だ。 「また電話するよ」瑞希の電話を切り電話をかけた人物は『九条紫恩』だ。 電話をかけるとすぐに出た。 「もしもし?」この男の声に苛立ちを覚えた。 「お前、薬やってんの?」お前なんて言っちゃって多分殺されるだろう。でもそんなことは今はどうでもいい。真実だけを聞くために俺は…… 「は……?誰にそんな話吹き込まれた?」 なんだ……?なんでこんなに泣きそうになってんだ、俺は。 「お前なんでそんな声震えてんだよ。今から行く」そう言って切られた電話の画面を俺はただ見つめていた。 そうしていると10分もしないうちに家のベルが鳴る。しつこいくらいのチャイム。 「うるせーよ」怒ってドアを開ける俺を抱きしめる。 「なんで泣いてんだよ……」泣いてたことすらも気付かないくらい俺はショックを受けていた。 やっと落ち着いた俺に男は聞いた。 「なにがあったんだ?」 瑞希から聞いた話を全て話した。 「は?お前バカか?」その言葉にさらに腹が立つ。 「バカはお前だろ?そんな物に手出してんじゃねーよ」 「はあ……俺はそんなもんには手出さねえよ。その前にお前以外、抱くわけねーだろ」 「じゃあなんでお前の名前が出てくるんだ?!」 話を聞けば最近『九条紫恩』の名前を使って薬の実験のため一般人を襲っているという事件が後を絶たないらしい。その話はこいつも知っていたみたいで今その人物を探している矢先のことだった。 「なんだよ……」安心した俺は男の肩にもたれかかった。 「なんだ?それは誘ってるのか?」 「ヤッたばっかでしょ。もう今日は無……理」 「今日は……か」 俺達はそのまま冷たい床で朝まで眠りについた。

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