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第18話

"ブーッブーッ” 「……んん?」男のスマホの通知で目が覚めた。 只今の時刻8時30分。完全に遅刻だ。 隣にいる男を叩き起し、俺は急いで会社へ向かう準備をする。 「起きてください!俺遅刻だから!早く!」 「……んん。ああ、ねむい」何度起こしても起きない男に俺はしょうがなく合鍵を渡した。これが間違いだった。 「俺まじでもう遅刻なんで鍵閉めてくださいね?!閉めたらポストにお願いします!それじゃあ!」そう言って俺は急いで家を飛び出した。 「すみません!遅刻しました!」 「二階堂くんが遅刻なんて初めてだね?体調でも悪いのかい?無理はしちゃあかんよ」 「いえ……ただの寝坊です、すみません」 そう俺はこの会社に入って遅刻なんて1回もした事がなかった。そりゃ遅刻しかけたことは数え切れないくらいあるけど遅刻は今回が初めてだ。認めたくはないけど……誰かが隣にいると落ち着くってやつで……あの男のせいで俺は遅刻したってわけだ。 そして隣で明らかにどんよりしてる瑞希をチラッと見ると俺に近づいてきて、 「琉生……ごめん。怒ってる……?」子犬みたいな目で見てくる瑞希の頭を撫でながら「え、なんで怒る必要あんの?」と言ってやったらキラキラした目でわかりやすく明るくなった。 「お昼一緒に食べよう……?」 「お前さ前から思ってたんだけど甘えてくんなよ気持ち悪い」 「食べようよーねえー琉生ー」 「わかった、わかったから近づくな」甘えてくる瑞希を軽く流して仕事を開始した。 午前中の業務がおわり昼休憩に入る。 「琉生〜!どこ食べに行く?」 「んー、ハンバーガー」 「あれ今日はあのカフェじゃなくていいんだ」 「色々思い出すから……」 「ああ……」 瑞希とハンバーガー屋で昼休憩中、スマホの通知が鳴る。もちろんあの男。そう言えば鍵閉めてくれたんだろうか?画面をひらくと、 ▷合鍵は預かる。いつでも来いってことだな。 俺はこのメッセージで何かを察した。 ▶鍵はポストに入れてと言ったはずですが? ▷聞いてないな。仕事終わったらまた会おう。 そうだ……こいつはこういう男なのを忘れていた。 こんな味のしないハンバーガーは人生で初めてだった。 「琉生?大丈夫?ハンバーガー美味しくない?」 「ああ、まずい」 「えー?!琉生、熱あるんじゃないの?」 「いや、ない。俺は至って正常だ。あいつが異常なだけだ。な?瑞希。そうだよな?」 「え?う、うん?」 俺は厄介なご主人様に飼われてしまったようだ。

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