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第20話
瑞希を送った帰り道、隣で明らかにイライラしているであろう男に話しかけてみる。
「……怒ってたりします?」
俺の言葉にいつもの睨み返しがくる。
「気に入らねえなあ」
「な、なにが……?」
「他の男と飲んでんじゃねーよ」
「あ、それに対して怒ってるんですか?瑞希とは幼馴……「で?それがなんだ?」
うん、怖い。怖すぎて何も言い返せない。
「すみませんでした……」と謝る俺を置いて先を歩いていく。
置いて行かれて暗い夜道を一人で歩いている俺に忍び寄る足音。
「え、紫恩さんですよね……?」とうしろを振り返った瞬間、白い何かを持っている人物がいた。
フードを被りニヤリと笑う顔は、瑞希が言っていた奴か……?すぐわかった。飲まされてしまったら瑞希と同じ目に合うと思った俺は出来る限りの抵抗をしてみるも、背中に回られ捕まった。
《おわった……》そう思った時、
「俺と偽って薬 を一般人に飲ませまくってるのはてめえか?」
俺を置いて行ったはずの(一応)俺の恋人が薬を飲ませようとする男の上に馬乗りになっていた。
「……ッチ、本人かよ」
「残念だな、ご本人様ご登場だ。そのフードとってもらおうか」
フード男の正体は……
「ん?この顔どっかで見たことあるような……」
「あっ!!紫恩さんのいつも隣にいた!!」
「やっぱお前だったか」
そう、このフード男の正体は紫恩さんの隣にいつもいた子分の1人だった。
「いつから気づいてた?」
「最初からだな」
「じゃあなんで」
「泳がせてたに決まってるだろ?お前琉生 に一目惚れでもしたんだろ。元々のターゲットは琉生 で何人かの一般人に試し飲みさせてたってところか?」
さすが若頭だけある。考察力が天才的だ。ちょっと感心したわ。
で?それより俺に一目惚れだって?俺なんでこんなに男にモテるんだよ……女にはモテないのに!!!
「お前こんなことしてどうなるかわかってるのか?薬 に手出したのもそうだが俺の恋人に手出そうとはいい度胸じゃねえか、死ぬのと死ぬのどっちがいいんだ?」
こんなバチバチの空気にいる俺の方をジロっと見つめてくるのは薬男。そして俺に笑いながらこう言った。
「裏 側の世界はお前が踏み込んでいい世界じゃない。お前も俺と一緒で時期に死ぬ。そしたら向こうで俺と共に愛し合おう」
その言葉に怒りが頂点に達した紫恩さんの蹴りで薬男は気を失っていた。
俺はというと薬男の言葉が本当のことになるような気がしてならなかった。
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