「……はよっす……」 あの男は家へ置いたまま俺は会社へ行った。 「「おいてめえ」」恐る恐る振り向くとお怒りモードの瑞希と木南。 「……さーせん」 「ところであの後どーなったの？」 「そうだそうだ俺の唇奪っといて」 「ほんとだよな？ありえないわ」 いつも犬猿の仲の2人も今日はなぜか俺の敵だ。 「別に普通だよ」 「「は？」」 「え？」 「言わないのはないわ」 「ないわ〜」 2人の圧に押されて言わざるえなくなった俺は昨日のことを話した。瑞希はキラキラとした目で俺の話を楽しそうに聞いていたけど木南はだいぶショックがっていた。 「って木南ってホント俺のことが好きだったの？！」 「……はい。めちゃくちゃ」 「はーそれはごめん全く気づかなかったわ」 「別にもういいです。先輩が嫌がることなんてしませんよ。まあ諦めませんけど」 俺だってあんなヤクザ男に飼われてなけりゃもしかしたら木南を選んでたかもしれない。だってアイツとは住む世界からして違う。ヤクザなんてどんな仕事してるかだってわかんないし、ボランティアみたいなことは当たり前にしてないわけで、俺達みたいに普通に働いて稼いでるわけでもないだろうし。 「ほんとお前だったら良かったのにな」 いつの間にか出ていた言葉に気付かなかった。 「やめてください。そういうのは期待させちゃいますよ」 「あ、言葉に出てた？ごめん」 「琉生ってほんと罪な男だね〜」 「それは言えてますね」 ヤクザ男のせいで知らない男に抱かれそうになるし、女とのセックスで勃たなくなってしまったけどある意味、感謝すべきなのかもしれない。なんだかんだ助けてくれるし……ってあれ？俺なんで褒めちゃってんだろ。そんな事を思いながら机に向かって仕事を始める。 「はあ〜午前中の業務終了〜瑞希、木南飯行こうぜ……ってあれ？あいつらは？」 「あ、あの二人ならさっき二階堂先輩の愚痴こぼしながらどこか行きましたよ」 「は！なんでだよ！」 「俺らの琉生がとられた〜って言ってました。愛されてますね」 「ほんとだな」 今はあの男の事を考えるより二人の怒りをおさめるのが先かもしれない。 「おい、お前ら」 「うわ〜きたよ？ケツイキくんが」 「お前まじやめろよ」 「で？なんの用？」 「お前ら2人……今日は焼肉奢ってやるから機嫌直せよ。だからさ？俺とも昼ごはん食べようぜ？な？」 「「まじ？！っしゃ〜！！！！どうぞ、どうぞ。」」 俺が今1番大事にしたいのはまだまだコイツらだ。アイツじゃない。どうせ飽きられたら捨てられる。今のうちに気持ちいいことしまくっとけばいいんだ。