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第29話
「「「ご馳走様です」」」
色々とあったご飯屋さんでの出来事は置いといて食べ終わり解散した……1人を除いて。
「で?なんで付いてくるんですか?」
「俺の家に向かって何が悪い?」
「あなたの家は反対方向でしょ?」
「お前の家は俺の家だ」
と、訳の分からないことを言っている奴と俺はなぜか帰っている。
街灯が照らす夜道をなぜこいつと歩かないといけないんだろうと思いながらもなんだかんだで俺もこの男が家へ来ることを許してしまっている。
「なあ」
「はい?」
「いつになったら俺のこと好きになってくれるんだ?」
「そうですね、わかりません」
「セックスはするのに?」
「まあ飼われてる側ですし」
「……」
こんな会話をしているといつのまにかもう家の前。ガチャっと家の鍵を開け中へ入る。ヤクザ男も「お邪魔する」そう言いながら家へ入る。
「……ただいまでいんじゃないの」
「……?!」
今にも落ちそうなくらいに目を見開いてる男。
「なに?」
「……ただいま」
本当にヤクザか?と思うくらいのキラキラした笑顔を向けてくるこの男に今まで何人の人間がおちたんだろう。本当に俺はギャップに弱い。それをわかっているかのように笑ったり怒ったりされちゃ「可愛いな」なんて思ってしまう時があるからやめてほしい。まあ表には絶対出さないけど。
「おかえり」
「……だめだ犯したい」
「は?」
こういう所は本当に直して欲しいとは思う。
俺も男なわけで……俺の穴はアソコを入れるためにある穴じゃないし正直まだ慣れないところもある。行為が終わった後なんて穴は痛いし、腰は痛いし、足はガクガクで動けないし日常生活に支障が出るくらいの日もあるわけで……この日はやんわりと断ってソファーに座らせた。
「今日はしないって?」
「添い寝ならさせてあげるから」
不満げな顔をしつつも俺の肩に顔を乗せ、たまたま付いていたテレビの番組を一緒に見ていた。
『カップル穴場スポット〜!皆さんぜひ足を運んでみませんか?』
俺は別に何も思わずそのテレビをジーッと見ていた。すると、
「ここに行きたいのか?」
「え?全然……インドア派だし」
「俺はアウトドア派だ」
「うん……それで?」
「この週末はどこかへデートしに行こう」
「え……?」
行こうなんて一言も言っていないのに勝手にデートプランなどを決めだしているこの男となぜか遊園地に行くことになった。
何が楽しくて男二人で遊園地なんだ……?
この遊園地デートが俺の気持ちを揺れ動かす事になるなんてこの時は思わなかった。
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