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第32話
「なんだ?違うのか?」
そう言って俺を見つめる男の目線を逸らす。
「アハハ、まあ言いたくなった時でいい」
俺の頭を撫でるコイツにこの気持ちの意味を探っていた。
「……せっかく楽しいデートだったのにここまでみたいだな」
「え……?」
辺りを見渡すとスーツ姿の怖い顔をした連中が俺らの周りを囲んでいた。
「え?なに」
「なんだ?俺らの邪魔しに来たのか?」
「九条紫恩、お前を殺しに来た」
「今ここでか?お前らも随分ヒマだな。ココに来る前から付けていたみたいだが?」
全く気づかなかった。それで今殺すって言ったよな?なんだ……この状況……。訳の分からない状況に戸惑っていると俺の前に立つ男。
「こいつに指一本でも触れてみろ、お前ら皆殺しだ」
スーツのジャケットから何かキラリと光る物。銃口だ。今何十口という銃口が俺らに向けられている。
「お前ら赤城 組の手下か?」
「さすがだな」
『赤城組』……それは麻薬など世には出てはいけないそんな危ない物達を流通させているくそヤクザ達。そんなヤクザがどうして今目の前に……?
「何が目的だ?」
「組長からの命令だ。半年前うちの組の1人を殺したそうだが?」
「ああ……あの薬 漬け野郎か?あいつは元々うちの組のやつだ。うちを裏切ってお前らの組に行ったバカを生かしておけと?お前らも裏 側ならそれくらいのことはわかるだろ?まさか……お前らの組はそんな奴を生かすほどバカだったのか?」
「ッチ……」
舌打ちをしたと同時にカチャッと引き金を引く音が響く。ヤバい……こいつが撃たれる。俺は咄嗟に男を突き飛ばした。その瞬間パンっという銃声が響く。その銃声が目掛けた場所は俺の左肩だった。
「……うっ……」
痛すぎて痛いという言葉すら出てこない。
「お前ら何してる?!さっさとコイツら殺せ」
遠のく意識の中、男の声と共に続々と九条組の仲間達が出てくる。俺を撃った男はそのままたこ焼きさんに撃たれたのは覚えている。そして俺は完全に意識がなくなった。この先は何があったかはわからない。
――――――――――――
「おい?!琉生!!琉生!!おい病院に運べ今すぐにだ、早くしろ」
「運ぶまでの間、止血だ!絶対死なすな、若の大事な人だ!絶対にだ!」
「……若、すみませんでしたあああ」
「死なせたらお前ら全員殺す。覚悟しろよ」
紫恩の焦り具合は相当のものだった。
大事な人を撃たせてしまった自分の愚かさにただただ胸が張り裂けそうな気持ちでいっぱいだった。
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