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第34話
「いてっ……あっそこ最高」
俺は今、男にリハビリをされている。
言っておくが俺は1週間生死をさまよっていたのに目が覚めたらすぐこんな鬼の訓練を受けさせられている。
「お前の肩が動かなくなったら気持ちよくさせてもらえないからな」
「それ目当てかよ」
「まあそれもそうだが早く退院してほしい」
「なんだよ急に」
「お前がこうなったのは俺のせいだ」
そう言いながら俯くこの男を知らんぷりして放っておけるわけもなくそっと抱きしめた。
「紫恩さんのせいじゃないよ。俺が勝手にしたことだから」
「アホか。あれは完全に俺と俺の部下のミスだ」
「あ、そうだ!あの時、なんでみんないたんですか?」
「俺が狙わられているのは知っていたからだ。だから念の為に部下に付いてこさせたらあのザマだ。お前に指1本触れさすなとあれほど言っておいたのに。いや………俺のせいか。あの時、お前のいちばん近くにいたのはこの俺だ。すまなかった」
紫恩さんのせいじゃないと否定したかったのにこんなに思い詰められるとかける言葉すらなくなる。俺だって銃口向けられているのに咄嗟に出た行動があれだ。俺みたいな一般人が踏み込んじゃいけない世界だってわかっていたのに結局最後には心配させてる。
「まあさ?そんなことは置いといて俺こうして元気だし生きてるしそれでいいじゃん?俺は紫恩さんより先に死なないよ」
「ああ、本当に俺を置いて居なくならないでくれ」
こんな愛おしそうに俺を見るこの男にこれ以上、心配かけさせるわけにはいかない。と心に決めた日だった。
「リハビリはこれくらいにしといてなにか食いたい物はあるか?」
「え?なんか買ってきてくれるの?」
「何が食いたいんだ?俺か?」
「いいえ、プリンでお願いします」
「はあ?なんでプリンなんだ?あんな甘い食いもんは食いもんじゃない」
「いやプリンは食べ物です」
「買ってくればいいんだろ、大人しく待っとけ」
こんなに誰かを愛しいと思ったのはいつぶりだろう。その大きな背中を見送ってプリンを待った。
が……プリンは……?
あの男がプリンを買いに出て行って2時間。全く帰ってこない。プリンの気分だった俺はイライラしていた。そう思っていると病室のドアがあく。
「プリン買うまで何時間かかってんの?!」
俺のプリンを愛を思う存分ぶつけて男の方を見ると、
「はあ?!なにこの量?!」
この男は、あらゆるプリン屋さんのプリンを買って帰ってきた。ざっと100個はあるだろう。
そうだ、この男はバカだった。
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