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第35話

「お前がプリンが欲しいって言ったんだろ」 「だからってこんなに1人で食べ切れると思う?」 「どのプリンが口に合うかなんてわからないだろ?」 「別にスーパーで売ってるプリンでも俺は好きだわ!」 「なんでそれを早く言わない?」 こんな感じでこの男は1か10でしか物事を考えれない。だから多分もしこの先俺のことが嫌になった時それは嫌いになった時だろう。いいか悪いかで聞かれたら難しいけどある意味単純で楽だ。 「プリンうまいか?」 「うん、でもさこんな食べきれないから瑞希達にもわけていい?プリンなんて長期保存できるわけじゃないし」 眉間に皺を寄せて何も答えないということは俺の発言が気に入らなかったんだろう。でもこれをどうやって1人で食べきれと……? 「お前は俺からの愛を受け取れないのか?」 「いやどう考えてもこの量を1人で食べ切るなんて無理でしょ」 「流し込め」 「そんな無茶な……」 どう頑張っても食べきれなさそうなプリンは黙って瑞希達にあげることにする。横で珈琲を作ってくれているがいつもこの男の珈琲は苦い。甘党な俺にとって珈琲に角砂糖1個、ミルク1個なんて飲めるわけが無い……ともいえず苦い珈琲を無理やり口に流す。 「ありがとう」そういう度に嬉しそうに喜ぶからこの苦い珈琲もそれはそれで悪くない。 「……肩が治ったらもう1回デートに行こう」 「もうこんなことないなら行く」 「ああ、次こそはちゃんと守る」 「次こそって……次もあったら困るわ!」 「俺といる限りはそれは保証できない……けど危険な目に合わせるってわかっててもお前といたいんだ。わがままかもしれんが一緒にいてほしい」 「アハハ、じゃ次は一緒に死のうよ」 最初の頃に「共に生きて共に死のう」と言われた時、俺はバカだろなんて思ってた。けど今なら言える。こいつと一緒なら死んでもいい、と。普通の恋愛ができない俺達に神は次にどんな試練を与えてくるんだろうか?そんな思いを心に秘め俺は今日も蛇のペットとして飼われている。 「あ、そうだ。今度お前のご両親に会わせてくれないか?」 「は?なんで?」 「なんでって……恋人の両親に会うのは普通だろ?」 「別に結婚するわけじゃないんだから……」 「は?俺らは結婚するんじゃないのか?だから一緒に死のうって……「え?あれってそう意味だったの?」 「違うのか?」 「え?」 「は?」 俺らは今、将来について揉めている。俺はまだ好きだと伝えていないのに…… どうやら俺には拒否権はないみたいだ。

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